コラム・特集

1.3 測定:IE技術者の基本的必要性

IEハンドブック

第1部インダストリアル・エンジニアリング機能

第1章インダストリアル・エンジニアリングの専門性

1.3 測定:IE技術者の基本的必要性

測定の問題を扱う技術や科学は,早い時期から,技術者や職人によって実用化されてきた。初期には,すべての測定方法は未熟で不正確であった。時がたつにつれて測定方法は改善され,測定に使われる器具も同様に改善されてきた。19世紀までに,直線距離,容積,標準□径の固定管からの流れの率のような定型的な測定問題,便法的な高さと重さの問題,および不変要素のあるパラメータに関する同種の問題は,かなりよく確立されて標準化されていた。そのような測定がIE技術者に必要な場合にも,他のどの技術者にとっても問題となった以上の間題はもはやなかった。しかしながら,また測定の問題は非常に重要であり,どんなに少ない誤差でも,技術者や設計には,重大な問題であったことに注目しなければならない。レールの間隔の不正確な測定は,鉄道に重大な問題となることはこの一つの例にすぎない。

IEにおける測定問題は, IE技術者が関与させられるシステムで人間が重要な歯車となり,さまさまな刺激に対して人と彼らの動機,反応にそのシステムが応答するために発生した。結果として,人と彼らの活動,システムとの関係あるさまさまな刺激に対する彼らの反応の測定は,非常に重要であった既知の温度での既知の粘度の液体1/4クォートが,与えられた口径から流れるのに要する時間は,ごく簡単に決定でき,同一条件では常に一定となる。一方,1人の労働者が2つの金属ピースをある種の結合具を使って組み立てる時間は,部品のサイズが完全に標準化され,温度,空気の質,その他の環境条件がすべて一定で,かつ同じ作業者がその仕事をするとしても,かなり変動する。

仕事における人間の集中力は,文字通り何ダースもの生理的,精神的,外的な理由で著しく変化しうるものである。理由が何であれ,集中の量,その変化の理由,仕事の達成周期の間に起こる変化などの測定は,いくつかの非常に重要な測定問題を提供している同仕事に異なる人間が使われるときには,さらにIE技術者が闘わなければならない変動要素が加わってくる。これの解明が達成されるときには,さらに他の変動要因の解明に役立つ。

結果として, IE技術者の役割についての重大な関心事は,人間活動の測定の統一的標準の設定をめざす方法論にあった(達成度測定に関するさらに詳細 な議論は,4部を見よ)。標準設定は, IE技術者の仕事というよりも,技術屋(テクニシャン)の仕事になっている一方,人間の行う諸活動についての合理的で明確な標準がなければ,そのような測定にもとづいて予見される全体のシステム設計は,こわれやすくて使いものにならないという事実がある。それでは,測定に関するいくつかの重大な領域は何であろうか?

伝統的にIEと関連しているが,それ自体はIEではなく,また,そう考えるべきでない領域は,時間研究の分野であり,人間作業の測定と達成度に関する分野である。たとえば鋼の部品を既知の送りと速度で径を小さくするのに要する時間の測定は,自動機械の機械部分の仕事として容易に計算できる。ある作業者が,自 分の動きを制御して,手動で部品の取付けと取外しを行う手動旋盤で仕事をするのに要する時間値を設定することは,おおいに異なる計算である。1人の作業者が同じ仕事を行うのでも時間が変わるという事実は,複雑さを増す。したがって,それぞれ時間値が異なる数名の作業者を含む時間を,設計用に設定しようとするならば,急激に複雑になるのは明らかである。その過程で数多くのデータを利用しなければならず,統計学の分野は, IE技術者にとって大変に重要になってきている領域の一つである。

しかしながら,この時点で決められなければならないもう一つの重要な点がある。それは,作業者が与えられた仕事を行うのに要する時間あるいは許容時間は,いくつもの活動について使えるということである.時間値は給与計算用に設定されなければならないと 一般に考えられている。これは正しいが,多くの目的の一つにすぎないし ,数ある使い道の中でも最も重要性がないものである。

