コラム・特集

作業のやり方次第でムダは省ける

実践IE読本 第1集 やさしい自己啓発教材

問題の見方,とき方

作業のやり方次第でムダは省ける

川島正治(経営コンサルタント)

営業優先で現場は四苦八苦

今月の進捗会議では ,いつもはあまり問題のなかった第三課の回転乾燥炉を営業からひどくあおられて,温厚な坂本組長もちょっと色をなして反駁していた。 「出図が10日もおくれ ,仕事にかかってからも ,再三設計変更があって,手直しをしなければならないのに,現場ばかりあおられたんではやりきれんし,設計へ当たれば ,承認図(客先のOK)が おくれるんで,し方がないといわれる し,まったく立つ瀬がないよ」「客先に文句をいっても, こんな時世てはメーカーにたとえ分があっても,注文がとれなければ商売にならないんだ。まあ,われわれは多少ムリても,何とか予定に間に合せなくては……」.製造部長も営業の苦しさを知ってか,あまり味方になってくれない。 (筆者の察するところ ,製造部長はこういう 時こそ,現場 の進捗管理のやり方を 改善し,工期の短縮を図り たいと思っていたようであつた).

「それにしても部品はほとんどできているのに,どうして組立がおくれるのかね」「大部分の部品ができていても,肝心のドラムや歯車がおくれていたのでは,段取が悪くて仕事にもかかれませんよ 」 .中 井班長は不満そうに口をはさんだ。 「歯車に巣が出てイカケに半日もとられるし ,そのためドラムもおくれたが,明日中には何とか間に合せます」 . そんな苦しい答のまま,進捗会議は終った。

半素人の標準時間を決めるつて?

坂本組長は,会議の席から職場への帰り道,中井班長にこんなことをいった。「 以前には組立も5日ぐらいてできていたが,どうもこの頃は時間がかかりすぎないかな.この間出荷したB1型でも7 日かかったが・ ・ ・ 」。 「それは慣れたものがやめたり,配転になったりで,今はみな,半素人ですから仕方がないてすよ」。 「それても慣れるま てほっとくわけにはいかんな.一度よく調べて見るんだな。部品が悪かったり,手順がまずかったりしているかも知れんよ.この間,うちのような繰返作業のない職場でも観測てきる方法を教わったばかりだから, この際徹底的にしらべ,ついでに標準時間を決めたらどうかね」.「 半素人の時間を測っても仕方がないてしょう」。 「いや,すぐ標準時間は決められないが,まず,手順を彼らにしっかり教えて,その上で時間を測ってもいいだろう.半素人とはいっても,もう1年近いものが大部分だから簡単な作業は一人前と見てもいい。とにかく練習のつもりてやって見るんだな」

作業条件次第で,加工時間は変わる

B2型の回転焼却炉には何本かのシャフトがある。それを組立てる作業を1名が分担して半日ぐいいかかってやっているが,中井班長助はそれを1/100分 (1DMと呼ぶ.5月号 111 Pに説明)単位で連続に測って見た。

この観測は繰返作業とちがって,次にどんな作業をやるのか予測がむつかしいので,出たとこ勝負で,やった要素作業の各前と,その作業の終った時刻(ストツプ・ウオッチの読み)をいちいち記入するという非常にめんとうな方法である。練習の時は”椅子から立ち上がり,カバンをもって来てなかかけ ,ノートと計算尺を出し,ノートを開いて頁をさ がし ,計算尺をケースから出す。そして計算し,ノートに記入する … … “などの2分たらずの作業を3~4DMの細かさで記入したものである .要素作業の名前も, “計算する “などと書いたら ,それだけで5DMくらいかかってしまうから”ケイサン”または簡単に“ケ”とだけ書いて,あとで忘れないうちに”計算”となぞっておけばよい.

しかし,組立作業はそんな細かにしなくてもよい。例えば “メタルをとりつける (ビス 3木使用15~20DM), シャフトを通して芯を見る (20~25DM),当たりをササッパで削る(30~50DM)”のような大まかな分析でもよいから ,それほどむつかもいものではない.

