コラム・特集

3.7 IEの役割

IEハンドブック
第1部 インダストリアル・エンジニアリング機能
第3章 インダストリアル・エンジニアリング業務の効率化

3.7 IEの役割

図表1.3.4の一部については,説明を追加する必要がある。「関係者」という要因の欄には, IE専門家の役割と機能の例も掲載してある。図表は,計画および設計の活動分野だけを示したものであるが,それでも,数多くのIEの役割があげられている。IEが関係する活動分野すべてを取り上げれば,当然,も っとたくさんの役割が必要になる。

しかし,ここで重要なのは, IE業務の効率化のためには, IErは 各問題や活動分野のいろいろな段階ごとに,異なった役割や機能を演じる必要があるということである。 IErは,もはや,たったひとつの仕事,たとえば,モデル作成者,計画促進者あるいは設計専門家だけで済ますわけにはいかない 。図表1.3.4にあげられているあらゆる役割や機能をこなさなければならない。
図表1.3.5は, IEの果たさなければならない役害と機能の種類を列挙したものである。

この内の1つ以上を同時に兼ね備えなければならない。たとえば,会社の生産性向上計画を実施・監督する場合には,測定担当者兼参加者兼支持者であり,病院の原価低減計画の一部としての患者の入院・料金請求システム 改善の計画。設計の場合には,橋渡じ人兼計画援助者兼トレーナーであり,また, 1年前に建設した新工場の効率を評価する場合には,アドバイザー兼アナリスト兼評価者といった具合である。もう一度繰り返すと,(IEにとって,二,三の役割だけのほうが気楽だとしても)時間軸に沿ってプロジェクトが進行するにつれて,次から次へと変わった役割をこなしていくことが一番重要なのである。活動分野の各ステップごとに, IEの役割は確 実に異なってくる。IErとしては,役割を変化させるべき時点,特定の能力を持つ人に援助を求める時点, レパートリーに特定の技能を加えるべき時点を知るために,すべての役割について知識を持っている必要がある。

IErの経験年数によって,果たすべき役割が変わることはないが,取り扱う活動分野や問題の範囲やレベル には影響がある。IErの新人には小規模な第一線のプロジェクトが割り当てられることが多いが,3年から7年の経験のある。IErには戦術レベルの任務(品質保証報告システムの自動化,小型工場のレイアウト,企業の 年間原価低減目標)がまかされ,8年から12年の経験ある。IErには戦略的な任務(4つの計画を1つに統合,市場調査計画の設計,予算作成)がまかされ,12年以上の経験のある。IErには,方針設定の任務 (企業計画 , 新製品評価,社長補佐あるいは役員会の一員)がまかされる。
業務の効率改善はどの場合にも同じように重要である。

IE業務を成功させるには,対象とする活動分野内でいろいろな機能や役割を果たしているだけでは不十分である。組織や依頼人が成果をあげているということは,必ず何らかの役割を演じているということである。したがって,IEがまず第一に確かめなければならないのは,依頼人の存在である。依頼人とは,解決案や対応策が見出された場合に,問題点に対して「何事かを行う責任を負う立場にある現実世界の人」なのである プロジェク ト の最後まで意欲的に活動してくれる人が現実の世界の 側にいない限り,IEだけが重要だと考えているプロジェクトを開始する場合には,極めて慎重に配慮しなければならない会社,部門あるいは建造物のたくさんの目的 の階層の中から,必要とされる目的の重要性を適正に評価できたとしても,会社・部門あるいは建造物そのもの は絶対に問題点の解決や変化の実現に対し て何もできな い .こ れができるのは,現実の世界に実在する人々だけ なのである。長期にわたって効率的に相互作用していく上にも,また,アイデアを活用して成果をあげるためにも,プロジェクトの開始にあたって現実世界の人に問題を委ねることが重要である。人々の参加を求めてさまさまな手を打つことはできるが,これが実現しない限リプロジェクトは失敗してし まう。現実世界の側で改善結果を待望し活用しない限り,実行への扉までの道をつけてくれようはずがない。したがって,成功の確率が極めて高いプロジェクトに集中することが, IE実務の効率を高める大きな要因となる。

依頼人との接触がうまくいけば,その後の役割の大半 は依頼人が受け持ってくれることになる。たとえば,困 難な点や期待する点を率直に説明し,対象とする状態に特有の情報や専門的意見を提供し ,データ収集を援助し, タイムリーに意思決定し,重要な人々を指名してプロジェ クトに関係させ,諸資源を配置する,などである。

どんな場合でも, IEが果たすべき役割として残されるのは,個々の問題についてトータル・アプローチの立場から時間的な展望を行うことである 。つまり,同じように組織の改善を追求している他のスタッフとの相互関係を維持しなければならないし(133参照 )。こうした人々(ス タッフ)は絶対にプロジェクト・チームに必要であり,少なくとも, IEが現実世界の人々と手を結び合うのと同じように, IEと密接に協力し合わなければならない。

IEとしてプロ意識を持つことは,このハンドブックの他の章で取り上げている原則に対する知識や手法の専門的技能を持つことよりも,ずっと重要である。この章では,一般に言われているようなIEの手法や道具(たとえば,情報システム,作業測定,マ テリ アルズ・ハンドリング,メソッド・エンジニアリング,シミュレーション,経済評価)については, IEのプロ意識ほど必要でないので, とくに触れない。これらの手法や道具は,トータル・アプローチの中で,実世界のデータを得るために随時適用されるにすぎない方法設計を取り上げた。 3.1章では,あのおなじみのメソッド・エンジニアリングがトータル・アプローチに利用され,ダイナミックな形に変身し て最新の成果をあげた事例が示されている手法,原則,モデルは, IEの教育としては重要である。けれども, IEの実務にとっては比較的重要ではないのである(卒業後3ないし5年のIErの調査でも同じ結果が出ている) 。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

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