コラム・特集

5.5 サービス業務の出力の明確化:単位作業分析

IEハンドブック
第1部 インダストリアル・エンジニアリング機能
第5章 生産性の測定と改善

5.5 サービス業務の出力の明確化:単位作業分析

定 義

単位作業分析の概念において,単位作業という語には特別の意味がある。そしてその他の特別の用語も,今後の議論を容易にするために必要である。

単位作業

単位作業とは,作業量,あるいは,ある作業量をこなした結果であり,定量的に作業を検討するときには,好都合にも整数として取り扱えるものである。この定義において好都合といったのは,以下に示す事柄の有効な基礎となるからである。

1. IE技法の適用
2.予算における間接的資源(staff resources)の支援
3.賃率,その他の費用の展開
4.業務の計画と割当て
5.仕事量予測と稼働率の再吟味
6.計画に対する実績の継続的比較
7.組織の生産性の測定評価

明らかなように,この定義では非常に幅広い単位作業 (work unit)が存在する。すなわち,腕の1動作から組織体の1年間の総仕事量にいたる広さである。

単位作業のオーダー 単位作業という用語を秩序だてて用いるために,種々のサイズの単位作業を明確にする定義を確立する必要がある。おのおのの異なったサイズが,単位作業のオーダーとして関連づけられている。

異なったオーダーの単位作業 図表1.5.1は,種々のサイズの単位作業の一連の定義を示している。それらは,あらゆる種類の仕事を定量的に検討するのに適している。この図表は,第8位のオーダーから逆に第1位のオーダーヘ,分析の順序に合わせて表わしてある。また,小さな単位作業に小さな数字を用いるという点からも好都合といえる単位作業分析に,必ずしもこれら単位作業のオー ダーのすべてが用いられるわけでないことを注記せねばならない。一方,複雑な状況の分析を行う場合は,ここに示したものの中間の単位作業オーダーを用いる必要があることがある。その場合,オーダーを小数で示す(例えば単位作業のオーダーが,第6位と第7位の単位作業の中間にあったとすると第6.5位のオーダーとして表わす)。

図表1.5.1は厳密な作業の分類を示すものではないが,どのように命名するかをわかりやすく示したものである。それは目標から出力そして所要資源へと展開していくとき,あるいは,明確な方法がない場合に使える用語を提供するように設計されたものである。一つ注意せねばならないことは,単位作業は作業量として定義され,動作 時間研究の技法を適用したり,経営管理を行い易くする。基礎を提供するという観点から扱い易いものである。便利さという考え方から,しばしば単位作業のオーダーには異なった番号をつけることが望ましいこともある。生産性の測定は第5位単位作業より下位の単位作業では行わない。

単位作業分析 単位作業分析は組織の出力,あるいは出力の一部分を,単位作業という形で描写することである。分析は組織の目標と効果測定方法の記述から始まり,より小さな出力の単位(すなわち単位作業のオーダーの分解)を,下記の条件を満たすまで続けていくことである。

1.目標と出力の間には明確な関係があること
2.適度の詳細レベルに達していること,すなわち,出力の将来の有意義な予測ができ得ること
3.また,その他のIE技法が適用できる詳細レベルに達していること
4.おのおのの詳細レベルにおいて出力が明確になっていること
5.おのおのの詳細レベル間において,構成要素間には相互関係がないこと

単位作業の構造 単位作業作業構造とは,単位作業分析の結果としての,単位作業の階層的一覧表のことである。これは単位作業階層図ともよばれる。

単位作業分析適用の手続き


ステップ1
目標を叙述する(第8位の単位作業) 単位作業の構造図の描写を始めるにあたり,研究対象となる組織の目標を決めなければならない。高いレベルのマネジメントにおいては,種々の目標に直面しているので,明確で迅速なコミュニケーションのために特定のフォーマットを用いるとよい。ここに推薦するフォーマ ットは7つの項目があり,それらはこれから説明する。
1.サービスの種類
2.任務の領域
3.目的;意図
4.目的:特性 (dimension)
5.目標値
6.限界
7.自由度

サービスの種類 産業組織体には次の7つのサービスがある
1.製品出力とそれに直接関連するサービス .
2.出力を促進するサービス .
3.労務上の管理
4.経理上の管理
5.研究開発
6.顧客サービス .
7.資材の調達

これらの分類は定義をいうまでもない。単位作業分析は上述分類の2から7までに通常適用される。分類1は従来からのIE技法が適用できる領域である。

政府機関においては4つの基本的サービ スの種類(型) がある。実際には組織はこれら4つのサービ スの組み合わせと考えたほうがよい。もし,サービ スの組み合わせを分類に用いるならば,その旨明確にしておいたほうがよい。4つのサービ スの種類とその定義は以下の通りである。

