コラム・特集

職場の問題解決は自分たちの手で

実践IE読本 第1集 やさしい自己啓発教材

成果をあげた実践例

職場の問題解決は自分たちの手で

 

FMサークル 活動 編集部


改善成果をあげた松下電器・宇治工場の事例

景勝の地,宇治を訪ねて,松下電器・コンデンサー事業部の現場リーダーの改善活動を取材する機会を得ました。工場自体は,小じんまりした規模で,建物も新しく,働きよい職場づくりがよく行なわれている感じです。

この工場で扱う製品は,受注個別型のものが殆どです。そこで現場の問題もご多間にもれず複雑 な様相を呈してくることが多く,数年前には,技術部門のスタッフを困らせる”常習犯”でもありました。ところが,今から紹介するFMサークル の活動が軌道に乗ってから,そのへんの悩みは, スタッフから現場に移りました。現場といっても班長,職長さんクラスになりますが,彼等が,今までスタッフの解けない難題を片ばしから解決し今では,専門家顔まけの実績をあげているのです。 最初,工場長の山根さん,課長の山崎さんにお会いしました。お二人とも,現場の心をよく知り部下の面倒を実によくみられていると,話終わって,そんな感じの印象を強く受けました . 山根:FMサークルというものができたのは今から4, 5年前になるんですが一山崎氏の説明から昭和43年発足とのこと一, サークル員は監督者が中心ということで,フォアマン(Fore Man)の頭をとってFMと名ずけたようです。ここにい る山崎課長が当時QCサークルのまとめ役もし ていたので,彼が名前を考えだしました。 QCサークルについては,もう10年程前から ちったのですが,このFMサークルはそれより ももっと程度の高い問題を扱っているんです. それというのもQCサークルのなかだけではこなし切れない難しいテーマを持ち込むんです. QCは当然使いますが,改善に有効なIEの技術もとり入れています。そして,VAであれ、役に立つものは何でも貪欲に活用しています。


―今の話のなかで, IEの技術を職長さん ,班長さんが実際に使われているということですがそれができ るようになるまでの組織的なバックアップ について, どうされていたのですか。

山 根:私どものQCサークルは ,現在55ありますが,10年前は,班長がサークル長をやっていたんです。 それでは, 1サークルが 20人~ 40人の大所帯になって,十分な成果をあげにくいということで,サークルを分けていったのです。

山 崎:そうですね .サブ・サークル ,スモール ・ サークルといっていまし たね ,員数的には 7~ 8名 が限度としましたが ,それ以上でしたら,十分な 共通問題の検討もできず ,また一度に 寄り集まるのも大変なんです.

ここ で ,のようなFMサークルの展開図を見せられました。実に,タテ・ヨ コ の機能をうまく結びつけたもんだと感心しながらも ,これが FMサークル発足時には ,考えられもせず,自然と展開していった点は,実におもしろい.野放図的な自然さではなく ,一定の 考えがトップ側にあったことは確かだが ,あくまでも計画的なプロセスではなかったのです。そこで ,こ の“ 分析図 “にちょっと説明を加えておきます。

FMサークルの母体となったQCサークルは作業者が中心になり ,その1つひとつは図中の四角の工程の寄り集った部分です。このサークルを形成する基準は, 1サークルのなかでとりあげるテーマを全員が検討できるように ,作業内容の似かよった工程を結びつけて,人数は5~ 6名で抑えるようにする ,といったことです。ですから ,ある工程は,作業内容が他と異質なので小人数であっても 1サークルとして形成されています.そこで、その小人数サークルも,類似工程を合わせたタテの連絡組織のなかて,他ラインでの問題と共通テーマの検討もできるわけです。

また,ライン別のQCサークル長は,班長が担当し,FMサークルの主人公になるわけてす.FMサークルには図中の3分野の担当があって,主にその問題分 野のことを改めていくことになります。
審査委員会は,工場長他 ,技術関係のスタッフの参加もあって,改善案の検討を重ねるわけです。その時は,技術的なアドバイスを受けたりするという。

