コラム・特集

3.5 目的を持った活動と価値

IEハンドブック
第1部 インダストリアル・エンジニアリング機能
第3章 インダストリアル・エンジニアリング業務の効率化

3.5 目的を持った活動と価値

「目的を持った」とは,「 目的(ねらい,任務,方向)とする質を持った」あるいは「目的によって特性を示された」という意味である.目的には,建設的で,合法的で,組織から要請され,社会的に必要とされ,しかも,社会的に容認されるという特性がある。活動とは,あるねらいを持った行動である。人間の目的を考えると,次のような分類があげられる。これは,人間の基本的な「目的を持った活動」を分類したものといえる。

「目的を持った」とは,「 目的(ねらい,任務,方向)とする質を持った」あるいは「目的によって特性を示された」という意味である。目的には,建設的で,合法的で,組織から要請され,社会的に必要とされ,しかも,社会的に容認されるという特性がある。活動とは,あるねらいを持った行動である。人間の目的を考えると,次のような分類があげられる。これは,人間の基本的な「目的を持った活動」を分類したものといえる。

1.自己保存と生存を確保する一自己保存
2.現在の解決案あるいはシステムを動かし監督する一オペレート(実施)および監督
3.特定の状態に対する解決案あるいはシステムを創 造し,再構成する一計画および設計
4.概況を調査し,原因を追究する一調査
5.従来の解決案あるいは他の活動分野の成果を評価 する一評価
6.現在の情報および一般状況について知識および技能を習得する一学習
7.余暇を楽しむ―レジャー

目的を持った活動分野の内,(1)と(7),ついてはここでは取り上げない。活動(1)は基本的かつ本能的なものであり,物質的あるいは社会的な安定が得られれば,他の活動へと変わっていく。また(7)についても,何もしない場合を除いては,各自にとってのレジャーが何であるかが決まり次第,他の5つの活動のどれかに転換していく。図表1.3.2は ,(2)から(6)の5つの活動分野について,問題の例をあげたものである。

この5つの目的を持った活動分野は,何らかの目標あるいは業務とかかわり合っている。たとえば,出荷部門は5つの活動全部に関連している。したがって,出荷部門のかかえている問題が,実施および監督か,計画および設計か,調査か,評価か,学習かを確認する必要がある。これらの5つの活動は必ずしも独立ではない。相互に関連し合っている.計画および設計をうまくすすめるには,プロジェクトのいろいろな点で,調査,評価,学習が必要である。

IEは,他のエンジニアリングに比べると,かかわり合いのある問題の種類が多い。システム改善の援助(実施および監督,計画および設計活動),原因の分析および発見(調査活動),新システムの開発(計画および設計活動),新しい用途の開発(計画および設計活動)などである。さらに,IEは 評価,調査,学習も行う。

この主な5つの活動分野には多数の二次活動が含まれる。これらの二次的活動は特定の主要活動にだけ見られるのではなく,あらゆる活動分野に生じるものであり,次のような活動が含まれる。

意思決定を行う。
達成基準(管理の標準)を維持する。
矛盾点を解決する。
現象をモデル化する。
創造的なアイデアを啓発する。
優先順位を決める。
個人の努力を教育訓練する。
個人の努力を集め刺激する。

基本的な「目的を持った活動Jは,二次的な活動の内容(ねらい)を決める。意思決定は何に関して行うのか―実施・監督か,計画・設計か? 何の矛盾点を解決するのか? 何について創造性を啓発するのか? どんな目的でモデル化するのか? どんな理由で優先月 頃 位を設定するのか? 何のために技能を教育するのか? どんな活動(目的を持った活動)を達成するために個人の努力を集中させるのか

なぜ「何かJが問題になるのか? なぜ,人は自分自身やまわりの世界を良くしようとするのか?「良く」というのはどういうことなのか? 問題の「気がかりな」面とはどういうことなのか? 人間の動機付けや価値観の誘因はよく分からないとしても,不完全かつ不正確ではあるが,内容の評価はできる。

現代の理論家は,確実性と安全性に対する人間の本能,要求,欲望から価値観,倫理観,動機付けが生じると主張している。このようなニーズの性格については,多くの学者が研究してきた。よく知られた研究のひとつに,欲求の階層がある17欲求の階層は,(1)生存,(2)安全,から始まり,(3)社会・友好,(4)尊敬,承認,(5)自律・独 立,(6)自己実現,の欲求と続く.なお,とくに強調する。必要はないが,その他にも2つの欲求がある。(7)学習し理解したいという知識の欲求,(8)美的欲求,である。人間の欲求は1つのレベルが満足されると,次のレベルヘ移っていく。

人間の動機付けを取り上げるにあたり ,「より良い」という言葉を定義することが重要である。人間はほと どいつでも何かもっとよい のを探し求めている。そのために,問題が生じるのである。何かもっと良くなると考えるために,関心を持つようになる。

より良いという言葉は多面的であり,ただひとつたけの欲望や欲求を表わすのではない。たとえば,生産性の向上とは,原価,歩留り,機械稼働率などの「気がかりな点Jをより良くすることである。より良くしたいという欲求が何らかの事柄や状態(たとえば,出荷部門)に向けられている場合には,価値,日標,達成目標の3つのレベルが考えられる。生産性の例では,より良いということには,人間の欲求を満たすため生産性向上の知識を適用したい欲望や,自分自身のために学習したいという価値も含まれている。価値とは,信念,望ましい最終状態,社会的・個人的な熱望,切実な要望などを含める。これらの価値は,特定の目標,および達成目標と結びついている。目標とは,特定の価値がうまく達成されたか どうかを決める評価基準である(生産性の例では,材料原単位の低減,機械稼働率の向上,売上利益率の増大などが目標である)達成目標とは,一定の時間あるいは費用制限内での目標の達成水準である(たとえば,8カ月以内に資材原単位を10パーセント低減)。

問題を定義するにあたり,IErは特定の要件を具備した特定の目的を持った活動について,価値,日標,達成目標を設定しなければならない。特定の現象から問題を発見する誘因は,目的を持った活動の価値をより良いものにしたいという欲望である。効率的な解決案により, 問題の発生時に比べて,価値が高まる。目標と達成目標によって,特定の要件に合った価値が実現化する。

価値,日標,達成目標は,前述の5つの目的を持った活動分野ごとに異なっている。あるマネジャーは,単なる好奇心から,あるいは従来の保全報告書から動機付けされて,IEに対して設備別の投下資本と休止率の関係 の調査を依頼するかもしれない。このマネジャーは,情報をどのように使うか特別なアイデアを持ってはいないが,いずれは役に立つだろうと考えている。このように, 調査という目的のある活動は,実施および監督の活動とは全く異なった価値,日標,達成目標を持つ傾向が高い。このマネジャーが,設備故障のない保全システムをIE に依頼したとすると,こ れは,実施および監督という目 的を持った活動であるので,価値,目 標,達成目標もそ れに応じて変わってくる。

あらゆる問題に価値的な面があると認識すると,IEは客観的な立場をとる訳にはいかない問題の解決案の発見は,常に主観的なものである。したがって, IEはその主力を狭苦しい学問や手法の世界から移さなければならない。また,単に定量化できるというだけでなく, 最も重要な目標と関連した測定尺度で解決案を評価しなければならない。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

 

 

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