コラム・特集

4.7 生産性と品質

IEハンドブック

 

第1部 インダストリアル・エンジニアリング機能
第4章 生産性論究

4.7 生産性と品質

新型ロールス・ロイスの品質は,いつでも高いとは誰でもが考えないという小さな疑間がある。また誰でもが,もっと多くの人一時間が,より多く大量生産された大衆が運転する乗用車よりも,ロールス・ロイスの1台を製造するのに使われている,とする説明に疑いをさしはさむかどうか疑わしい。典型的な乗用車と較べて10ないし20倍に当たる100,000ドルという価格は,ロールス・ロイスを製造する生産性が相対的には低いが,品質は高い,という事実を示している。

品質と生産性は,しばしば相対立するものとして考察されてきた。市場調査担当者は,ときどき次のような質問をする。すなわち「もしあなたが,そのような変化の中にあるとして,そうであれるとすれば,コストを引き下げるであろうが,しかし,製品の品質をも低下させたりはしないでしょうね」。生産性と品質は,通常一体的な挙動を示す。その挙動は品質対生産性としてではなくて,生産性を保った品質としてである。

フランスの政治家アレキシス・ドゥ・トックヴィル (Alexis de Tocquville)は ,1840年代に合衆国から帰国して,民主主義社会における労働者は,平均人が耐え られる価格で品質が単純な製品を大量生産するために,労働者がより良い条件下で作業するのでなく,もっと迅速に,そして低いコストで作業する方法を考案することに熱中していることに思い至った。トックヴィルは,アメリカの方法をヨーロッパの職人の方法と対称化した。 ヨーロッパの職人は少数の富裕な階層に向けて,高いコストをかけて少数ではあるが高品質の手造りの製品を造ることに関心を集中している。過去100年間以上にわたって,合衆国では生産性と品質の両面とも大幅に向上してきた技術利用をする工業は,品質の高い製品を大量生産化することに成功してきた。冷蔵庫,自動洗濯機,自動車,コンピュータおよびカメラは年ごとに品質が向上 した製品の実例である。そして,これらの製品を製造する労働者の生産性も,また続けさまに向上している。

生産性に起因する利得をあげるのに役立った技術変動は,直接的に製品の品質を向上させてきた。機械化,オートメーション,および計算機援用設計と製造の背景には,人間の器用さの,より高い生産性をもたらす信頼性と精度の向上した装置への移行がある。製品の標準化,特殊化,および単純化により,大量生産と製品の均一化のための装置が実現してきた。生産性と品質とが,同時に向上してきたことがわかる。

もし,ある人が,人的努力の生産性と材料資源の利用に対して,初期コストよりも製品寿命を中心にして考察するとすれば,社会全体の生産性向上を達成する上で,品質という概念は極めて重要な要素である,という結論に達することができる製品の製造に要求される延人一 時間数を,直接および間接労働に考察することで,わ われは産業生産性を測定しようとすることが多い。もし,われわれが所要の人一時間を減少し得るならば,われわれは生産性を向上してきたとして見なすこのことは,工業や工場に関する限りでは,正しい測定であるとしてよい。

いま,製品を自動洗濯機とし,顧客が利用するときの 標準的な製品寿命は6年であるとするとして仮定を置くことにする。もし,その洗濯機が,12年の標準的寿命が与えられた品質をもつように設計されて製造され得るならば,そのためには多分,非常にたくさんの製品を製造するのに必要とされる人一時間数を変更する必要はないし,また,材料の量によって,製品を大幅に変更することも必要はないであろう。しかしながら,社会的観点より,もし,実際に,その製品が2倍長持ちし,顧客が2倍の年月にわたって,その機能を遂行するならば,われわれは,その機械を製造した作業者の生産性を,実際に2倍にすることができたことになる。もし,生産性が,製品を製造するのに投入されるエネルギー,材料,資本,および人的努力により最大限の利用をするという広い基礎の上で考察されるならば,社会が関心をもっている限り,われわれは,常により高い生産性を達成するために,より高い品質を常に求めるべく努力していくであろう。最終的には,顧客は,この全体的な見方を受け入れて,初期コストだけの狭義の考察をまったく用いないであろう。

品質の欠陥は,多大な時間をかけてなされた高度の生 産作業を台無しにし得る。生産性は,実質的には最終利用者に対してサービスを遂行する際に,その製品が何をするかということを測定することによらねばならない。 生産性は,出荷場の出口までしか測定していないとすれば,それは不十分である。

電力利用のための大型発電機の生産コストは何百万ドルもする。このような発電機には,熟練技師および労働者によって,膨大な人一時間をかけることが要求される。そして,発電機は非常に大型であるので,最終組み立ておよび検査は,発電機が導入された場所でなされなければならない。数年前,ある会社が水素冷却をした大型装置を出荷した後,最終の現地検査の1つが,水素が循環した通路が,どの位置でも閉鎖されていないということを検査するために設計された。このことは,通路を通過した空気を送風することによって行われた。通路のいくつかは,通路の中で元素Yをもった。そこで実際は,Yのアームを閉じて,それ以外のアームを通じての流れを検査しなければならなかった。すなわち,その時,第1のアームによる空気の通過を検査するために,Yの検査済みのアームを閉じなければならなかった。すべての通 路は満足すべき状態で検査されたが,しかし検査後,検査担当者は第1の通路の流れを検査するために,第2の通路を閉鎖するために使われてきた1個の0.20ドル銅貨をはずすのを怠った。検査のための操作のコントロールは満足すべきものではなかった。機械は操作を開始したが,その日のうちに過熱をしてしまい,コ イルは焼け落ち,その結果修理作業のために100万ドル相当を損失した。この事例では,不適切な品質管理によって,数千時間の生産作業をふいにしたことになる。

電力利用のための大型発電機の生産コストは何百万ドルもする。このような発電機には,熟練技師および労働者によって,膨大な人一時間をかけることが要求される。そして,発電機は非常に大型であるので,最終組み立ておよび検査は,発電機が導入された場所でなされなければならない。数年前,ある会社が水素冷却をした大型装 置を出荷した後,最終の現地検査の1つが,水素が循環した通路が,どの位置でも閉鎖されていないということを検査するために設計された。このことは,通路を通過した空気を送風することによって行われた。通路のいくつかは,通路の中で元素Yをもった。そこで実際は,Yのアームを閉じて,それ以外のアームを通じての流れを検査しなければならなかった。すなわち,その時,第1のアームによる空気の通過を検査するために,Yの検査済みのアームを閉じなければならなかった。すべての通路は満足すべき状態で検査されたが,しかし検査後,検査担当者は第1の通路の流れを検査するために,第 2の通路を閉鎖するために使われてきた1個の0.20ド ル銅貨をはずすのを怠った。検査のための操作のコントロールは満足すべきものではなかった。機械は操作を開始したが,その日のうちに過熱をしてしまい,コイルは焼け落ち,その結果修理作業のために100万 ドル相当を損失した。この事例では,不適切な品質管理によって,数千時間の生産作業をふいにしたことになる。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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