コラム・特集

1.2 IEはどのように変化,発展してきたか ?

IEハンドブック
第1部インダストリアル・エンジニアリング機能
第1章インダストリアル・エンジニアリングの専門性

1.2 IEはどのように変化,発展してきたか ?

IEは,20世紀の中頃から,いくつかの重要な変化を経てきた。対象領域の範囲とIEの実務家により利用される方法論の両方が,急速な変化が当たり前な時期にあっても異常なほど変化してきた。公共組織および私的組織の新しい拡大したニーズと,新しい道具や技法が利用可能になったことで,IE技術者にとって新しい要件と機会が生じている。1950年以降の時期には,IEの領域は,工学の中でもおそらく最も急激な成長をしている一つである.1950年半ばまでは,IE技術者は,主として製造工場,建設施設のコストと品質の管理,生産管理,資材加工および運搬の設計において,人間の相互作用に関与し,物やサービスを供する製造作業に関係していた。

歴史的には個々のワークセンターやプロダクションセンターのようなサブシステムの設計も,IE技術者の重要な役割であった。用いられる設計の手順は,本来定量的というよりは,定性的であった。また,どんな仕事をすれば所与の結果が得られるかという,経験的根拠に厚い信頼がおかれた 。

1950年代の10年間に,IEの領域で完全な再方向付けが行われた。新しい数学的,統計的手法や機器が利用できるようになり,定性的方法から定量的方法による問題解決を指向する方向へ確信や重点が移り,そして研究の努力が移っ た。
IE技術者にとって,高速度プログラム内蔵式ディジタル・コンピュータが必要不可欠な道具となった。基礎科学のきわだった発達や,経験的方法から,より定量的解析方法への移行は,もちろんIEに限ったことではない。しかし,第二次世界大戦の間にできたIEは,あらゆる工学分野のうちでも最も定量的な方向になかったため,その変化はより激烈であったように思われる。

これと並行して起こった同じくらいに重要な変化は,IE技術者の仕事の場であるプロジェクトの種類の変化である。1950年以前には,ほとんどすべてのIEは機械工業の製造面で実際に使われていた。この分野の拡大は,IEという簡単な名称の代わりに,多くの新しい名称が使われていることで分かる。

今日では,オペレーションズ・リサーチ,製造・生産。オートメーションエ学,そして人間工学のような分野さえもある。システムエンジニア,経営ないし 管理エンジニア,およびオペレーション・エンジニアがいて,製造業と同じく,運輸,配送,兵砧,兵器システム分析,金融,健康,サービス産業の分野にも彼らは働いている。

さらにIEの分野の範囲が変わりつつあることも明らかである。従来は比較的小さなシステムに関与していたが,現在の研究は,マクロなシステムにより多く関与するようになっている。そして,この専門領域に参画してくる人々は,こうした方向に向かう傾向にある。

IE技術者が以前に成功した仕事と共に,技術開発によって直接労働の必要性を減少させ,個々の人間の作業活動の設計と測定に,これまでのように専念する重要性がなくなってきている。最も重要なことは,より大規模なシステムの合理的な設計や解析が可能であるような方法が使えるようになった点である。オペレーションズ・リサーチあるいはオペレーションズ・アナリシスに関する,全体的な新しい領域が出現しており,これは,多数の新しい数学的手法と,現代の産業,政府,サ ービス組織にみられる複雑なオペレーションを扱う体系的方法を与える基礎である。

長い間, IEは ,他の工学分野と比べ,基礎となる科学が比較的未発達な状態にあったために苦労した。簡単にいえば, IEが依り処とするような優位な科学は実質的に何もなかった。IEと関連する科学は,他の科学分野よりもそれほど定量的でない傾向がある。IEはシステムの人間要素についての情報を社会科学に期待しているが,科学的意味では未だ工学を支えるほどに十分には発達していない。関連する数学的領域(離散量を扱う数学と不確実性の数学)はまだ十分に発達していない。

この30年間にかなり進歩してきているのであるが,おそらく,あらゆる最近の発展のなかで最も有望なのは,筆者の同僚が「実働の科学」(science of operations)と呼んでいるものの出現である。それは,数学や社会科学とは全く別のものである。それは,多様なシステムのタイプを識別して定義し,表現することができるようである。これらのシステムのタイプは,適用分野別に完全に別個に存在している。それらの基本的性質を決めるため,一般的な言葉で研究を行うことができ,かつ,新しいさらに複雑なシステムの初期分析と最終設計の基礎として利用することができる。

この最も新しい考え方,すなわち実働科学の概念と,どのタイプの実働システムの分析合成にもこの科学を使える可能性は, IEの領域の限界を広げる能力をもたらし,実際に行う者にとって,ほとんど限界がないほどの機会を与えるものである。現に科学が適用されていて ,実務者が産業システムから離れているような実働システムだけが印象的であった。

IEによる分析の幅広い応用がみられるサービス分野の一つは,病院と一般の健康管理システムである。その中には,大量の人間活動があって,コストが上昇し,設備は高価で,技術的にも複雑である。健康管理システムにおける生産性の向上は,IE技術者にとって当然なことであり,しかも社会にとっても非常に必要とされている。

IE技術者は,ここ20年から30年の間に,このサービスの領域に急速に浸透している。銀行システムも,金属の切削や成型,部品組立,仕上げ,コ ーティングなどの,通常の意味での製造作業のないサービス分野である。

しかし銀行システムは日々何千もの作業および機械作業があり,情報の蓄積,検索,転送は即時かつ正確でなければならない。そこでは品質管理は重要であり,銀行に特有の在庫およびスケジューリングの機能もあり,さらに最も重大なことは,人間がシステムの円滑な実働に欠かせない点である。

ここでもIE技術者は,分析能力と方法論に見合った場所を見い出しており,金と情報をより能率的に流すための新しい稼働方式やシステムを,合成し設計するための機会を得ている。どの実働システムにも,同じような理論を形成できる。各システムの個々の構成要素は様々であっても,実働の科学の発展,科学は不変であり,どのようなタイプのシステムも抽象的な言葉で表現する。

IE技術者は,一般的で抽象的な概念から特別なモデルを開発し,抽象的なパラメータを特定な条件で置き換えるだけでよい。それに続いて,生産性が向上するように,新規の,あるいは元のシステムを改良したシステムの分析,設計をすればよい。在庫問題が起こり得る条件を示せば,製造業,病院,銀行,デパート,教育関係の企業,あるいは航空会社であるが,これがどの分野に入っているかは問題ではない。同様に,品質の監視システム,スケジューリングの手順とシステム,人事考課と要員配置システム,生産システム,その他無数の型の実働システム,生命と係わり合いのある実体は,現代のIE技術者により,記述され,モデル化され,評価され,合成され得るし,またすべて存在している。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンド ブックの各章は、多 く の事例と理論を通し て生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしている IEの考え方 ・原則は、インダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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