コラム・特集

3.2 効率的なIEの実践

IEハンドブック
第1部 インダストリアル・エンジニアリング機能
第3章 イングストリアル・エンジエアリング業務の効率化

3.2 効率的なIEの実践

効率的なIE実務のための構成条件については,十分とはいえないが,このハンドブックの大部分の章で説明している。たとえば,手法や手続きについては,どの程度うまく適用できるかを測る基準と共に示されている。ほとんど全部の手法や手続きについて,“受け入れられるレベル”の正確性や精度の説明がされている。とくに第1部では,IEおよびIE部門の定義を下し, IE分野の目 指すべき目的と目標を詳し 述べている。“適切な ” 解決策(たとえば,組織構造,製造のレイアウト,ユーザー中心の情報システム,品質保証プログラムなど)になると思われる諸原則が,現実の事態にも適用されるよう提案されている。

とはいうものの,“最適な”手法とモデルを用い,“正 確かつ精密な”測定を行い,“高度な”目的と目標をI Erの指針として設定し ,“最新の”原則を問題解決に適用したとしても,不成功に終わったケースが多いことは,誰でもよく知っているJ同時に,“純粋な”アイデアとは全く関係なく成功した例があることも,よく知られている。実際のところ,純粋なアイデアに匹敵するほどの成果が現実にあげられていることを示すような文献はどこにも見当たらない。純粋なアイデアは刺激や知識の基礎として必要ではあるが,効率的なIE実務を明らかにするにはまだまだ不十分である。IErは ,純然たる手法やモデルを用いての意思決定の改善を論議するのではなく,依頼人の問題解決を援助するために論議するべきである。

  • このような背景を考え合わせると, IE実務の効率化 のために,次の3つの考え方が浮かび上がってくる。
    1.現実の組織に対して提案する解決案あるいは対応策の質を最大にする。
    2.解決案を現実に実行する見込み,あるいは,対応策をマネジメントが受け入れる見込みを最大にする。
    3 実際に用いられるリソースの効率,およびそのために費やされるIE関係のリソースの効率を最大にする。

効率化のための考え方の第1の柱は,純粋なアイデアを品質という言葉の中に組み入れることである。われわれは,対応策に最上の手法と最高レベルの精度と正確性が含まれているか,あるいは,解決案に最新の原則が組み込まれているという意味で,品質を定義している。また,信頼性,受け入れやすさ,革新度(非常に効率的であっても規格的で不必要な解決案よりも,不十分であっても倉造的な解決策の方がすぐれている),多元性,依頼人の満足度,収益率の高さ,解決案に必要なリソース (機械設備,資金,資材,エネルギー,情報,要員,施設)の効率,および単純性を,品質と結びつけて説明していることも多い。品質面の解決案あるいは対応策には,品質そのものを改善し続けていくアイデアの種がかくされていることが多い。各企業や経営者は,解決案や対応 策の質を明確にするため,それぞれの評価基準を決めている(評価基準の数が非常に多いため,どうしても評価基準間のトレードオフの最適化を避けられない。特定の仕様書を選択するといったようなオペレーション・レベルでの最適化は,第1の考え方である品質の最大化と両立する。まず,適切な問題点が取り上げられているか,適切な人々が関係しているか,必要なインターフェイスが明確化されているかを評価するために,最大化を行う。次に,最大化の枠内で,最適化をすすめるのである。

2番目の考え方をとった場合,効率的な解決策の実施 ,あるいは,依頼人への対応策の売り込み(たとえば,評価報告書,機械故障原因一覧表,特別のテーマに関する総合説明書など)の失敗は,そのまま,IEの進め方に何か誤りがあったことの証拠である。効率的なIE業務とは,解決案または対応策の品質に,実施あるいは受け入れという現象を乗じた積として説明できる。つまり, 解決案や対応策の質が100であったとしても,実施されなかったり受け入れられなければ,IE業務の効率はゼロということになる。実施と受け入れとは,人々がニーズを理解している初期の状態から,解決案や対応策の選択,承認,設定,実用化を経て,絶え間ない改善の追究の状態へと,人々の行動を変化させることを意味する。

効率化の考え方の第3の柱を取り上げる場合,時間や資金を無限に用いれば,大部分の問題が解決されるし, 数多くの対応策を求めることができるといえる。しかし, どのような組織であっても,それほど莫大な支出を約束できるはずがない。限られた資金と時間とを用いて, IE業 務の効果と効率,そしてIEにかかわる人々の効果と効率を最大にしなければならない。このことは,IE専門家に委託された問題解決の責任のお返しとして組織に提供される代償物であり,いわば,IEの実践学なのである。3.この第3の柱である利益を表示する一つの方法として,図表1.3.1を示した。これは48社の調査結果であり 4,この章で説明している実務化のアイデアを用いると,スタッフ1人当たりの経済的成果が従来の2倍以上になることが明らかになっている。言い換えれば,IEおよびその他のスタッフの人数がほぼ2分の1で , 必要な経済成果が得られるのである。

3つの最大化を同時に進行させようとすると,IEの実務化へのトータル・アプローチの決め手がどうしても必要になってくる。3つの最大化のための手法には,厳密な理論は確立していない。数多くの要因間のトレードオフを明らかにする数量化の方法はまだ無いし,要因そのものについての科学的な尺度もほとんど得られていない。明らかに,IEはそのような理論や概念を固めようとしていないのである.組織と環境条件との相互関係は非常に複雑であり,人間のからむ問題は非常にむずかしいので,それらの理論や尺度を求め得る確率は,極めて小さい。

そこで, IE業務の効率を測るものとしては,人々の側(経営者,作業者,顧客,仕入先,依頼人,ユーザーなど)の理解度と,測定可能なもの(原価低減,生産性向上,遅延の回復など)が残される。
かりに費用の23パーセントは節減可能であると証明されているとしても,作業者が解決案や尺度の真実性を十分に理解していなけ れば,かえって反発されて大きな費用がかかることになる。このような場合に効率的にIE業務をすすめるには,こうした反発による費用と長期間にわたる否定的態度とを最初から予測して,導入時点で変化を受け入れやすいようにしておく必要がある。5,また,新しい施設の設計,用地選定,取得物の評価,新製品の実現性の研究などのように,原価と時間の節減あるいは目標とする効率の尺度がはっきりとわからない場合には,組織の効率化と実行可能性に対するIEの貢献度を人々に好意的に理解して貰うことが, IEに数多くの問題が委ねられることにつながるのである。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンド ブックの各章は、多くの事例と理論を通し て生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方 ・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

 

 

 

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