コラム・特集

2.5 インダストリアル・エンジニアリング部門の組織化

IEハンドブック
第1部 インダストリアル・エンジニアリング機能
第2章 組織と管理

2.5 インダストリアル・エンジニアリング部門の組織化

米国や諸外国において,インダストリアル・エンジニアリング部門を持っている数多くの組織がある。その種類は機能的に広範囲にわたっているように見受けられる。企業や工場の中での組織図におけるイングストリアル・エンジニアの配置は特に変わったものではない。生産工場においては,彼らの長いインダストリアル・エン ジニアリング活動の歴史があり,仕事を通して自然に組織化されていった。インダストリアル・エンジニアリング部門の管理者は一般的に工場長または同等の管理者に報告する。この関係は工場の生産性向上における。初期のインダストリアル・エンジニアリングの仕事を反映している。

ナット・ホルトは,ヨーロッパと米国とを比較するために,ヨーロッパの7カ国におけるインダストリアル・エンジニアリング活動の調査を計画した。米国の場合もヨーロッパの場合も,管理的組織的機能は本質的には同じであるということを,彼の報告は述べている。彼の調査に関係したほとんどの企業は,本社にインダストリアル・エンジニアリング部門を持っている。しかしながら おのおのの仕事については,異なった方法で組織化されている。ある企業においては,インダストリアル・エンジニアリング 部門を特別な機能集団としてもっており,他の企業は現場の部門において活動が行われていた。

多数の中規模の企業や大きな生産工場などでは,ほとんどの場合インダストリアル・エンジニアリングは,仕事別単位のスタッフであるが,アドバイスを与えたり,全般をながめる役目を持った小規模の本社グループが頻繁に存在するようになった。数はそう多くはないが,これら本社グループは,支店や事業所のために全社的規模と同じく,各事業所単位に専門的な採用計画や研修計画を提供している。本社部門は,インダストリアル・エンジニアリングの管理者養成計画を立案することを重要な役割としてもっており,技術者の転任や移動を促進する仲介機能を果たしている。

経営陣の一員としての,インダストリアル・エンジニアリングを担当する本社役員は,会社や役員のための特別研修会を立案する機会を通して,インダストリアル・エンジニアリング活動に効果的な会社の方針を作成,かつ広めるのに都合のよい立場にいる。本社グループは,作業測定プログラムの立案,プレミアム・ベイ・プラン,作業環境など,会社全体に影響を与えるマネジメント・ポリシーを,会社組織を通して広め実行に移している。 図表1.2.4は ,会社内における本社グループと他のインダストリアル・エンジニアリング組織との関係を簡単に組織図に表わしたものである。

この組織図において,イ ングストリアル・エンジニアは,中央に集められたディビジョナル・スタッフのメンバーである。しかし ながらほとんどの技術者は,実際には現場に配属されている。日常に起きる各種の問題は , 彼らスタッフによって解決される。技術援助の年間予測 は,インダストリアル ・エンジニアリング部門の管理者と工場長とが話し合って決定される。この方法は現場の 目標と目的とをよ 近づけることができ,ラ インとスタッフの間の情報交換を容易にする。問題分析において第二者としての客観性を保たねばならないが,インダストリアル・エンジニアはふだんは現場の組織の一員として扱われ,現場の人々との友好的な関係を保っている。

ある企業では分権的組織を採用しているこの場合インダストリアル・エンジニアは工場の組織の中に配属されているこれらのエンジニアは現場の管理者のもとでスタッフを構成している。
点線で示された関係は,工場におけるインダストリアル・エンジニアリング部門の管 理者と,インダストリアル・エンジニアリング担当役員から指示を受ける立場の双方を持っていることを示している。このような組織は,会社の方針の伝達や現場の活動の客観的判断のためコミュニケーション・チャネルを保証していると共に,これら技術スタッフを通して現場をコントロールすることを可能にしている。図表1.2.5は,分権的組織における情報ルートと指揮系統を表わしている。

10人から12人以上の技術者からなる,インダストリアル・エンジニアリング部]のための組織がある。この組織は,インダストリアル・エンジニアリング部門の中に特別なグループを構成することを基本としている。技術的専門グループは,能力や経験を基礎に,彼らの技術的な専門分野のエキスパートとして認められている技術者で構成されている。1つのグループは材料供給を専門としており,他のグループは作業測定の専門家からなっている。また第3のグループは行動科学の専門集団である。