表-1はその観測の一部である.2時間ばかりで数本のシャフトをとりっけていたが,同じメタルでも , “はめてみて,芯を見 ,取外して ,バイスにくわえ ,ササッパで削る”という作業を10回以上もかかるものと, 5~6回ですむものとがあって,時間にして10~30分のパラツキがある.キー合せでも,手頃なキー材のある場合と,大きくてヤスがけの多いものでは2倍以上の開きがあった。

作業者は班長が見ているので一所懸命にやっが,技量以外に作業条件で相当開きがあることが 時間の上に現われた。自分がやってもこんな状態かもしれない。2時間ばかりてやめて観測結果の見にくい所を直して,生産技術課のIE担当者の所へもっていった。

「よく観測できましたね。これは非常におもしろい結果です。同じキーを取付けるにも,材料の状態でこんなに長い短いがあり,メタルにしても,何度もスリ合せしなければならないものと, 比較的うまく芯が出るものがあります。またメタル自身の仕上り寸法,フレームの穴の仕切り寸法などで,寸法精度がいかにマチマチであるかがわかると思います。さっそく適当なキー材の購入手配をし,メタルの仕切り寸法については機械班の方と打合せてみます.こねを見ても,今すぐ標準時間を決めるというより,当分の間は暫定的にメタル1個の取付は18分,キー合せは7分としておきましょう」

このあとで,余裕率も調べたら2時間だけて25 %くらいになった.目 標余裕率はまた後日, ワーク・サンプリングの練習のあとで決めることにしようと話合って別れた。それよりも,2時間じっくりと作業者の動作を見ていたら,今までそれはど気にしなかったようなムダな動きが非常に多いし,そのムダが作業時間を1倍半も2倍にもしているのがわかった.一例として,メタル合せの手順は我流で, 自分(班長)ならこうやって, もっと速くできるんだがと思った。もう1つ,メタル内径があまり小さいので,わざわざ旋盤の所まで行きペーパーで削っていたが, こんなことは早く止めさせなければならない。これではいい当たりが出るはずはない。

注文生産の大物の組立作業は比較的複雑だから,作業者まかせのところが多い.材料や道具を置く位置も空いている所に適当におき,そのため作業者にムダな動きが多くなる。キヤスター(自在車)つきの移動部品棚,可搬式の道具箱などの整備も必要である.また,作業内容は千差万 別といえば,そうとも思えるが,つきつめて見れば,この職場では,部品の取付孔のケガキ(現物合せ),電気ボールの孔明 ,手でやるタツプ立て,芯を出しながらブラケツトその他の部品の取付(ボルト,ナツト ,ノツク・ピン打ちなど), キー合せメタル合せプーリー歯車などの取付,チエイン取付など,限られた共通作業の繰返ともいえる。ただ部品の大小,重量,芯出精度によって相当な時間差はあるが,その動作も班長ぐらいになればおのづから基本手順や原則があることに気がつく。

最近,OJT(On the Job Training)などであたり前のことをやかましくいわれるようだが,それも監督者が部下の指導訓練を日頃いい加減にしているからである。

作業方法の標準化へ進む

若い頃,ただ見よう見まねの“ 習うより慣れろ” 式で, 1~2年は先手ばかりやらされてきた中井班長も,今度の観測で,今さらのようにちゃんとした訓練の必要性をつくずく感じたことはない。 標準時間調査の中間報告に中井班長の説明があり,彼の考え方は製造部長はじめ他の課長,組長にも共鳴を得た。量産の職場はもちろん,溶接や板金などにも,標準動作ということをとりあげ,それを班長や組長が自分でまとめるということになった。特に量産の職場は品質との関係でどうしても必要であると部長も強調し,さっそく標準作業指導書の形式,記入要領などを,生産技術て起案することになった。

「どうもヤブヘビのようだったな 」と坂本組長が冗談まじりに部下の中井班長にいった。また「若いうちは金を出しても苦労をいとっ てはならぬ ,ということもあるから,言い出しっぺのあんたが一つうまい指導票を作らにゃあな 」と例によって押しつけがちの組長に,「年寄はだまって見ていて下さい。ただほかの班長には,余分の仕事ができてしまって悪いとは思うが,よろしく頼みますよ 」

