コラム・特集

5.6 生産性測定システムを用いた経営

IEハンドブック
第1部 インダストリアル・エンジニアリング機能
第5章 生産性の測定と改善

5.6 生産性測定システムを用いた経営

はじめに

この節は,あらゆる階層の管理者が,生産性測定システムを効果的に使うことができるように,そして,彼らの組織の生産性と効果性を改善しやすくするように書かれている(52節に述べたことく,効果性も含まれている。しかし,効果性の基準が決まらなければ,その出力を明確にすることはできない。「生産性測定システム」という用語は,生産性と効果性の両方をモニターするシステムのことを記述するために用いられる。どちらか一方のみをモニターするのは少々近視眼的である)。この節は,システム・データを用いたり,こ のハンドブックの他の章に記載されている情報や技法の効果を見るための一般的な形を述べてある。これから述べる事柄は7つの部分に分けられ,それぞれが生産性測定システムの一形式となっている。

これらの7つの形式は生産性を改善するものではない生産性を改善するのは管理者つまり,意思決定をし, 組織の効率を改善するその人である。そして,その意思決定は,ある間隔でシステムが作るあるデータ,あるいはこのハンドブックに記載されていることをうまく用いてなされるものである。

生産性測定システムの7つの形式の要約

適切に運用されている生産性測定システムは,少なくとも次の基本的な7つの部分からなっている。それぞれの部分は,いかなる組織にも適用できるように書き表わされている。例えば,製造業,鉱業,サービス業,あるいは政府機関等,利益追求型組織でもそうでない組織にも適用できる。この生産性測定システムの主要点を以下にまとめる。

1.組織目標の記述。
2.組織の出力の単位一覧表,これらは組織目標達成に寄与するものである。
3.おのおのの出力に対応した,基準年の標準.それは標準時間,標準原価,標準原材料使用量,使用機 器,治工具,等の標準値で生産性指標による。
4.ゼロベース予算を作成する方法.これは出力の予測, 標準時間,そして生産性の予測を用いて作成する。
5.ある期間の生産性計算の手段。
6.ある期間の実出力にもとづき,出力を予測する方法。
7 追加資源の利用状況,およびそれに関する生産性指標を出力との関連において意味づける方法。それは高いレベルのマネジメントに報告するに当たり,細部の説明を省くことに役立つ。

組織目標の記述

記述の性格
目標の記述は,おのおのの組織が達成するように課せられた。ある種の結果を示すように構成されている。つまり,これらの結果をどのように定量的に表現するか,そして,所期の年度においてそれはいくらであるべきかという具合である。利益追求型の組織においては,これらは実体的かつ定量的で,結果の性質に適したものでなければならない。よって非営利型組織の目標の記述は,利益追求型のそれよリー層ユニークなものになる。

目標記述の基本的目的

出力によって達成したものと,所期の目標値との比較は,下記の評価を行いやすくする。

1.相対的達成度,すなわち代替入力,出力の設計,あるいはそれらの組み合わせ,工程,設備,それらの稼働率,間接要員,あるいはそれらの士気等によって得られる達成度の比較ができる(注:代替案を作成するに当たり,このハンドブックの他の章に紹介される技法を適用することができる代替案を検討するときに,販売方法の代替案を検討することは妥当なことであるが,この問題はこのハンドブックでは扱われていない)。

2. 日標未達成.もし目標を達成することができなかったならば,それは出力が少なくなったことに起因しており,入力,出力の設計,工程,設備,その稼働率,間接要員,士気,販売努力,経済変動等のどこかに不具合があったためである。問題領域を定義し,不具合を治す手法は,本章のこれから記すところである。

3. 期待したより以上の成果を上げる可能性は,良いマネジメントによるか,あるいは,上記1項で述べた要因のうち,あるものが予期に反して変化したことによる。その原因は明確にし,そして規則化していかねばならない過度に達成したことの価値は確かめるべきで,例えば,利益追求型の組織において,過度に目標を達成したことは,何か余分のサービスを必要とするような,大きな失策の徴候かもしれない。よっておのおののケースで吟味検討すべきである。

効果性の評価

必要なマネジメント・アクション
管理者は結果(効果性)を評価する責任者を任命し,その評価結果を報告させるようにすべきである。そして,管理者は定期的に,この報告書を上述の基本的目的の観点から検討すべきである。(注:利益追求型の組織においては,この仕事は会計報告をする業務そのも のであり,通常適切に行われている。一方,非営利組織においても,会計報告は適切に報告されているが,それは効果性の評価尺度ではない。むしろそれは組織が存続し得るか否かの評価である。よって真の効果性の評価尺度が必要である)。