1.建設的サービ ス-公共のためになされるサービス-
2.社会的規則-人々や企業あるいはグループの好ましからさる。あるいは不法な活動を防止する。
3.許認可および補助金―政府部外の人々,組織が政府資金の援助で所要の活動を引き受け,達成すること。
4.政府機関内サービスー公共と関係のないサービス・プログラムその努力は組織の内部で消費され , 最終出力の一部分とならないサービス (例えば,部門内予算担当課の活動)

任務の領域 これは企業の活動分野,その市場,その顧客,あるいは取引先のことである。すなわち研究対象となる組織の活動目標の成果,あるいは達成された望ましい効果,影響を受ける分野である。これは,次の3分節で述べる実際の効果と混同してはならない。政府機関にとって,この任務の領域とは,社会,経済とか,対象となる地域のことである。

目的:意図 この項目においては,任務の領域で定義した分野で,どのような効果を達成するかを述べる必要がある。適切なものであれば,その意図は1つに限る必要はない。5つ6つあってもよい。しかしながら,少なくとも1つの任務領域に1つの意図がなければなら ない。もしなければ,任務の領域を影響を受ける領域として考えることがむずかしくなる。

目的:特性 この項目においては,前述,意図のところで記述した。おのおのの意図を計量可能な属性,特性として記述することであり,影響を受ける分野の活動結果を定量化するという意義がある。少なくとも,1つ以上 の特性をおのおのの意図に与えるべきである。こ こで一つ注記すべきことは,これらの特性は,組織の間接要員の所要人数とほとんど関係がない。多くの無益な議論が,この無関係であることを指摘し忘れたために行われている。

目標値 この項目においては,先にまとめた。意図の特性ごとに達成すべき特性値を記述する。組織は通常2種類の目標値をもっている。それは1つは長期目標であり,もう1つは各会計年度ごとのものである。本当の経営管理を行うためには,明白な目標値を当年度のみならず,向こう何年か予測範囲内で持つ必要がある。経営管理を行いやすくするためには,長期目標値を設定することが望ましく,各年度の目標値は,その長期目標に沿ったものでなければならない。

限界 この項目においては,研究対象となっている組織の業務運用上の,あるいは出力の特別な制限があれば記述する(これはすべての組織を代表する制限をいうのではない)。この記述にあたっては,要員や予算の制約 を入れてはならない。これは特別の問題とはいいがたい。換言すれば,変更すればよい事柄であるからである。

自由度 この項目の下では,研究対象となる組織内において,特別な選択の自由をもっている活動分野を記述する。例えば,もし契約担当のグループが,必ずしも最低価格の入札者を選ばなくてもよいという場合等が該当する。

ステップ2
総出力を記述する(第7位の単位作業)
単位作業構造に関して,前述の目的を達成するためには,総出力をいくつかの大分類に仕分けることが望ましい。そしておのおのの分類は下記の要件に関し,おのおのの出力の特徴を明確にするものでなかればならない。

1 任務領域が異なっている
2.出力を生産するのに(現実に)製造方式が異なっている
3.原価計算方式が全く独立しているか異なっている (例えば,産業界においては,製品生産量関連費用対固定費用,あるいは政府機関においては政府負担か償還を原則とする仕事かといった区別)
4.支出に当たって,別々に異なった資金勘定科目から出される
5.得られる利益が異なっている
6.意図が異なっている
7.活動の種類,型が異なっている

これらの出力を課業(task)と混同じないために,特に出力がサービスの場合,その記述を適切な形容詞と名詞とともに,動詞の過去形を用いて表現するとよい。例えば,「製品の設計を行った」,「 経済評価を報告した 」,「工場の評価をし報告した」 ,「監査を実施した」等である。さらに「製品の設計を行った」という単純な文節であっても幅広く考える必要がある。それは単に設計の最終段階を実施したというのではなく,製品を設計するに当たってのすべての活動,サービスまで含まれている。それは最終出力に係わりのあった全従業員の病欠,休暇,あるいは給与計算書のサービス,等々まで含んでいる。よって,第7位の単位作業の範疇に入るものは,組織によって資源を有効活用された最終結果であると考えられる。逆に第7位単位作業は,この概念に合致するよう工夫しなければならない。

ステップ3
プログラム出力の記述(第6位単位作業)
おのおのの第7位単位作業は,2つ以上の第6位単位作業に分割される(分割したものの合計が第7位単位作業である)。これには次の条件がつく,つまり,以下に述べる主な判断基準,あるいは付加的判断基準のどちらにも合致するならばということである。単位作業構造の主な判断基準に沿いつづけながら,付加的判断基準で単位作業の分割を行っていくと,出力の特徴が次の点に関してより明確になってくる。