山根:その分割したサークルのリーダーは ,別に肩書には一斉こだわらな いで ,誰てもQCサークルを引っばっていける人間であればよいという考えて決めたんです。 そうしてみると,班長目て各サークルを眺め育てる立場になりました.そこで 各サークルの小さな改善を総合してもっと大きな改善に育てようとの意欲が生まれので,社外の教育コースに出張させるよう にしました。年に4人程度の職長 , 班長さんを上期,下期に2人ずつ, 6ヵ 月間の教育訓練(1 月に1週間)をやりました。

その訓練コースに出されるときの人選 ,空席の補充はどうやっておられる んですか

山崎:実は,最初の間だけ ,誰にしょうかと選択もしましたが、だんだん、選択するというよりも ,派遣条件が揃ってきたところから ,順番に教育コ ースにやりまし た 。 全員が一度に行くことはてきませんので ,コースに出した穴埋めは 部下のなかから選び,仕事をバトン ・タッチするわけで す。遂次 ,その新リーダーも仕事の枠を拡げ ,同時に自分の力を高めることにも ,自然となってきたんです。

ここで ,教育コースの内容を聞いたところ ,動作分 析から 始まっ て ,標準時間設定の各手法職務設計,予測技術,スケジューリング手法といった,IEr顔まけの内容である.

ーーそうしますと、教育コースが終わって元の仕事についた時に、もはや,QCサークルの援助も含めて,自分自身の仕事の量,範囲はかなり軽減されてくることになりますね。

山根:ハイ,ですから,今まで自分の仕事だけて精一 杯だったところを,次々に作業者の能力が QCサークルを通じて,高められ ,今までの班長 ・ 職長の 仕事は少なくなっているんです。そこへもってきて,教育コースから帰ってくると ,コ ースで覚えてきた知識の実践面への意欲と ,自分の職場内での現実性に触れて,何をしていいものやら 戸惑うわけですね。しかしそのうち,あれだけ教育してもらえたんだから 何かやらねば , という気持がでてきたようです。

山崎:確かにそうですね,ですから ,そ の時われ われが,何も彼らに対し て,サポートしてゃらなければ,本当に生きたFMサーク ルになっていたかというかわからんですね。そういう 社内外の教育コース参加の回数が重なってきて,職 場で共通の悩みを持った仲間が増えてきたんです。そこで,その悩みを解くためには,まず教育コースで身につけてきた知識を今の職場へぶっつけさせる。そのためには,何しろ,失敗をしても ,日をつぶると いうことでアイデアの昇華を助けたのです。それがよかったのか,皆んな ,自分たちで解決できるものと ,必死で頑張りました。その当時の彼等の姿を見て,私は本当に感無量でしたね.これぞ,職場生活の“華” と思えました。それから ,彼らの活動を評価する意味でもFMサークルという名前をつけ,社内での位置づけもできたのです。そんな活動実 績の積み重ねで今では, “改善して当たりまえ “といった図々しさ!すら生まれてきたんですよ(笑).

その改善案は,松下電器提案制度の社長賞に輝くこと数回,質的にも相当なレベルにまで達している。そこで,FMサークル員の東原,藤原両氏に作品持参でお出でいただいた.まず改善案の数の多さに驚ろき,また次々に紹介される報告パネルの整理された心使いからも,一つひとつの作品に込められた苦労の程がうかがえる . 具体的には,LCA*関係の機器そのものの改善 またVA的 なもの,動作分析,工程分析から生まれた正にIE地でいくソフト面での改善案といったものまである。ある事例では,30数年来の伝統的作業法をVAで一気に改善したものもあったが,他にも松下社長直々の賞に浴したものを見て一つ不思議に思った。それは工場内での提案審査では一席入賞がないことである。

具体的には,LCA*関係の機器そのものの改善 またVA的なもの,動作分析,工程分析から生まれた正にIE地でいくソフト面での改善案といったものまである。ある事例では,30数年来の伝統的作業法をVAで一気に改善したものもあったが,他にも松下社長直々の賞に浴したものを見て一つ不思議に思った。それは工場内での提案審査では一席入賞がないことである。

山崎:そうです.というのは,先にも言いましたように,やって当然ということで普通の人の提 案よリワン・ランク落すことになっているんてす。それは冷遇ではなくて,彼等がFMサ ーク ルのなかで,次々と作品を作りあげていく大きな役目を果たしているんです.それは皆んなが一番よく知ってるんですよ(と 言って藤原,東原両氏の方に目をやる ). 両氏とも,笑って答えられたが,正に納得済みといった表状である。

