コラム・特集

3.4 問題とは

IEハンドブック
第1部 インダストリアル・エンジニアリング機能
第3章 インダストリアル・エンジニアリング業務の効率化

3.4 問題とは

問題という言葉には,いろいろな定義が下されている。幾つかの例をあげると,「困難と思われること」「問題とは,有機体が決まった反応を起こさないような刺激状態である」,「 思考構造におけるストレスと緊張」,「 ギャップ」「ある目的を持った状況に対する不満」,「迂回しなければならない障害物」,などである。

類型学的に考えると,うまく構成された問題とまずく構成された問題に分かれる。他の分類法によれば,プログラム化された問題とプログラム化されない問題,無理な問題と東縛されていない問題,オープンな問題と閉鎖的な問題,日常問題と非日常的な問題,技術的問題と人 間的問題,決定論的問題と確率論的問題,などがある。

こうした分類の大部分は,完全な誤解の原因になるとは限らないとしても,不適当である。これらの分類は主として手法やモデルを中心としたもので,現実世界のニーズや問題に基づいていない。

エンジニアリングでは,専門的な見地から ,問題の4 つの種類を示している。
1.現在のシステムの改善(たとえば,サイズ,重量, 費用の引き下げ,性能や外観の改善 )
2.トラブルの診断と治療,あるいは,生産中の製品や稼働中のシステムに生じた事故原因の発見。
3.特定の問題解決のため,目的,情報,人材,エネルギーの新しい組み合わせ方あるいは新システムの開発.
4.現在の装置,情報,システムの新たな用途の開発このような分類はIErに役立つものであり,もっと包括的な見方をする場合にも取り入れられる。見地から,問題の4つの種類を示している。

いろいろなアイデアをひとつにまとめた定義を導き出すには,辞書が手がかりとなる。辞書によれば,問題とは,「気懸りな点のある実体のある事件Jである。「実体のある事件Jとは,質問,状態,現象,人間,論点などであり,「気がかりな点」とは,不確定性,障害,欲求,困難さ,疑問点などである。どのような言い回しをとろうと,問題を定義すると ,「気がかりな点を持つ何か」という表現に近くなる。

この場合,「何か」とは問題の実体的な面を,「気がかりな点」とは価値的な面を表現する実体的な面とは , 問題の種類と問題固有の要件―問題ごとに独特の「何が,どこで,何時,だれが一―の両方を意味する。また,価値的な面とは,欲求,熱望,ニ ーズなどを指す。

実体的な面からみた場合,問題は,何らかの目的のある活動と結びつけて分類される。これによって,IErは,現実の世界で解決が要請され,かつ解決の方法論を必要としているような問題を認識できるのである。一方 価値的な面からみると,問題に対して何かを行おうとする人間のモチベーションが追究される。このような定義方法には,次のような重要な利点がある。

1.特定の問題の実体的な面を明らかにしておくと,より確実に,適切な方法論を用いることができるようになる。たとえば,計画、設計問題と考える特定の状態があるとする。 通常のアプローチをとった場合の最終結果は,おそらく,一連の研究結果だけで,具体的な解決案は出てこないだろう。問題の種類と要件とに真直ぐ眼を向けることによって,第 3種の過誤 ,いいかえると,間違った問題の完全な解を求めようとする誤りを犯す確率が小さくなるのである。
2.問題の内容を明確に把握しているため,対象とする状態に個有の特質に問題解決の努力を集中できる。ひとつの解決案をいろいろな状態にあてはめるのではなく,ひとつひとつの問題について,特別のニーズ,評価,リソースを別あつらえするのである。
3.問題の価値的な面が示されるため,問題解決を人 間のニーズや熱望に直接に関連づけることができる。これによって, IErが倫理的な責任感のないただの専門家になってしまう恐れがなくなる。ただの専門家は,とかく 問題に既存の手法をあてはめようとしがちである。

実体的な事象を定義するにあたっては,次のような評価基準が考えられる。
1.(問題の)分類はできるだけ重複が少なく,しかも,人間の行うあらゆる活動に関連するあらゆる間 題を包括していなければならない。
2. 問題を明確化すると同時に,問題そのものよりもむしろ,人間がかかえている目的を中心とするような分類でなければならない。
3. 問題の取り扱い方を理解できるような分類,すなわち,方法論が導き出されるような分類でなければならない。
4. 適正な問題を取り上げ,かつ,問題解決のための創造性の開発ができるような分類でなければならない。

以上の評価基準から必然的に,目的をもった活動分野ごとに,いいかえれば,われわれの日々の生活の行動のレパートリーごとに,実体のある事象とは何であるか考えなければならない。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー