コラム・特集

作業長,標準時間と大奮戦!

実践IE読本  第1集やさしい自己啓発教材

問題の見方,とき方

作業長,標準時間と大奮戦!

川島正治 (経営コンサルタント)

読者の皆様ヘ 今月から始まるこのページでは,現場生活のなかでぶつかるいろいろな問題を,筆者の関係する中堅企業 数社の現場リーダーを通してとり上げていきます.たとえば,進度おくれ,不良再発,部下の問着,故障対策,連絡の不備など,実話と若干のフイクションを加えた形で紹介し,そこから,日頃,職場生活の悩みのタネとなつているムリ・ムダ・ムラを,皆様がどのように受けとめて,改善のヒントをつかんでいくか,それがこのページのねらいなのです。登場人物を,あなたの分身と思つて,これから続く彼らの活躍をご支援ください。

さて今回の配役となる組長さんに登場していただこう。

第二課の川叉組長は40をすぎた苦労人.赤ら顔でガッチリした肩,人のよさそうな細い目. もちろん現場上りだがなかなかの努力家で,最近計算尺を独学で勉強したのが得意. 第一課の横淵組長も,かれこれ20年のキャリアだ。町工場で年季を入れた腕のいい職人だが,社内訓練などは一番にが手.仕事にやかましいのはいいとしても,進捗会議で時々ボロを出している.少し忘れっぼいのが欠点, しかし部下についてはよくつかんでいるようだ。

 

伊部班長,落語の立川談志のような顔.むっつり屋だが骨がある.腕もまあまあ,28才. また,第一課は規格品の量産物,第二課は特殊品で小ロット,品種が多く加工も規格品より複雑である。第二課は一品生産の新製品公害関連設備である.将来有望,主として板金仕事である。

今月から始まるこのページでは,現場生活のなかでぶつかるいろいろな問題を,筆者の関係する中堅企業数社の現場リーダーを通してとり上げていきます.たとえば,進度おくれ,不良再発,部下の問着,故障対策,連絡の不備など,実話と若干のフイクションを加えた形で紹介し,そこから,日頃,職場生活の悩みのタネとなつているムリ・ムダ・ムラを,皆様がどのように受けとめて,改善のヒントをつかんでいくか,それがこのページのねらいなのです。登場人物を,あなたの分身と思つて,これから続く彼らの活躍をご支援ください。
さて今回の配役となる組長さんに登場していただこう。 第二課の川叉組長は40を半ばすぎた苦労人.赤ら顔でガッチリした肩,人のよさそうな細い目. もちろん現場上りだがなかなかの努力家で,最近計算尺を独学で勉強したのが得意. 第一課の横淵組長も,かれこれ20年 のキャリアだ。町工場で年季を入れた腕のいい職人だが,社内訓練などは一番にが手.仕事にやかましいの はいいとしても,進捗会議で時々ボロを出している.少し忘れっぼいのが欠点,しかし部下についてはよくつかんでいるようだ.

伊部班長,落語の立川談志のような顔.むっつり屋だが骨がある.腕もまあまあ,28才. また,第一課は規格品の量産物,第二課は特殊品で小ロット,品種が多く加工も規格品より複雑てある。第二課は一品生産の新製品公害関連設備である.将来有望,主として板金仕事である。

川又班長,ためいきをつく

ドル ・ショックだ,やれ昭和元禄とは縁切り(円の切上げ)だ, と騒ぎたてたその新聞に , またまた,次のような騒ぎ.“生産性向上は労働者の敵 ”
“生産性向上運動の行きすぎで国鉄総裁が議会や,国労執行部に陳謝 “。 一方, 日経連は“今年も賃上げに生産性基調方針を打出し,生産性向上率以上の賃上げは抑える,という防衛体勢に対して,総評は依然として高姿勢”などと肌寒い記事がのっている.振り返ってわが身を考えれば,おあしとはよくいったもので,物価に追いまくられて,子供達の教育やら,最低限度のレジャーに, もう次のポーナスを当てにしてやりくり算段だ。 組合よガンバッてくれ,と内心声援を送りながら も割り切れないものが残ってしまう。