山根:皆んな(FMサークル員)に は業務としての改善活動の知識教育をしてあるということです。それで逆にいえば,普通のQCサークルの人たちよりもプライド面からも,その区別がプラスの方向に作用してくるんじゃないですか . しかし,教育コースではこの人たち,本当に悩み苦しんだと思います。

山崎:私,先 ほどの社長賞をいただいた改善案についても,本当に苦しんだということよく判りますね.例えば,デパニトなんかで,家庭用品売場をのぞき,思わぬ, ヒントを掴んできた , そんな話よく聞くんですよ。ですから決して改善案については ,そんな立場にあるからといって軽く見るようなこ とはしません。

一一最後になりましたが ,FMサークルの運営の仕方 ,チームワークの点についての苦労はいかがですか

山崎:このサークルの場合,定期的に改善案の報告があって,その時は私なりに,チェックしますが,必らず,誰それ班長と私の間に約束をするわけです, したがってそのコミュニケーションの内容は,その場にいる皆んなが知っているため,決して言った以上は手を抜くことはできませんね。

藤原:この報告書(赤の注意書がところどころに見える数ページの改善案)がそれなんですが , この赤 い字の所は,課長さんに指示されたところで
す。

山崎:QCサ ークルも含め,改善案の全部に私が目を通します。大変な分量になりますね.それから,チーム・ワークということでは,サークル員の1人ひとりが能力的にも,得意な分野, 生活感といったものは,当然,一致しない場合が多いわけで,サークル発足時は,やはり心配でした。

例えば教育コースで,同じ内容を詰め込んできても,考えるレベルも違えば,よく覚えてくるところとそうでないところがでてきますね。 また電気に強いのもいれば,弱いのもいる。 といった違いも当然でてきます.ですからそれだけの能力的な差があって,なおかつ,同じチー ムの課題を追求するとなると,いい面では,ある人に欠けている点を誰かが埋める,そして全体としての相乗効果は極めてあがるんです。しかし,マイナスの面が出てくると,自分だけ吸叫して,他人には与えない,それが困まるんです。

そこで、行楽とか,酒を呑む時には,家族ぐろみのつきあいもして生活を通じたコミュニケ―ションをやるようにし ています.それからもう一つ重要なことは改善案が入選して,何かほう美を貰うと, 5人でやったなら, 5つ に分けてしまうことはしないんです。全員で,何か共通の目的に使うよう にし ています。例えば懇視 会の席とかですね。もしそうしないでやっていたら, うまく チーム・ワーク はとれなかったんじゃないかと思いますね。

山根:それにつけ加えて, このサーク ル活動の最大の効果は高度な合理化設備の設計導入に当た っては,最 も 大切な現場の声を出してくれるこ
とです.そうすれば,その声の活かされた設備の導入,またはメンテナンスには,極めて献身的に努力もしてくれます。こうしたメリットより個別生産ラインでは特に重要だと思いますね . ここで,話もひととおり終った感じ で,雑談に入った.作業衣のままの藤原,東原両氏の話も自信に満ちた言葉がポン,ポ ン飛び出したが,そのうちIEだけでなく,自分達で取組んでいるいろいろな改善テーマを片づけるには,専門の知識が必要なのを痛感しているという .そこで通信教育ではあるが,広く ,機械製図から,電気工学の分 野まで,勉強していくつもりなんだと聞かされ , その勉学心の旺盛さに2度 びっくりした。

この見事な動機づけの秘訣は,ちょっとした心使い,言葉使いに負うところも大きいとこのインタビューで度々思った.まずFMサークルの母体のQCサークルがしっかり地盤を固め,そこから IEや他の領域に芽が伸び出してきた。しかし ,決してスタッフが作為的に引っばったものでなく側面的援助だけで,分析図に見られるような “核分裂”を起こしてきた事実は,この誌上だけでは説明がつかぬところである。 なお来月号で,FMサークルの改善成果を紹介いたします。

(つづく)

「実践IE読本(編・日本能率協会・1971)」をアーカイブとして掲載するものです。この読本のの各章は現場生活のなかでぶつかるいろいろな問題を事例を通してとりあげています。職場生活の悩みのタネとなっているムリ・ムダ・ムラをどのように受けとめて、改善のヒントをつかんでいくかが、IE・インダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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