ある仕事を達成するために要する時間は,種々の活動の適切なスケジューリングにとって重要である.適切な時間値がなければ,計画は,マンパワー,そして在庫,原材料あるいは製品の工程への搬入・搬出にしても,絶望的に混乱することになる。診療所,病院の施設において,限定された空間と設備のスケジューリングは,満足な防御可能な時間値が利用できなければ,合理的な方法で設定することはできない。金融機関では , あるいくつかの作業に要する時間およびシステムを通る情報と事務作業を片付けるためにかかる時間は,これらの問題に注意が向けられるならば,数十万ドルの利益あるいは損失をもたらす。

著者がよく知っているある非営利機関は ,キャッシュフロー項目に含まれる時間調整と,金融上の業務の管理の改善によるものだけで年間50万ドル以上の節約をした。どこで手作業が行われていて,それにかかった時間,およびあらかじめ計画されたスケジュールにしたがって確実になされるように,どのように管理を行うかを研究して明らかにされたシステムの研究の後に,これらはすべて実際あったことである。

したがって,人間の仕事を達成するのに要する時間値は, IE技術者がもっていなければならない重要な情報の一部である。それが利用できない場合には,必要などんな手段 を使っても ,その時間値を得なければならない。得られた数値が,その技術者が頭に描いていたものに使うのに適切であることを確かなものにするために,それの手順を設定しなければならないこともありうる。しかしながら,多くの人々はIEの責任だと思っているが,時間値 の設定はIEの責任ではないことを繰り返しておかなければならない。

IEの初期には,時間研究と標準時間の問題に多くの努力が払われたし ,まだ今日においても , 時間研究の技術と科学の中の専門家たちによるこの分野での多くの研究が進行しつつある。しかしながら 時間研究がIE技術者の活動と専門の境界にあるとしても,時間研究の実務担当者はIE技術者ではない。

将来の事象あるいは活動の測定問題と対応させられなければならない また別の領域がある。現在あるいは 過去の活動の場合には,実際の事象は観察可能であり, 諸条件を記録したり,必要であれば複製したりすることができる。しかしながら ,将来の事象については , 期待通りにある事象が起きたり起きなかったりする付加 的変数がありうる。そこで,これに確率の概念,あるいは,われわれの期待に沿って起こる事象の起こりやすさを導入する。事象がある時点で,計画されたような条件で生起しない場合には,その代わりの結果が発生する。技術者はこれらの可能性について分かっていなければならないし,必要ならば計画する段階でそれらの起りやすさ (尤度)を入れておくべきである。人間とその活動の時間調整問題への確率論の初期の応用とそれとの関係については,待ち行列問題と待ち行列理論の適用がしばしばみれる。現場作業を遂行するための適切な時間値の設定に多く依存していて,変動の可能性がありうることが分かっているジョブ・ショップ・スケジューリングは , 現実に一つの大きな待ち合わせ問題である。確率論は,IE技術者には「道具箱Jの中に持っていなければならないもう一つの数学的原理である。

IE技術者にとっては他にも非常に多くの測定問題があり,それらはすべて将来の事象の確率的性質を扱う能力,あるいは適切な統計的道具を使って,現在あるいは過去の事象に関する大量のデータを処理する能力を,何らかの形で要求している。いくつかの例としては,機械と一定の品質を維持するための能力により生産される品質,あるいは品質劣化率についての問題のような,人間の作業とは完全に独立な機械に関連する問題がある.時間(1日 )当りのスループットとその変動率と,個々の機械あるいは工程毎の期間中にかかる保全費用とそれらの配賦は,適切な保全計画と(設備の)取替問題には重要な尺度である。

どの形式であれ,すでに述べたすべての測定問題と, 本書の後でさらに詳しく扱われる測定問題では,生産性 の測定についてはいろいろな方法がある.古典経済学的 な意味では,一般的に生産性はアウトプットの一定水準を達成するのに要する人工(マ ンアワー)で 表示される。さらに単純に一般的に示せば,生産性は,ある一定の入力がある一定の出力を生成するのに使われているかを示す,多数の可能な尺度のうち一つを含まなければならないことになるこの入力が,ある一定水準の出力を維持するのに,より少なくてよければ入力水準は下がり,生産性 は向上したいという結論を出す。逆に,一定の入力が使われたのに,より高い出力水準が達成されても 生産性が向上したと結論できる。IE技術者にとっての現実の間題は,特定状況下での,適切な入力と出力の尺度として用いられるべきパラメータの選択である.入カパラメータが技術変革により変われば,生産性が実際に向上したかどうかは容易に明らかにはならない。