といった具合であるこれらの専門家は,問題別に必要とされる特定の技術をもとに,それぞれの研究グループに配属される。似かよったものとして建設業界において,ビル建設計画担当者,掘削,コンクリートエ事,配管工事,電気工事といったビルの建設に必要な専門家ちがいる例がある(図表1.2.6参 照)。

組織は,必要な技術を効果的に計画,応用するために,プロジェクト・コーディネーターを信頼することから始まる。このようなコーディネーターは,得ることのできる技術について詳しいことが必要である.もしプロジェ クト・コーディネーターがインダストリアル・エンジニアリング部門から得ることができなかった場合,現場はインダストリアル・エンジニアリング機能を編成しなければならないだろう。しかしコーディネーターが必要とする総合的な技術的知識を考えると,こ の案は合理的な代替案ではない。さらに大プロジェクトのコーディネー ションは,プ ロジェクト・リーダーにとって大量な時間 を必要とする.プロジェクトを管理する能力のある現場の管理者が,もしこの仕事を引き受けるとするならば , ラインの仕事をすることをあきらめなければならない。プロジェクト管理に時間を割いた代わりに通常のラインの仕事をするということは,どちらの状況に対しても満足な成果をあげることはできない。

適当な規模のスタッフ部門を持っている企業では,これらの要求を極力満足させるための各種の組織案をすでに試している。その中でも 特に注目すべき組織案は,インダストリアル・エンジニアリング組織のマトリックス (またはチーム)である。このマトリックス方式は, いろいろな部門の最も優れた特長をとらえようと試みられている(図 表1.2.7)。この組織では, 1人以上の技術者がそれぞれの部門,工場,事業部等にゼネラリ ストとして配属されている。一般にはこれら技術者たちは,本社のインダストリ アル・エンジニアリング ・スタッフのメ ン バーであるが,彼 らは実際にはそれぞれ活動する 場所 に配属されている。いかなる 場合においても,あ る現場 で進行中の検討は,色 々な分野のかなり高度な専門的技 術の援助が必要である。図表127は その一例である . この図では次のことを現わし ている。すなわち第1工場におけるイングストリアル・エンジニアは,作業測定の専門家の援助と,QAグ ループの援助とを必要としている。こ れらの専門家たちは,この工場の技術者の日常の仕事にさらに加えられたも のである.同様に第2工場のインダストリアル・エンジニアの管理者は,プラント・レイアウト,イ ンセンティブ,そしてQAの援助を必要としている。また第3工場では,ある時期,方法研究の援助のみを必要としている。

スーパーバイザーは,ゼネラル・コントラクターとして行動する。そして彼らが専門家グループから求めている援助の内容を個別に相談して決定する。スーパーバイ ザーは専門家による援助の内容と,仕事を仕上げるのに必要な技術活動の時間について契約をする。このため管理者自身のための法務スタッフを持っている。そしてさらに仕事の量によって変化する現状を容認している。疑いもなくマトリックス構造は,インダストリアル・エンジニアと管理者双方にとって余分な仕事が増える。しかしながら,プロジェクトを管理する場合,マトリックス組織を採用する企業の数が増えているということは,この種の組織が効果的であることを証明している。マトリックス方式は,彼ら自身にとっても得になる利点をもっている。新しい概念と技術とを同時に持ち続けるための努力を容易にすることは明らかだ。専門家は自分の興味のある分野の文献を読んだり,発表したりしがちである。彼らは世の中の技術的傾向に詳しくなるだけでなく,自分の会社の内外の,そ れぞれのエキスパートの人々と親しくなるだけにととまる傾向がある。他の分野の技術者や現場の人々は,専門家の知識や経験を必要として彼らを頼りにする。彼らはセミナー,ワークショップ,そしてコンファレンスなどの当然のリーダーである彼らは素晴しいコンサルタントであり,アドバイザーであり, 良き研修インストラクターを養成する。このような優れた特長は,どのような組織にも存在するものであるが,マトリックス構造は,相互協力的な環境を育ててゆくように見受けられるこの環境は,問題に焦点を当てた数々の訓練において非常に高い生産性をもたらす。