なし得る意思決定
効果性の評価を結論づけるに当たって,管理者は現在の出力,あるいは出力の組み合わせの望ましさと,代替案のそれとの間で決定をする必要がある。

意思決定の記録
種々の代替案に対してなされた,すべての意思決定の記録はとっておくべきである。それは変化に対し,今後なされる提案を評価する基準となる。

組織の目標達成に寄与する組織の出力の単位の一覧表

一覧表の性格
これは出力の一覧表である。そして基本的計画のレベルから始まっており,階層的まとめ方を示している。この一覧表のことを単位作業構造(work unit structure)という 。そして,これは基本的単位レベルから出力を計る方法や,いかに意味のあるように出力を 総括しまとめる方法を提供してくれる(これはトップダウンで開発され,ボトムアップで用いられる)。また,これは組織の出力が変わるときには変更すべきものである。これは製造業のみならず,サービス業や政府機関にも用いることができる。

一覧表の目的


1. 
a 現在の出力,または現在の出力の組み合わせの期待値。
b 代替出力,または代替出力の組み合わせの期待値,を評価する基準を提供する。
2. 
a 将来の仕事量の予測
b 予測との比較。
c 標準時間の設定,あるいはその他の標準,例えば標準原価,標準材料等々。
d 目標管理の仕組みの開発 。
e 単価計算のため,原価計算システムのための計算表の作成。
f 種々の戦略の検討,例えば要員,機器 ,設備, 資金の運用。
g 出力との関係においての資源の振り分けの方向づけのための出力の分類の仕方を提供する。

必要なマネジメント・アクション

1.権限と責任の委譲――管理者は個々人に対して下記の責任を明確にしなければならない。

a. 現在の,出力の階層的一覧表,すなわち単位作業構造を維持すること。もし管理資料として用いられるならば,この一覧表は新版でなければならないし,また,これが予算編成に用いられるならば, 期待される出力を反映したものでなければならない 。
b.目標の記述に述べた結果(目標値)を達成するためのすべての要因の代替案を記述し,評価すること 。
c. 適切な細かさのレベルで,将来のある期間の出力の量(額)を予測すること。

2 意思決定

a.上述の権限の委譲は,すべて代替案があることを前提としている。管理者は代替案の選択に関する意思決定の責任を引き受けねばならない。代替案は組織の効果性を維持または改善する一方,同時に(適切に測定された)組織の生産性を維持または改善するものであるが,所期の単原価生産性のトレードオフを提供するものである。
b.勤労生活の質の問題は,これら生産性と相互関係があり.考慮しなければならない。しかしながら,時に間違えて,士気とか,勤労生活の質といったものはすべて効果性,生産性,1台当たりの原価の改善に対し非生産的なものとして考えられることがある。

出力の品質
前に述べた,あるいはこれから述べる手続きは,どのような方法であれ,本質的な管理者の責任,すなわち,いかなる出力の必要な,所期の品質レベルを維持するという責任を変えるものではない。抵触することのないシステムは,品質に関して委譲された権限や責任を侵したり,廃止したりすることはない。しかしながらこの考え方は,品質と数量の相殺を考えることを阻止するものではない。

意思決定の記録
前述の選択分野に 関してなされた ,すべての意思決定の記録はとっておくべきである 。そしてそれは管理の質を高める基礎となる。

各出力に対応した基準年の標準類′すなわち,標準時間,標準原価等′所要の生産性指標による標準

 

定 義
基準年は,現在から遡ったどの年でもよい。ある年を基準年と決めるのは通常組織の上部である。“ 標準時間 ” は,各種の単位出力を作るのに要する実際の作業時間である。この時間は,単位出力を作り始めてから終了するまでの時間と混同してはならない。この後者の時間のことは“ 期間”(duration)と呼ぶ。期間は通常標準時間より大きい。もし労働生産性以外の生産性指標を用いるならば,また別の基準年の標準が必要である。

基準年標準時間あるいはその他の基準年標準値の目的 
基準年の標準時間(あるいは他の基準年標準値)は,それを基準として進捗を測るデータを提供する基準年標準値に対する実際の成果の比較値は,組織の出力にかかわるすべての要素を反映したものである。

必要なマネジメント・アクション
基準年の標準を作成する責任者として,ある特定の人を任命すべきである。

意思決定の記録
前に述べた選択の領域に関してなされた。意思決定の記録は,管理の質を高める基礎を築くためにとっておくべきである。

間接要員のためのゼロベース予算

定義
“ ゼロベース予算”は,予算年度において必要なすべての出力の総額を予測するために開発された手法である。すなわちおのおのの出力に基準年標準時間をかけ,その結果を予算年に期待する生産性で割る。その結果を1人当りの実労働時間で割ると,何人の要員が必要かがわかるそれに加えて,代替出力も考えねばならない。

ゼロベース予算に要求されるもの
先に述べたごとくゼロベース予算には下記のものが必要である。

1.予測しなければならない単位出力の一覧表とその代替出力。
2.予算年度において,各種の出力がいくら必要かという予測。
3.基準年標準時間。
4.予算年度の生産性の予測。
5.予算作成に最も適切な出力を選択すること。

