コラム・特集

1.1インダストリアル・エンジニアリングとは ?

IEハンドブック
第1部インダストリアル・エンジニアリング機能
第 1章 インダストリアル ・エンジニアリングの専門性

1.1インダストリアル・エンジニアリングとは ?

工学(engineering)は,工学/技術審議会[ABET (Accreditation Board for Engineering and Technology),以前のECPD(Engineers Council for Professional Development)]によって次のように定義されている。「人類の利益のために自然の物質と諸力を経済的に利用する方法を開発するために,研究,経験および実践から得られた数理科学と自然科学の知識を評価して適用する専門領域.」

ここでのキーワードは,「経済的に」,「数理科学と自然科学」および「評価して適用するであると考えられる。米国IE協会(AIIE:The American lnstitute of lndustrial Engineering)は、IEの専門分野を次のように定義している。

「人,資材,設備,およびエネルギーの統合的なシステムの設計,改善および実施に関することを扱う。その場合にIEはこれらのシステムから得られる 結果を規定し ,予測し,かつ評価するために,工学的な解析と設計の原理と方法の原則とともに,数理科学,自然科学および社会科学における専門知識と熟練を利用する。」

これは,工学の一般的な定義のあらゆる要素を含んでおり ,「評価して適用する」という表現により意味されていることをいくつかの方向で説明している。そして,多くの点で他の分野の工学の定義に匹敵するものである。広く定義すれば, IE技術者の機能は,能率的な作業を容易にするために,人間,機械,資材,情報をまとめることである。本来IE技術者は,システムの設計に携わり ,その主機能はマネジメントに関するものである。

しかしながら,上に定義されているように,IEに特異な要素は,自然科学に加えて人間。 社会科学との関係を明確にもっている点である。このことからIE技術者は広範な知識が必要となり,関与するシステムの形態も多様となる.

したがって,IEは単に事物とか事物のシステムの設計,実施,評価,再設計に関与するだけではなく,システムの中の人と人との相互作用およびシステムと人間との相互作用にも関与する。したがって人間はその実働要素の部分である。人間と機械とのインタフェイスを含む点が, IEと他の工学と異なるところである.そこではトータル・システムの設計は機械などの物的要素のみならず,システムにおいて重要な結合(リンク)のある人間(それは機械システムでカムとギヤが結合しているようなものである)についての行動特性,緊張関係,負荷量 ,エネルギー特性および動機づけに対する応答を含んでいなければならない。実働システムの構成部分としての人間に加えて ,システムの運用上の外的な力とし ての人間の影響がある。

あらゆる製造業からの製品ないしサービス業からのサービスは,最終的に人間(顧客あるいは発注者)により創出される何らかの需要機能に依存している.これら外部の人々のさまさまな刺激 (インフレ,広告,ボーナス,値崩れ,品質など )に対する応答が,物やサービスに対する需要に波を起こす。流通 ,製造,サービス・システム の終端から始点へのフィードバックが作用し ,需要が何倍にも増幅されうるのである。IEの仕事は,研究 ,解析 ,評価によって,人間‐機械システムの構成部分の設計と再設計を行うことである。

そこで,個々の構成要素を適切に統合化して ,トータル・システムを設計するために要素が集められる。機械的構成部分(機械類)は ,機械技術者や機械設計者によって設計されるのであるが,IE技術者は,これらの専門家をまとめ,これと協力しなければならない。計装および動力設備は一般に電気・電子技術者が受け持ち,化学工程は化学技術者が受け持ち,その他の専門の技術者は,それぞれの専門領域の構成部分の設計を受け持つ、しかしながら 人間という構成要素について,その仕事を設計し ,システムの中に適切に位置づけられた機械,電気および化学的な構成要素とともに,適切にまとめ上げるための人間要素にふさわしい研究がどこにもなかった。

IEで後に展開された分野の先駆者による初期の研究の刺激となったのは,この人間の仕事の設計に対する人間指向の欠如であった こ のハンドブックで,どんなシステムをも実働させるのに必要な,人間問題および相互作用のさまざまな側面について,2,3,4,5,6部 をあてているが,それは,どんな工学上の設計にも,人間を取り扱う必要があるからである。IEの専門職としての明確な機能と関連する問題に加えて,工学の中での特異性と重要性の両面から,人的側面に最重点をおいた考慮がされなければならない。

他のもう一つの側面も ,「 IEとは何か」という問いに答えるものである.IEは最初から設計されたり,評価されたりするものを改善することに係わってきた.それが個々の人間の仕事であれば, IE技術者は,より効率的に,より疲れにくく,動作をより簡単に,より生産的に,ム ダなもの ,エネルギー,そして努力をより少なくするようにしようとしたであろう。

連鎖的な仕事であれば,より均等化するようにし,よりよく流れるように進行と停止の動作を最少化することになる。運搬の仕事であれば積み荷の大きさを変えたり,作業場,オフィス,サービス・エリアのレイアウトをやり直したり,必要な工程では,より良いタイミングとよりよく流れるように,あるいはより類似性を高くできるような別の部品や構成品を用いたりし て,全体として移動量をなくしたり少なくしたりする。

製造の仕事であれば,より良い,あるいは新しい生産方式を使えるようにし,工程間のまとまりや流れを良くするために再設計を行うとか,別の材料を使用する。例はいくらでもあげられるが,その根底となっているのは,コ ストの低減と,人と資材,設備,資金といった資源の有効利用という 基本的概念である。実際,初期の頃のIE技術者は,「能率技師」(efficiencyengineer)と言われた。

また一方では,この言葉は一般的には悪い意味で使われたが,その理由はここでは議論しない。しかし ,この言葉はある程度真実である。というのは,適切な訓練も方向付けもなく,手早い利益を得ること以外に興味もないのに,この領域に入りこもうと企てるペテン師が多くいたからである。この言葉は,今日ではほとんど使われない.代わりに,生産性および生産性向上といっている.IE技 術者の関心分野,目的,および適切な準拠枠についての説明をするのに,考え方を一つだけ強調しなければならないとすれば,それは生産性の向上でなければならない。

これは国家的および国際的な関心事となるとともに,世界経済の健全さにとっても重要なものとなっている。IE技術者は,その基本使命として,生産性の向上を受け入れているがさらに広く定義すると,資源のより効率的利用,供給されるインプットの単位当たりのムダの提言,一定水準のインプットに対してより高い水準のアウトプットを得ること,等々を意味している。

インプットは,人間の努力でもよいし,無数の形のエネルギー,資材,投下資金,あるいはその他の物であってもよい.簡単にいえば,その使命は資源の消費を増加させずに,より多くの生産をし,よりよいサービスを提供しようとすることである。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンド ブックの各章は、多 く の事例と理論を通し て生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしている IEの考え方 ・原則は、インダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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