コラム・特集

3.3 実務の時間軸的展望

IEハンドブック
第1部 インダストリアル・エンジニアリング機能
第3章 インダストリアル・エンジニアリング業務の効率化

3.3 実務の時間軸的展望

手法と環境とをつなぐ実務化の決め手を確立するには,「IEは何を行わねばならないか」を時系列的に展望しなければならない。時間は取り消しできない。また,遅くしたり速くしたりもできない。プラスの無限大からマイナスの無限大まで広がっている。年代的な時間の推移という考え方は,IEの進め方を理解するただひとつの基盤なのである。「時間の経過には区切りがない……ベルを鳴らし,ピストルを撃つのはわれわれ人間だけである」

あらゆる現象の過去,現在,未来を理解する基礎となるのは,連続的な(離散的というよりも)時間軸である。一方の端に矢印のついた直線あるいはベクトルが時間軸を表わすものと考えようその上に任意の点を現在(秒 , 分,時 ,日 ,週 ,月 ,その他適当な時間単位)としてとると,過去と未来は自動的に決まる。

任意に選択した過去,現在あるいは未来の時点で,過去,現在あるいは予想される状態にある現象を抽象化,モデル化,記述化するには,いろいろな記号化の手法 (公式,図 形,グ ラフなど)がある。このハンドブックに示された原則により計画される解決案は,すべてが静的な未来のスナップであるといえる。

特定の現象のスナップは,スナップそのものが“ 正確 ” であるという前提に立っているので,未来のスナップということ自体が不適当といわさるを得ない。しかし,“正確性”は過去を基盤として整理あるいは統合された手法,モデル,原則に基づくものであり,その上,集める人々も異なれば成功の度合もさまさまである多くの過去のケースからデータを集めて,整理,統合が行われる。したがって,IE実務としては,特定の組織の特定の人々に,問題解決に際して正しくかつ成功可能な解決案あるいは対応策であると納得させるようにねらうべきである。これこそがIEの追究すべき目標であり,手法を適用したり,尺度の精度を高めることがIEの仕事ではないのである。未来を考えるとき,手法やモデルの効力については何の保証もされていないし,もっとも適切な手法を選択する優先順位の基準も確保されていない.手法,モデル,尺度の多くは役に立つかもしれないが,全く使いものにならないものも多いはずである。確実に「適切な質問を行う」そして「正しい問題を取り上げる」必要性が,こうした背景から浮かび上がってくる。同じ理由で,IE実 務において時間軸的な見方を取る必要があるといえる。

要するに,問題点やニーズの存在する現実の状態や依頼者の状況と並行した時間軸に沿って,IE実務の世界も動いていくのである。IEが何らかの問題を取り上げようと決めるちょうどその時でさえ,現実の世界は活動し続け,製品やサービスを生産し続けている。その上に,他のスタッフや間接業務(たとえば,長期計画,財務 ,組織開発,製品技術,データ処理)の世界も,現実の世界やIEの世界と並行して活動し続けている。スタッフの世界のひとつに問題が起こることもある。少なくとも,IEの世界は,問題が存在している間ずっと,常に幾つかの世界と共通領域を持っていなければならない。

現実の世界では,どんなときでも,結果,すなわち,目的達成のために必要な成果をあげることが必要である。したがって,IEは組織が重要視している問題の解決を援助しなければならない。IEの関与により効率的にすすめられた解決案や対応策の採用を組織(依頼人)に同意させるには,解決案や対応策のスナップ以上のものが必要である最終的に活用されるには,決定的な変化を考慮すると同様に,日常の変化を考えることが大切である。

実務の時間軸的展望がどれほどIEの活動を助けるかを説明する前に,問題という言葉を定義しなければならない。世の中にはいろいろな種類の問題があると,誰でも認めるに違いないが,どのような種類があるかははっきりしていない。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

 

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