管理者の責任

1 管理者は上記5項目に関し,それぞれ責任者を任命すべきである。
2 管理者は予測に関連する,妥当性の説明を検討し,これらの説明を受諾するに当たり,十分満足できるものでなければならない。
3.管理者は常に出力の予測,あるいは代替出力の予測をする方法を検討する責任者を任命するべきである。それは管理者というものは,常に課せられた目標を達成するに当たり,より経済的な方法をみつけ出す義務があるからである。

意思決定の記録
前にも述べたごとく,選択肢の選定に関する意思決定の記録は残しておくべきである。それは管理の質を向上させるための基礎を築くからである。

ある選ばれた期間の生産性指標の計算

定義と時期
生産性指標は,労働時間,費用あるいはその他の入力に対し,生産された目標指向の出力の比率と,基準年における同等の比率との比較として定義される。生産性の変化に対処するために,指標は週ごと,4週ごと,あるいは四半期ごとに,適時,無作為変化のない,意味のあ るデータの得られるときに計算すればよい。

管理者の責任
管理者は次の責任者を任命しなければならない。

1. 達成した作業の出力に関し,必要な報告書を作成する
2. 出カデータを収集し,生産性を計算する。
3. 基準年あるいは予測した生産性からの変動を検討し,その原因を明確にし,できるだけ改善策を施行する。
4. 第3の項目に関し上位者へ報告する。
5. 継続的に生産性改善の努力をする。一方では要求品質,そして,サービスレベルは維持しなければならない。ここに,サービスレベルにはサービスを提供するに要する期間の管理も含む。

意思決定の記録
前述の選択肢に関してとられた意思決定の記録は残しておくべきである。それは管理の質を向上する基礎を築くためである。

予測と実際出力との比較

比較の目的
予算は最も適切に仕事量の予測にもとづいている。生 産性の変化は要員計画すべき仕事量,あるいはその他の所要資源の比率の変化になって表われる。そこで,ある計画をモニターするに当たり重要なデータは予測仕事量と,実際仕事量との関係を表わすデータである。在庫, 仕残じ量もみておくべきである。

管理者の責任
管理者はある適切な期間をおいて,下記のことを報告する責任者を任命すべきである。

1.予測と実際の業務遂行期間に必要な出力の比較データや,最大限実現可能な改善策の提案。
2.在庫量,仕残り量の変化。
3.計画に対する仕残り量,在庫量。
4.期間の変化 5.基準年標準値と新しい出力のための新しい標準値 (生産性を評価するため),そして,現在の標準入力あるいは生産性指標(将来のゼロベース人員予算,要員配置,あるいは仕事量を現実的にするため)を残しておくべきである。
6.業務計画表の作成と維持。
7.原価データを集め,そして,前期の原価あるいは計画原価と比較,検討する。

必要なマネジメント・デシジョン

1.
a.計 画と実際の仕事量の差異。
b.仕残し量の変化。
c.仕残じ量。
d.期間の変化 等が原因となって意思決定が必要となる。
2 .
a.要員,設備,あ るいは機器の再配分。
b.要員の退職。
c.(十分なデータに支持された)増員,機器,設備の要求。
d.サービスレベル(期間の長短)の変化等々には意思決定が必要である。

報告書

特 色
前に参照した出力の一覧表は,階層的グループ分けによって記されていた。 この出力の一覧表は,監督者のための報告書として役立つもので,上位管理者のためにどのようにデータをまとめていくか,あらかじめ決められている,いくつかの非常に細かなレベルが,出力の一覧表(単位作業構造:work unit structure)に定義されている。

出力のまとめの基礎
例えば,ある種の出力の仕事量決定因子に,他の出力の仕事量決定因子を加えたら,全く意味のない数字になるということはよく理解されている。しかしながら生産性評価・測定システムにおいて,おのおのの単位出力は,基準年の標準値をもっている。そして基準年標準と等価の単位作業量決定因子に,他の出力の同様の因子を加えると,それは論理にかなった合計になる。例えば,

1.使用した資源との比較。
2. 予算をとった資源との比較。
3.かつて生産性指標を計算した。すなわち ,それは基準年の成果あるいは,予算に組み込まれた生産性予測と比較した生産性の計算等である。

管理者の責任

1.管理者は,階層的報告システムを設計する人を任命せねばならない。
2.管 理者は,全体の報告システムを支援するのに必要な報告書を用意する人を任命しなければならない。

管理者の意思決定
管理者は仕事量,方法あるいは要員配置に関し,意思決定をせねばならない。それは ,


1.計画と実際の差異を修正する。報告システムのどの総計のレベルでもよい 。
2.計画と実際の作業量,仕残り量,あるいは生産性の差異に起因する打撃を最少限にとどめる。ために決定がなされる。

意思決定の記録
何度も繰り返すが,前に述べた選択の領域に関し,なされたすべての意思決定の記録は保存されるべきである。それは管理の質を向上するための基礎を築くためである。


本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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