うちの会社も独占企業とまではいかないから , 製品の売値を上げれば受注も減るだろう。“ 1人当たり売上げ高○○万円”という目標の次に,“ 原価20%低減”とうたっている.生産性向上なくして,原価が下がれば文句はない。部長の口癖の生産性向上とは,察するところ能率を上げて , 1人で1個でも沢山つくることには間違いなさそうだ。そうすれば,少数精鋭主義で,精鋭でないものは去れ,と いうことになってしまう.組合あたりで問題にするのはここいららしい。

鶏が先か卵が先か

この前の夜のこと,「そりゃあ,材料を安く買ったり,外注をたたいて単価を下げるって方法もあらあな」と,川叉組長は組長仲間の横淵とおで ん屋で一パイやりながら話した.そうしたところ,横淵組長が大きな目玉をギョロリと向けて,「それが簡単にいく世の中なら世話はないよ。そういう考えを大企業のエゴといって,結局下請を泣かせることになるんだ.以前うちにいて,今, 下請をやっている 近藤さんだって,パートを使っても あんまり 利益がないとこ ぼしていたよ 」

こんなキッカケで話は真剣味を帯びてきた。「しかし,わからないな.景気が悪く て売上げがのびない,原価を下げようとすると 生産性向上 反対だ。もっとよい条件の会社へ移れる時代ならはっておいても人は減るんだが,もっとも 残るの は,かならずしも精鋭ばかりではないがな」 . 「そんなこといって自分が槍玉に上ったらどうするんだ。若い衆はあんがい平気で,ボウリングだのゴーゴーにう つつを抜かしているが, こちとらはなんてたって生活がかかっているからな」 . 「鶏が先か,卵が先かわからんが,仕事さえどんと積まれれば,あおりが利いて能率は上るってもんだ。それをこの頃みたいに受注が横ばいだと ,いらぬ心配も せにゃならん。上の方で何とか計画は立ててるだろうが,たまには,パーッと先 が明るくなるようなニュースでも 流してもらいたいも んだ。新製品でもいい,輸出倍増でもいい , 人間は気分次第よ .安くて,いいものが売れない
ような政府は変わってもら わなきゃ……」。

「こ んな話じゃ酒もまづくなるな ,ひとつ 河岸でも変えようか」

組長さんストップ・ウオッチを握る

そんなある日のこと,社長方針ということで , 製造部長から話があった . 「今期は標準作業量を決めるという面倒な仕事に取り組むことになりました.いうまでもなく標準時間は, 1時間何個作れるかとか,日産計画数を算出して,どのくらいの仕事量を流したらよいか,計画数と実績数を比較してその差をどうして縮めるか,設備改善をやったらどれだけ効果が上ったかなどと工場管理面のよし,悪し をはかる物差になるものです.今までも生産日標数といって過去の実績をもとにした標準らしいものを使っていましたが,今度はもっと公平に,合理的に決め ることにしました。それには,生産技術課に2名の専任担当者をつけますが,とても2名では,半年や1年で全工場,全作業をしらべることはできないと思います。そこで,各課の課長はじめ,組長や班長さんの協力をおねがいするわけです」

今までの目 標数は, 3年も前に決めたもので, その後,年ごとに1割とか1割5分 とかを上げてきた.その度に組合と相当やり合って,決 めたも のだった. しかし ,来年はただ労使の交渉て決めるのではなく ,もっと明朗に ,はっきりした基準 をもとにして皆の納得の上で 決めたいという考えのようだた。し かも ,製造部長の計画は, IE コースに6週間出張受講した前記2の 担当者を先生として ,組長 ,班長にストップ ・ゥォッチの 使い 方を教え ,仕事の合間に部下の作業時間を計らせ ,それをもとにして ,標準時間をきめるという方針だ .部下に標準時間を 守らせるという責任をもたせるかわりに ,標準時間そのものを決める権限を与えるという思い切ったやり方だ

組合も傍観してはいられない

早速何回か労使協議会がもたれた。 生産技術課の専任担当者の1人は 評議員になっている.その説明で最近の標準時間を決める技術は相当進歩ていて ,決して労働強化になったり ,職場間の不公平(いわば 甘さ ,辛さ )がないように考えてあるということだった。一番問題になったのは ,工程管理上の不手際で起きた手待時間 ,特急部品のために起こる段取替え ,および 機械の故障 ,材質の変動など 出来高に影響する作業中断や遅延は作業者の責任にすることなく,管理者側の責任としてはっきり分離し ,作業者は正味 ,仕事をした時間だけについて,標準時間をくらべ ,その努力や技量を評価される ……。などの点が明らかにされ,組
合も 監視をキビツクすることで納得した .特に, 同じ組合員である組長 ,班長には ,決して一方的に会社のペースに 巻き込まれることなく ,またムリの ないように ,手の早い人ばかりでなく,手の遅い人の 時間も 計って,公平にやるよう にとの申入れがあった。 組長 ,班長とて気持は 同だ。自分で自分の首をしめるような ,ムリな標準は頼まれてもいわないことだ。 そのへんはあとで ,前任
担当者の話をとっくり 聞いて,なかば 安心したものの ,これは大変だとか ,と ても責任は負えないとか ,弱音を上げる 班長も 数名いたことは事実だ。 以下はその時のやりとりである。

