コラム・特集

4.6 生産性に影響を与える諸要素

IEハンドブック
第1部 インダストリアル・エンジニアリング機能
第4章 生産性論究

4.6 生産性に影響を与える諸要素

国民生産性に影響を与える諸要素

生産性に関する国民政策の公表は,1975年に生産性および労働の質全国会議(the National Commission on Productivity and Work Quality)によって行われた。その公表では,生産性に影響を与える3大問題,すなわち(1)人的資源,(2)技術および資本投資,お よび(3)政府規則,が総括して提示された。

人的資源

教育の一般水準は,国民生産性では重要な要素となる。コンピュータおよびその他の高度の装置やシステムを利用していく上では,高等教育を受けた従業者が必要である。従業者は,生産性を高めるように動機付けされる必要がある。給与だけでは十分とはいえない。従業者は,良質で安全な作業条件が与えられ,さらに企業の中枢部分として再編成される必要がある。全従業者は,どのように作業するかについての企画に参加することを欲しており,さらに生産性向上に積極的な貢献をなし得る,ということが認められるようになってきている。労使は,賃金やボーナスを交渉する際には敵対することがある。しかし ,両者は,全体的な利益につながること,特 に生産性向上を追求する点で協働し得るにある。政府は,また,高度の教育,特に生産性に直接影響する分野に補助金を出すことで助成できる。

技術および資本投資

長期的に連続した生産性向上における主要要素として技術がある。そのうち,新技術は研究開発(R&D)に依存している。 連邦政府は,軍事,宇宙,および農業計画を通じて, R&Dのための多くの努力に対して助成してきた。これらの諸活動に対しての税制上の優遇措置を通じて,連邦政府はまた,R&Dを通じての民間企業努力を支援してきている。も っと 直接的な大学の研究助成については , 新技術開発に焦点が当てられている。新技術の利用をする産業やサービス業については,新しい機械装置やその他の装置に投資をしなければならない。政府は,この種の投資を助成するために,多くの政策手段をもっている 。 具体的には次のように列挙できる。

・資本を投資可能にするために,個人貯蓄を奨励すること。
・利益課税を削減するために,新装置へ投資するための資金を融資可能にし,同時に奨励もすること 。
・新規投資のための現金フローを引き当てるための減価償却比率を認可すること。
・増大する投資課税への貸付により,新規投資を直接 的に奨励すること。

政府規制

打ち 重なる政府規制は,生産性を向 上してない活動ヘ の人材や投資が分散してしまうことで,生産性へ 悪い 影 響を及ぼしてしまっている。政府は,不必要となった規制を廃止することや,健康や安全に関する規制のような, 必要と判断される政府規制についての費用便益分析をするとかの ,やるべき事柄は,たくさん残されている。

製造業およびサービス業における生産性に影響 を与える諸要素

生産性向上は,合衆国を世界における最大の産業国家にしてきた。アメリカ産業における生産性向上に対する組織化された接近法は, F.W.テイラー(Frederick W.Taylor)をその端緒とする。彼はインダストリアル・エンジニアリングの父と呼ばれてきている。テイラーは, 仕事がどのように遂行され,仕事がどのようにして基本要素に分割されるかに関する詳細に及ぶ知識に基づいて, どのような作業努力のための組織が生産性を向上し得るか,ということを提示したのである 。

南北戦争に続く四半世紀間に登場し た科学的管理法を 創出し た先覚者達のうちの,いま 一人の人物は,H L. ガント(Henry Laurence Gantt)で あつた。彼が異才 であった点は,人的努力を動機付けたリコントロールするために,使 い得る知識を拡げたことにあった。彼の課 業賞与奨励 給制震E(task and bonus incentive pay plan)は ,世界中に知れわたるようになった。そして,成果を正確に予測し記録するための単純な方式としての,ガント・チャートは,第 1次世界大戦中の貨物船舶の建造の速度を向上させた。この技法は,PERT(Perfor mance Evaluation Review Technique)の先駆をなすものであり,現代において,ア メリカの宇宙航空士の月面着陸を支援したことにもなったのである。

その時代には,ギルブレス夫妻(the Gilbreths)一 リリアンおよびフランク(Lillian and Frank)― は,映画を1コマごと比験しながら,人間の作業動作を入念に研究した。夫妻は,指の動作に至るまで,作業を非常に小さな要素にまで分割した。そのような分割により各動作を検討して,おそらくは単純化かさもなくば廃上をさ せた。

この先駆的な科学的管理法に対する努力の目的―そして,現代における継続中の生産性向上への努力の目的は,人間の作業を強化させるためではなく,能率よく作 業をするためにある。現代の人たちは,50年前と比較して,はげしい作業をすることはない 。実際,一般的にいえば作業は容易になっている。人的努力によって得られる生産性向上の大きさは限られている。一度人間が完全なまでの通常の努力をしたとしても,期待されるものは何もないのである。継続的で蓄積的な生産性向上をするための唯―の方法は,方法の変更を通じてである。そして,産業またはサービスの生産性においては,このことは4要素,すなわち(1)製品またはシステム設計, (2)機械および装置,(3)作業者の技能と,その有効性,および(4)生産数量,を含んでいる。これらの要素の, それぞれについての用語は,それらの要素が生産性向上の中で演じる部分というものを明示している。