1.作業を牲させるシステムが,独立あるいは,別々の原因系である。
2.利益のバランスをとる決定をするにあたり,有益な下位集合である。
3.第7位単位作業で行った分類の下位分類であり,その分割の理由も同じである。
4.出力は同じような形で表わされるが,それを支援する資源の所要量は異なる。
5.第7位単位作業内のサブグループ,すなわち第6位単位作業は,任務の領域,目的,等々に関係するサブグループにより近く,第7位単位作業の出力と直接結びつけるほうが時にむずかしい。

ステップ4 出力の単位を記述する (第5位単位作業)

いかなる場合でも,第6位単位作業は出力の総計である。すなわち,好都合なことに,第6位単位作業に入っている“全て”を “おのおの”の単位作業に分け,それを第5位の単位作業と呼べばよい。 第5位の単位作業を分割するには,単位作業構造の原則にのっとる他に,次の事柄を行い易くするという観点を加えるとよい。

1.実際の出力の有効性の観点からおのおのの単位作 業の出力の標準を決める。
2.実行するか,しないかという種類の経営者の意思決定過程と連動するよう“ おのおの”の単位作業を決める。
3.出力に価格をつけるに当たり,有益かつ意義ある基準 (単位原価)を提供する。
4.第6位単位作業に含まれるおのおのの単位作業の作業量の基準を提供する。
5.作業量予測,作業方法の改善,作業測定等に便利な単位作業を提供する。

単位作業構造を構築する主な判断基準に関する 追言
1.第何位の単位作業の一覧表であれ,それは,研究対象となる組織の活動の帰結としての,作業全体を表わすものでなければならない。そして,その一覧表は,低位の単位作業にいくに従って詳細項目が増加していくだから,前述のごとく,各順位内の分類はすべて包含されている。そして,それらは重複することはなく,かつ,お互いに排他的なものでなければならない。

2 単位作業で予算作成のために予測をしたり,性能評価のために 算出するものは,次のいずれかである。
a.最終製品出力(これはサービス,あるいは製品の単位で,研究対象組織内ではこれより以上の作業は発生せず,かつ目標達成に寄与するところのものである)
b.出力で,最終製品との間に既知のあるいは固定した関係があるもの
c.投入資源と関係のある出力

3.単位作業構造は,当該プログラムにたずさわる人々に受け入れられるものでなければならないし,プログラムの決定をするときに,どのように出力するか,どのように出力を考えるべきかということと,関連づけられていなければならない。もし,プログラム担当者が単位作業構造の開発に参画していれば,すぐにも,これらの基準に合致しているはずである。

ケース1-一単位作業分析を「米国生産性委員 会」に適用した事例

はじめに単位作業分析は,当該プログラム担当者の参画なくしては完了することはできない。通常,プ ログラム担当者は,プログラムに関する必要な詳細にわたる知識を持つ唯一の人である。多くの場合“ 参画”という概念は,この分析が成功裡に終了したときにのみ使うようにすべきである。

次に,分析対象となる組織の部分を定義しなければならない本分析は1つの課とか支店,事務所,あるいは 部といった単位に適用できる。最も有効なアプローチは,プログラムに責任を持っている組織全体に適用することである。そのプログラムを担当する組織は,そ の所属する組織体の残りの部分,あるいは公共との接点となる (単位作業分析を政府関係の組織に適用する場合,その対象となるところは通常,経済とか社会の一分野であるとか,地域の一部であるとか,達成効果が明確になる分野である。

ここで検討する ケースは ,米国生産性委員会(National Productivity Board)が 単位作業分析を自身の組織に適用したものであり,それは自己改善のための,より詳細な技法を適用するための基礎を作るということであった。また,彼らは内部の経営管理体制の改善も望んでいた。

単位作業構造

上述の手続きに従って,委員会のIEスタッフは単位作業構造を図表152から図表155に示すように記述した。
第7位のおのおのの単位作業に2桁 の数字を指定した。そして下位の単位作業のおのおのに,さらに2桁の数字を指定するということを続けることによって,各オー ダーの各単位作業は,独自の番号を持つことができるようになる。もしこれらの番号が,さらに他の2桁の数字で,下位組織を示すように事前に決められていたならば , 階層的会計帳票にもなる。

結 果

第8位単位作業は,明確に組織の成功を評価,測定するための基準を述べている。これはいくべき方向を示すという点で経営の一助とはなるが,それ以外の何物でもない。第7位単位作業の一覧表は,このレベルに集約された資源の配分を検討したり,異なった配分戦略を評価する基礎を提供してくれる。第6位単位作業一覧表は,予測をする基礎を提供してくれ,第5位の単位作業一覧表は,具体的詳細レベルでの経営管理の基礎を提供してくれる。さらに第5位単位作業一覧表は,他のより詳細にわたるIE技法を適用するのに適した形でサービス出力が述べられている。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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