いったい標準時間とは何だ

――われわれがちょっと気張ってやれば100個ぐらいできるものが,たとえば,3年の経験者でも,不器用なものがやれば,50個ぐらいだ。どのへんの腕を基準にするのか

▲「それには “ レイティング係数*”といって ,動作の速さを表わす値を課長はじめ皆さんにも決めてもら いたいと思います.これは特別のフィ ルムを使って ,まず写った動作を見て,皆さんでレイティング 係数を当てっこし て,速さのカンをつけてもらい,その上でうちの会社でどの辺を基準にするか決めてもらいま す。皆さんならそんな練習をしなくても,熟練者ばかりですから,仕事ぶりを見 て, ダラダラやっているか,バリバリやっているか,ここらが普通ではないか,ぐらいはすぐわかると思いますが,それでも身びいきというものは避けられません。他社ではどんな速さでやっているか,あるいは一般の工場はどんなものかを知っておく必要があります。

例えば, トランプのカードを図のような距離で52枚を配る時間が約25秒 (0.4134分 )になるのが熟練者の普通の速さで,多量生産工場の一つの基準になります。私が今やってみますから,どなたかストップ・ウオッチで計って下さい。昨夜ちょっと練習しましたから少しは慣れていますが・ ・ ・ .何秒になりましたか。

――28秒です。それにしてもなかなか手早いね. 標準とくらべるとどうですか。

▲「ちょうど1割おそかったようです・ですからレイティング係数は90という わけです」

――いくら多量生産でも,皆が皆,このスピードでやっているとはいえないな。標準としては速すぎるな。

 

▲ 「しかし ,仕上げの女の子はけっこうこのくらいでやっていませんか.速い人はこれ以上ですよ .ただ,職場全体を平均すればこんな速くはないでしょう.現在のところでは60か70の速さかも知れません.しかし,この速さで標準時間を決め,皆に知らせて適切に指導すれば, 1年後には,80か90には上るものですよ .それがパック *という能率管 理システムです.この速さはアメリカで一般に認められたもので,熟練者に対しては決してムリではないという折紙つきです。もちろん日本でも, すでに百数十社で採用しています」

――トランプ配りと旋盤作業では比較にならないのとちがうか。2キロや3キロのものをあの速さでやったんでは参ってしまうよ。

▲「 ごもっともです。重くなればスピードが落ちるのは当然です.今度会社で買ってもらったフィルムには, うちの会社の作業とよく似たいくつかの作業がありますから,なるべく 早い時期に皆さんに見てもらいます。簡単な作業では6mの 歩行作業があります。これは約4秒 (0.064分)が基準ですが,ちょっと歩いて見ますからまた計って下さい 。・・・・どうですか(床に6mの自線を引いて何回 か歩いて見る).こんなところが普通です」

――ちょっと待ってくれ。そんな速さで一日中歩かされてはそれこそ労働強化じゃないかな.人間はロボットではないんだから・・・・・。

 

▲「 もちろん,ちょっとひといき入れる時間は余裕といっていますが,たとえば,皆さんのなかにも経験された人がいるように,軍隊の行軍には小休上があったでしょう。この速さの歩行(1分, 約100m)で10分続けたら,約3分は休んでもよ い,あるいは休むかわりに30%スピードを落して,100mを1.3分で歩いてもいいんです.その他便所へ行く時間,ちょっとした機械の調節,打合せ,手待ちなど5分 か10分以内のものをまとめて, やはり余裕の中に入れます。だから, 追々調べ て,皆さんとも相談して決めますが,余裕の合計は大体15%から25%くらいになるでしょう。つまりストップ・ウオッチで計って, 1個加工する時間が10分だったとします(観測時間=1分)。 そして, その時の作業者のレイティング係数・・・これは先 程お話したように“ カン”に よるわけですが・ ・ ・ を 90と しますと