製品またはシステム設計

より良き製品設計を通して,もし製品が,そ の部品または一部のいくつかを除去することによって単純化され得るとするならば,それらの部品を作っている材料は,もはや必要とされないことは明らかである。このような部品を作るための装置,機具,および労働も,必要とはされないであろう。生産性を向上させるために価値分析をすることで,製品設計の変更を,何度でもできる。

研究開発は,製品設計を推進する上で大変に役立つ。 R&Dの研究およびそれの生産性に及ぼす効果は,重要な関係概念として示されている 。研究とは,極めて低いコストで新規の方法により行われる機能をもつ全く新しい原理に依存している。そのことは,今日の事務用複写器というものによって,秘書がカーボン紙を利用したり, 再度タイプをしたりする必要なしに文献の複写をするのが,どんなにか容易になってきたかを考えただけでも分かるはずである。

製品の標準化およびグループ・テクノロジー(group technology)の利用は,今日まで工場で,より高い生産性を導き出す,いまひとつの設計要素というべきである。同 一規格で多量の製品生産がなされれば,その設計コストは,多数の製品で負担できる作業者は,精密化のすすんだ機器類を利用することで,各人の作業の遂行をやりやすくできて, また現場での保守や保全も容易となる。

製品設計に影響を与えるこれらの要素のすべては,多年にわたって蓄積的な効果をもつ。40年前,大型変圧器は72,000キロボルト・アンペア(kVA)の容量をもっていた。新材料の研究開発と設計向上を通じて,今日の同一寸法の変圧器は500,000kVAの容量をもっている。今日の製品は,同一寸法と重量の旧式変圧器と較べて,7倍の電力を変圧する。

機械および装置

一度製品が設計されてしまえば,その製造法は産業内での次の機会における生産性向上を誘い出す。使用された装置-機械,機具, コンベア, ロボット,工場の配 置の方法-これらすべてが,この際重要である。

サービス業における生産性に関して,機械と装置の重要性は,例えば台所や洗濯室を観察するだけで一目瞭然である。一世代前の主婦は ,家庭内の洗濯のためには,たらいと絞り機とを用いて一日がかりでやる以外になかった。 現在では,衣類は全自動洗濯機の中に放り込んでおいて外の仕事がやれる。生産性向上は,用語の中から「洗濯日」権という用語を洗い落としてきた。 このサービ ス作業の1日は,1時間にまで短縮されたのである。

コンピュータは,今日における近代的生産に欠くべからぎる道具となっている。コンピュー タは製品設計に用されると同時に,精蜜な機械設備を操作するのにも援用されて,さらに,それは在庫や部品についての数量をコントロールする。コンピュータは生産性向 上に際して,欠くべからさる要素となってきたのである。

新規の装置が各年度ごとに増設されて,さらに旧式装置が更新されることによりわれわれは継続して生産性を向上することにより,そ の効果を蓄積していくこともできる。

作業者の技能と効果

産業またはサービスの生産性にとって基本的なことは,作業者の技能と効果である。人間に作業を強化させることが目的ではない。作業者が作業をする上での最も良い方法を,訓練することが必要である。最も良い方法とは,素質に頼ってやることではない。例えば,レストランのウェイトレスの給仕の作業では,その成果の水準を変え得ることを看取し得る。訓練済みで経験豊富なウェイトレスは,週末に雇れたばかりの新米と比較して,同一作業を短時間でもって,能率よく遂行することができるのである。

しかしながら,たとえ訓練済みの従業員であっても奨励されることが必要であり,さらに作業へ最善をつくしたいという気持を持たねばならない。この事実は,近年において大きな関心を呼んでいる分野であり,将来的にもかなりの注目を受けるに値する分野である。「品質サークル」(quality circles)のような計画化された従業員参加は,従業員を動機付けるだけでなく,生産性概念を有効に発展させ,そして動機付けおよび生産性に関する重要かつ積極的な効果をもたらしてくれる。

生産数量

今日の大多数の企業において,時間給作業者と同様に多数の給与従業者が存在する。実際,直接的に製品の製 造に従事している作業者の数は,ほとんどすべての産業における業務を見回しても少数であるといえる。
産出数量は2倍になっていると仮定しよう。直接的な作業者の数は2倍 になるはずであり,そして少数の間接的な作業者が,また必要とされるかもしれない。しかし,多分より多くの技師,研究員,本社要員,または支援要員を必要とはしないであろう。そこで,もし産出量が2倍になれば,これらの支持要員の生産性は,実質的には2倍になっている。有効数量は,おびただしいものになり得る。

このことは,ヘンリー・フォード(Henry Ford)および初期の自動車業界の先覚者が発見した知見の一つである。初期の自動車産業にでさかのばれば,数千の自動車製造業者が存在していた。しかしながら,それらの業者のうちの何者かが高い生産量を達成したときに,その生産性の観点よりする数量効果は極めて大きかったが,低い生産量の多数の業者はある水準を達成できなかった。現在,合衆国での自動車産業には大手の3社だけが存在しているにすぎない。また ,これらの3社は,多数の小企業がかけるコストより多分もっと低額の 位当りコストで,車両を製造できる。

サービス業における数量効果の実例としては,ファーストフード・チェーンがある。こではシステム計画,詳細訓練手続,施設設計,および調達は統一化されて,何千もの小売店舗に対して実施されている。急速に数量を増加した経験をもつモーターエ場長の一人は,高利益をこうした手法で達成できたと述べている 。「生産数量は,極めて速く伸びたので,支払いを貯めている時間さえなかったJと彼は語った。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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