イングストリアル・エンジニアリング,マ ネジメント・ インフォーメーション・システム,オペレーションズ。リサーチといった部門を,一つの集中管理された技術集団に統合するという企業が増えているということを,ここに記しておく。統合されたグループによるサービスは , 一般的にはすべてのマネジメント・レベルに対して個々に技術料を支払うという形で行われる。このようなスタッフの統合は,各技術集団を確保することが困難な小さい企業において,特に価値があるように思える。多数の研修を混合した知識を必要とするトータル・システム・ア ナリシス・コンセプトは,その分野が広範囲に広がっており,技術陣を一個所に集めておくことの必要性を高めている。

しかしながら未だ多くの企業において,オペレーション・マネジャーは,インダストリアル・エンジニアリング機能を直接自分の組織の下に持っている。中央集中型の統合されたスタッフ・グループは多分,従来のライン/スタッフ関係に変化をもたらすだろう。AIIEのインダストリアル・エンジニアリングに関する評議会のメ ンバーに対して行われた,先に述べた1979年の調査は,経営者が広範囲な専門的,技術的サービスを提供することのできる組織を内部に設立することに興味をもっている事実を反映している。より広い役割を十分に説明できるように,“インダストリアフレ・エンジニアリング”以外の名称が選ばれている。しかし相対的に少ないサンプルではあるが,ほとんどの例において,インダストリアル・エンジニアリング活動は,これらいろいろな仕事の中で,やはり中心的存在である。これらの企業によって選ばれた組織の名称は,その言葉の裏にこの気持を表わしている。例えば,マネジメント・サービ ス,マ ネジメ ント・システム,コーポレート・コンサルティング・サービス,マニファクチュアリング ・コンサルティング部 , コーポート・サービス,ゼネラル,マニファクチュアリング ・サービス,生産性サービス,マ ニファクチュアリング ・コンサルタント ,コ ーポレート ・コンサルティ ング ・サービス等々という名称がそれである。

イギリスにおけるハリスのマネジメント・サービス調査は,同様に667企業中,104社がいろいろな部課名称を用いていることを示している。ここでは,アメリカにおける調査と同様に,従来のインダストリアル・エンジニアリング機能と比較して,より大きな責任範囲を表わすような名称が用いられている。これらは,マ ネジメント・アンド・コンピュータ,システムズ,プロダクティビティ,アンド・システムズ・サービス,オーガニゼーション・アンド・プロダクティビティ・サービスといったものである。

イングストリアル・エンジニアリング組織に対して期待されつつある,増加する仕事の範囲は,その機能がどのマネジメント・レベルから指図を受けているかということを明確にしている。例えば,中規模の北米の一企業において,インダストリアル・エンジニアリング ・マネジャーは,直接企業の最高経営責任者に報告している。このことは,企業の最高経営責任者が,全社を通して生産性向上を指揮すべきであると信じている彼らの関心の深さを表わしている。米国とカナダにおいて,インダストリアル・エンジニアリング部を統括しているトップ。マネジメンのメンバーは,社長,オペレーション担当副社長,副社長兼工場長,コーポレート・サービス担当副 社長 ,コーポレート・テクノロジー ,ベンチャー・マネジメントのグルー麹当副社長,生産担当副社長等々である。インダストリアル・エンジニアリング機能をもっている工場では,計画担当重役,ゼネラル ・マニファク チュアリング・サービス・マネジャ ー,プラント・オペレーション・スタッフ,管理担当重役,マ ニファクチュアリング・コンサルタント部長,生産技術部長などが,インダストリアル ・エンジニアリング部門を統括している。

これらのことは,インダストリアル・エンジニアリング組織が,企業の組織の必要性に合致するように,特別に考慮されつくられているという証拠である。もちろん インダストリアル・エンジニアリング組織の目的と使命を定義することから始まる。すべての場合に合致するような例は無いかも知れないが,他社の例を知り理解することは,ただ考えている場合より効果ある改善を期待できるだろう。インダストリアル・エンジニアリング組織は,企業のおかれている状況の変化に対応できるように,その点を考慮してフレキシブルに計画されるべきである。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンド ブックの各章は,多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

 

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