その会議では, また,特殊ものの第二課で段取作業の時間観測の結果がIE担当者より報告があった。伊部班長がフライス作業の段取に非常に時間がかかっているのを問題にして調べていた。ただ,いくら段取だけをやっても,製品はできないが,段取だって仕事のうちだ。それに2時間以上もかかったが,いよいよ仕事にかかっててみると半日で済んでしまった,という場合などもある , 1個1個の加工時間も大切だが,む しろ段取を手際よくやる方が効果的な場合だってある.治具の下に何枚ものワッシャーをかったり , 時には一枚の薄い紙をかって100分 の1ミリの加減をしたり ,ありあわせのボルトで不安定な締付に時間をかけてやり, しかもうまく芯が出なくて,もたもたしているようなことがある。その原因をただ作業者の要領が悪いとか,不慣れとかの一言で片づけないで,ボ ルト敷板の標準化,治具取付の芯出しが正確簡単にできるような治具の改善,場合によっては,段取専門工をおくとかといった改善の方法もいろいろ考えられる。

共同作業も1人で時間観測ができる

報告会のあとで,もう1つ の時間観測方法の説明があった。

「もう皆さん,繰返作業や非繰返作業の観測方法は大体ものにしたと思います.しかし 組立や溶接のように何人かの共同作業や,先手とコンピでやる場合には,お互いの仕事のタイミングが大切です。ある人の作業ばかり 忙しく仕事をしているが,他の人はやりたくても互いに邪魔になってできない,なんてことも 間々あるものです.今日はそのよう な場合の時間観測の要領を説明します.組立職場などはすぐ応用できますからよく聞いておいて下さい」

乾燥炉などの骨組や,大物部品の取付には, 2~3名の作業者とホイスト操作するのが呼吸を合せてやらなければならない.そんな時は必ずしも秒単位や,DM単位で測らなくても , 同じ作業 (例えばフレームの芯出 ,仮溶接 ,木溶接など )が 2分も3分も,時には10分以上かかることがある.

そんな時,仮に1人の溶接工の動作をストップ・ウオッチで測っていたら退屈てしまって,バカバカしくなるだろう。といって3人も4人もの作業者を同時に観測しようとすれば, よほど注意していないと動作の切れ目を見落したり,作業者を聞違えたりして,とても神業てなければムリだ。こんな場合に精度は若干おちるが便利な方法がある.例えば30秒間隔でチラッ,チラッと作業者を見,その瞬間に作業者がどんな作業をしていたかを素早く記録するのである。時刻はあらかじめ何秒間隔ときめてあるから’いちいち記入する必要はない.数人の作業者を同じ順序でチラッ,チラッと見て,動作を記入(これは自分だけがわかる記号でも略書きでもよい)すれば , 各作業者については30秒間隔になる。同じ作業を2回連続してチェックしたらその作業は1分かかったとする.もちろん誤差はあるが,平均値を求めれば精度はそれほど落ちない。

表-2は車両組立作業を6名の作業者でやっているところである.1分間隔で観測したのであるが,表でもわかるように,作業者E作業者Fは度度手待ちがあり,特に仮溶接係のFは16分のうち5分,率にしても31%手待ちがあるのは考えものだ.このグループの中心になる“作業者が時々他の作業者の動作を見て,手待ちのないよう,もしあれば次の作業の段取などをさせるよう注意することも必要である。

さて,3回にわたって ,時間観測の話をしてきましたが ,次回は標準時間に不可欠な余裕率のきめ方と ,どうしたら余裕時間または管理ロス時間を少なくすることがてきるかを考えてみましょう。

(つづく)

「実践IE読本(編・日本能率協会・1971)」をアーカイブとして掲載するものです。この読本のの各章は現場生活のなかでぶつかるいろいろな問題を事例を通してとりあげています。職場生活の悩みのタネとなっているムリ・ムダ・ムラをどのように受けとめて、改善のヒントをつかんでいくかが、IE・インダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー