コラム・特集

仕事量の基準

実践IE読本 第1集 やさしい自己啓発教材

現場の基礎知識

仕事量の基準

 

仕事量の基準は何で測るのか

コンベヤーに沿って,受持ちの作業を繰り返している“ 流れ作業”では,ライン・バランスがしばしば問題になります。 忙しい人は,絶えず仕事に追われることになり,また反対にヒマな人は,つい手加減をするようなことになります。
1人で何台の機械をもてるかといった持台数の問題にしても,管理者はRこれでいけるはずだ”といい,スタッフは“ バランスがとれている”といい,(11業者は 駅不公平で,つらい”といった具合に紛糾しがちです。 また, 1つのグループでまとまった仕事をする時にも,各人がどの範囲の仕事の分担をするかといったことで,グループ・リーダーはいつも頭をいためます。

いろいろな仕事が次々に入ってく る”多種少量生産”の職場では ,毎日 の 仕事配分をうまくやらないと,忙 しい人とヒマな人をつくってしまう ことにもなります。 また,個人やグループの業績は,働く人自身が評価でき,また管理する人も評価できなければならないので

す。ということは,お互いに評価することによって,個人やグループの「熟練」や「努力」を認めあうことができ,さらに喜びや励みを感じるようになることが望ましいのですが,果たしてこの業績がどの程度公正に評価できるようになっているかも問題です。いろいろな問題をあげましたが,これらはいずれも個人が受持つべき 「仕事の量」と,ある期間に遂行すべき「生産量」, そしてその量をなしとげるための「必要な時間」に関連してくる問題です. これらの問題を解決するためには, “もっと公正で,妥当な仕事量の基準をつくりあげよう”という現場の第一線からの盛りあがりがもっとも望ましいのです. そのためには, “公正で妥当な仕事量の基準”とは,一体どんなものでありどのようにしてつくるものなのかを十分理解する必要があるでしょう。それがやり甲斐のある仕事をするための基本知識のひとつでもあるからです.

 

ところで,仕事量の基準として用いられる単位には,いろいろなものがあります。たとえば ,

●何個,何台,何枚,何本・・・ (単位時間当たりの個数)

●メートル,平方メートル,上方メートル・・・ (単位時間当たりの長さ,面積,容積 )

●キログラム , トン ・ ・ ・ (単位時間当たり の重量

● 秒 ,分,時・ ・ ・ ・ ・ ・(単位仕事量当たり の時間 )

といったものがあげられます。

どんな単位のものさしを使っても,その目的にかなえばよいのですが,そのもとになっているのは,結局は「時間」です.

そこでこれから,“仕事量の基準を示す時間”について検討してみましょう。

標準時間とは・・・・・

「時間」を使えば,どんな仕事でも,その能率を比較することができるだけでなく,ほかにもいろいろなすぐれた点があります。

そして ,
●この仕事にはどれくらいの時間をかけるのが妥当だろうか

●この見積りは,一体あまいのだろうか,それともからいのだろうか

●自分がこなしている仕事量の水準はどのくらいだろうかといったことも明確につかめるようになります。 ではまず,仕事量の基準として最もひろく使われている「標準時間」というものの考え方をはっきりさせておく必要があります。 すなわち「標準時間」とは ,

●決められた方法,設備を用い,決められた作業条件のもとで――

●その仕事に要求される熟練度と適性を十分にもっている作業者が

●標準の作業の速さで作業を行なうときに

●1単位の仕事量を完成するのに必要な時間

ということになります。

ここで“ 標準の作業の速さ”について補足しますと,会社での”標準の作業 ペース”は世間に広く 知られている“ ある水準”に関連させて決められている のが普通です。もちろん絶対のものがあるわけではありません。 1例 をあげると,日 本能率協会で作っているレイティング ・フィルムでは , “普通程度の経験をもつ人が,よ く慣れた仕事を,や る気の時にやる速さ”を 100%と し て い ま す 。 この“ やる気の速さ”あ るいは“ 良好な努力での速さ “と いう のを,現場の 作業を見たときにう ける感じ で表現すると ,

●きびきびとした動き

●動作と気持が調和している

●仕事に熱意がこもっている

といったことになるでしょう。

標準時間の測定の実際

では「標準時間」の内容や構成はどのようになっているのでしょうか。 まず,ストップ・ウオッチによる時間研究の手順に従って,「標準時間」の組み立て方をみてみましょう。 これはただ単に,ストップ・ウォッチを使って時間を測るというのではなく, 前提として,

① 熟練と適性をもつ人を選んで “研究の対象”とする

② 決められた作業方法,条件を”確認”し”設定”する

③ 実際の所要時間を “観測”する

④ 標準の作業の速さを “修正”する

ことが必要です

まず最初に, “研究の対象となる人”を選ばなくてはなりません。なるべくその作業によく慣れた人を学ぶようにしましょう。それは,きまった作業方法 で,繰り返し作業ができるからです。

次に,作業方法を何回か観測して,その作業目的にもっとも適合した合理的な方法であるかどうかを検討します。そして,もっとよい方法があれば,そのやり方でやれるように作業条件を整備したり,そのやり方になれてもらうことも大切です。