正味時間=1分 ×0.9=0.9分

のように計算して,正味時間に換算します.つまり ,名人というほどではないが,まず一人前といわれる 熟練者が普通の努力,あるいはやる気でやった時間を“ 正味時間*”といいます。

次に,その作業のキツサ ,エラサといいますか, それを作業強度と呼びますが,そ の度合によって
きめるひといき入れの余裕(人的余裕 ), 手洗いや水飲みの余裕鯛達余裕 ), 打合せや調節その他のちょっとしたおくれ(管理余裕 )を合計して20%としますと

標準時間 =正味時間×(1+余裕率)

で 標準時間が計算されます.上の例では

標準時間=0.9分×(1+0.2)=1.08分

と なり ま す。

この標準時間でいつも 作業ができれば ,能率は 100%というわけです。

――ちょっと質問をさ せてもらうよ。 同じ作業ても機械が変って ,たとえばタ ーレットが 忙しくて旋盤にかけた ,などという場合はどうするんだね.

▲「原則として作業のやり方,特に機械の構造, 性能や材料のちがう場合は標準時間も別につけます」.

――同じようなことだが,最近入ったS社の強力旋盤と,古いガタ旋盤では時間もちがうんだろうね

▲「もちろん,原則には変わりありませんが,その作業が一般にかけられる機械を対象とにしてつけますから ,やむをえず性能のちがった機械でやった場合は報告してもらって訂正します。ただ ,それはど 性能に大きな開きがない場合は,あ まり煩雑にならない程度にしたいと思います」

――標準時間は作業者にも知らせるのかね。

▲「もちろん知らせて下さい。第一課は量産物ですから ,いちいち作業票に書かないでも,その作業者によくかかる作業の標準時間をメモして渡しておけばいいでしょう .第二課は, 1人にいろいろな作業がかかるから,作業票に書いて渡すとよいと思いま す。実績時間の報告方法は追って決めます。

時間はかくれてとってもすぐわかる

「あんまり ,手数のかからないようにしてくれよ。それでなくても何だかんだと 忙しくてかなわないのだから」と ,川叉組長が予防線を張った。この日の説明会はこれで終って , 日を改めてストップ・ウオツチ の使い方と,レイティング ・フィルムによる訓練をすることになった。

席へもどってくると,始めから終わりまで押しだまっていた部下の伊部班長が不平顔で,「 どうもわれわれ信用がないんですね。毎日段取だ,機械の修理だと追い回されたり ,不良品の後始末や対策を,品管からやかましく催促されたり ,何 ごとにも文句の多い若い衆をなだめたり ,すかしたり ,その上時間を調べろなんて酷ですよね。これでノルマが決まると思うと,みんな結託してわざとノロノロ やるんじゃないですか.いっそう彼らにわからないようにして計った方が本当の時間がとれると思うんだが ・・・!

さっき ,よほどそういってやろうと思ったがやめまし た。組長の前です が,以前,機械をもっていた時,組長が私にわからないように時間を計っていたのに気がついて, いやな気持になったことを思い出したんですよ。
もう時効ですから 何とも 思っちゃいませんがね」.「アハハハ,そうだったか。やつばりわかるもんだな。今度は面と向ってやるんだから彼らにもよく理解してもらうように話さなきゃならん」

現場監督者に暇なんてありはしない.仕事はやれば切りがないもんだ。机に向ってものを考えている方がずっとつらい。特急の仕事を若い者に代ってバリバリ やる方が,張り合いがあってかえって気は楽だ。それでは本当の監督者ではないことぐらい皆も知っているが,本音だろう。時間計りは考えて見ると気骨の折れる仕事のようだ.しかし, 1日30分前後やればいいといわれたから,それくらいの時間なら何とかなるだろう。次の日 はストップ・ウォッチの練習だった。 次回はこれらの職場の時間観測を一緒に勉強していこうと思います。 (つづく)

「実践IE読本(編・日本能率協会・1971)」をアーカイブとして掲載するものです。この読本のの各章は現場生活のなかでぶつかるいろいろな問題を事例を通してとりあげています。職場生活の悩みのタネとなっているムリ・ムダ・ムラをどのように受けとめて、改善のヒントをつかんでいくかが、IE・インダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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