一般的には,われわれはムダになっているものをみつけて測定し,それを減らすようにしたいと望んでいる。最初の部分で述べたように ,われわれのあらゆる努力を, より能率的で,より生産的で,よりムダを少なくしようと欲しているのである。費やされるマンアワーに対して出力をより大きくしたいだけでなく,投下された資本1ドル当たり,占有面積1平方メートル当たり,消費エネルギー 1kw当たり,輸送1km当たり, 1機械1時間当たり,あるいは われわれが,実際にわれわれの作業形態や作業方法で改善がなされているかどうかを評価するために使える,他の可能な多くの尺度の組み合わせによって,より高水準の出力あるいは高品質の出力を得たいのである。 生産性の評価には,単一の適切な尺度はないかも 知れない。個々の場合に新しい条件や異なる条件に出合うために,測定の概念に何らかの新しいものを必要とするかもしれない。しばしば,パラメータをいくつか組み合わせた指標が必要であるが,使われる尺度は,そのときの状況に適合するものでなければならないということであり,それは常に最高なものでなければならない。

与えられた仕事を遂行するのに要するマンアワーを改善(低減)する過程において,過度に高い費用と投資が含まれていれば,その結果の改善だけで全体の経過を説明することにはならない。生産性の向上がそのような高い投資によるものであれば,必要なマンアワーを減少させるかもれないが,それは非常に高い投資コストによってそれを行うのである。それゆえ,どんな生産性の評価 においても,システムのすべての要素が評価され,またどんなタイプの組合せ指標も用いられて,そのすべての適切な項目が含まれているような方法で,設計変更や改 善による全体へのインパクトを評価することが, IE技術者の仕事の一部なのである。工学の基本的定義にもとづいて,経済的要因とインパクトは無視できない。それどころか,どの評価過程においても中心的なものである。

設計は, 同じような分野(たとえばオペレーションズ・リサーチおよび経営科学)とは区別される独自な工学活動として認められてきているので,測定の技術と 科学は,技術者にとってより核心的なものにさえなってきている。設計が不適切なデータにもとづいていたり,その状況に不適切なパラメータを使っているならば,いくら創造的ないし革新的であっても,達成しようとしている仕事には不適切になってしまう.能率的であるように 配慮されているときにのみ仕事を達成しうるし,そ の機 能を発揮しうる。これらの理由から測定の重要性は,いくら強調してもしすぎることはない.他の技術者たちに 使われる多くの標準尺度は,馬力の計算,エ ネルギー所 要量,長さ,高 さ,重量などのように,IE技術者によっ てもなお使われている。これとはちがって,まだ多くの研究が必要な領域は,人間の努力と生産性を評価したり測定するため,方法や手段をより良くしなければならない。より良い,より精密な尺度が利用できるならば,含まれる作業を説明したリモデル化するのに有用でありうるし,いくつかの最適化の方法論により,問題の解の代 替案の最適化に利用することができる。しかしながら,最後にもう一度注意をしておかなければならない。何人かの人は反対の考え方をもっているかもしれないが,人間の努力を測定する手法と行為は,それ自体がIEではない。

IEの初期には,以下に指摘するようにIEのこの面へ多くの努力とエネルギーが注がれたため,多くの人の目には,時間研究の対象は事実上,IEと同義語になってしまった。一般大衆や工業の経営者,さらには多くのIE技術者たちでさえも,この考え方を思い止まらせるためには長い時間がかかった。しかし,これは事実であり,認識されなければならない。時間研究の技術屋は,情報の連鎖のなかの中心的な部分であり,利用可能な手法の一つを適切に使って得られた時間の情報がなければ,IE技術者の仕事ははるかに難しくなり,作業に割り当てられる時間値について既得権益をもつ者による挑戦が始められる.

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンド ブックの各章は、多 く の事例と理論を通し て生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしている IEの考え方 ・原則は、インダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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