ここでいう“ 作業方法”というのは,「加工方式」「手順」「動作」「配置」 などのことです。また, “作業条件”というのは,「温度」「湿度」「照明」 などの環境条件や「機械や工具の安定性」「機械や材質の安定性」などのことをさします。

このようにして, “かくあるべしという標準的な作業方法”つまり,現状で可能な最善の方法であるかどうかをはっきりと確かめて先へ進むことが大切です。

なぜなら,観測に入るまえに,方法,条件などを改善して安定したものにしておかないと,またやり直すというムダや誤つた適用をしたりすることにもなりかねないからです。

 

“かくあるべしという標準的な作業方法”というのは ,

●不必要な動作をなくしたもの

●必要な動作は,最もよい方法で組み合わされたものをいうのですが,もちろん,動作以外の,

●加工方式,手順などが現状において最善のもの

●工具,設備,材料,その他の作業条件も最適のものをも含めていうのです。

たとえば,ボール盤の仕事を例にとつて説明してみましょう.

や 品物を孔あけ治具にセットする’という作業について,2つの方法つまり a,bがでています。作業方法bは ,

① 1歩横へ寄って品物をとる

② ウエスを30cm手をのばしてとる

③ 品物と取付け面をふく

④ ウエスをもとへおく

⑤ 品物を治具にむき,4本のボルトで固定する

⑥ 1歩横へ寄ってスパナをとる

⑦ 4本のボルトを締めつける

⑧スパナをおく

ところが,品物の置き場所を変え,ウエスを使わずにすむ方法が見つかったので,こ の結果は次のような作業方法aになります。

① 30cm手をのばして品物をとる

② 品物を治具におき,4本のポルトで固定する

③ 30cm手をのばしてスパナをとる

④ 4本のボルトを締めつける

⑤スパナをおく

この例では,作業方法を “現状で最善の方法”,つまり “標準作業方法”というわけです。

このように,事前の準備,検討が終ると,次に実際に作業を行なうときに要する時間を観測することになります。それには,先に検討した”標準作業方法”を“要素作業”に分解します。“要素作業”というのは,いまの例にもあったように ,

 

●品物をとる,品物を治具におき,ボルトで固定する

●孔をあける

●品物をおく
とかいった程度の細かさのものです
ストップ・ウオッチを見ながら,この分解された要素作業ごとに時間を観測し,読み時間を記録します。

何サイクルも繰り返して得た観測時間に,バラツキがあるときは,代表値として最も適当なものを選びます。

実際の作業の時間観測から得た生の値は,その人の熟練車やそのときの努力の度合の結集ですから,そのままでは使えません。

いわゆる・標準の作業の速さでの所要時間”に修正することが必要なのです。

たとえば,いま仮りに全く同じ作業をしている3人の作業者について観測し,その結果が表のようになったとします。

これに対して,時間観測中に,各作業者の速さが標準の速さに比較してどのくらいであったかというパーセント,つまリレイティング値を記録しておき,これで評価をするわけです。

たとえば, 3人の作業者A,B,Cのレイティング値が,それぞれ50%,80%,125%であったとすると,これに実際の観測時間をかけ合わせて,標準の100%の速さの所要時間にひき直すわけです。これを「基本時間」と呼びます。

前の例での「基本時間」は,次の表のようになります。つまり,この作業の基本時は,0.25分というわけです。

わかりやすくするために,全く同じ作業を3人でやる場合の例を出しましたか, 1人の作業者について行

 

なう場合も,同じように3回にわたって観測して基本時間を求めればよいわけです。

最後にもうひとつ大切なことが残っています.それは,基本時間に「余俗時間」を加えるということです。

これは,正味の作業以外に,ときどき発生する作業や,遅れのための時間, たとえば,水のみ,手洗といった用達のための時間や,休けい時間,それから停電で機械が止まったり,不良部品をとりかえたりといった作業遅れの時間などです。

「余裕時間」は,使宜上, “基本時間の何%”というように決めます。そしてこのパーセントを「余裕率」といいます.余裕率は,基本時間の出し方とは別の観側,研究の資料を参考にしてきめるわけです。

さて,以上のような標準時間の組み立て方を式にまとめると,表のようになります。

ここで「標準時間」というものをもう一度ふりかえってみながら,これまでのところを整理してみると,次のようになります。

① 対象の作業者を選ぶ

② 作業方法,条件を確認し,設定する

③ 実際の所要時間を観測する

④ 標準の所要時間に修正する

⑤ 余裕時間を加える

 

これが,標準時間を組み立てていく手順でした。
そしてこれからの研究課題としては,

●かくあるべき合理的な標準作業方法を見つけられるかどうか

●信頼できる観測値をつかめるかどうか

●公正で,かつ妥当なレイティングができるかどうか

● 適正な余裕率を判別できるかどうか

といったことがあげられるのです .              (つづく )

(このシリーズ は, 日本能率協会教育事業部視聴覚センター の制作した第一線リーダー のための視聴覚教教材 「現場の改善シリーズ ・ その7/仕事量の基準」をもとに編集しております )

 

 

 

「実践IE読本(編・日本能率協会・1971)」をアーカイブとして掲載するものです。この読本のの各章は現場生活のなかでぶつかるいろいろな問題を事例を通してとりあげています。職場生活の悩みのタネとなっているムリ・ムダ・ムラをどのように受けとめて、改善のヒントをつかんでいくかが、IE・インダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー