コラム・特集

3.3 非線形モデルの構成におけるパラメータ推定問題

IEハンドブック
第14部 インダストリアル・エンジニアリングの最適化

第3章 非線形最適化

3.3 非線形モデルの構成におけるパラメータ推定問題

非線形モデルを構成するときに使われる関数の形は通 常,理論的解析やあるいは実務上の直観によって決められている(ボイラー問題の例で,ボイラー効率が負荷の二次多項式であると仮定したように)。これらの関数形の中には未知パラメータ(ボイラー効率を表わす関数では二次多項式の係数のような)を含んでいる場合が多い。通常パラメータの値は,その関数ができるだけ正確に観測データを近似できるように,曲線のあてはめによって決定される。パラメータに対する最良の値を求めるこのような問題は,「パラメータ推定問題」または「曲線あてはめ問題」と呼ばれている。これがどのように計算されるのかを,前節で取り上げたボイラー 効率の例を使って説明してみよう。

ボイラーを運転するときの負荷をξ,その効率をyとおく。いまα0+α1ξ +α2ξ^2+α3ξ 3の形の関数でy(ξ)を近似することを試みる。ここでα=(a0,α1,α2,α3) は推定すべきパラメータ・ベクトルである。このため, いくつかの負荷レベルでのボイラー効率についてデータを収集し,負荷の第t 観測値ξtに対し効率の観測値ytが求められて(tは1からrまで),r組の観測値が手元にあるものとする。

最も密接なあてはめを得るためには ,パラメータ・ベクトルαに対応させて,観測値からの関数値の偏差の尺度を構成する必要がある。通常それには3種類の異なった尺度が用いられている。すなわち、

である.L2の尺度は2乗和であり ,これを最小化するには,理論的なあるいは実際上の考慮から決められた,αに関する何らかの制約条件のもとで,L2を最小化するようなα=(α0,α1,α2,α3)の値を選ぶことが問題となる。この最小化問題は「最小二乗問題」と呼ばれ,パラメータの値を求める方法は「最小二乗近似」あるいは「最小二乗法」と呼ばれている。α =(α0,α1,α2,α3)を,この方法で得られたパラメータ値の最良ベクトルであるとすれば,関数α0十aξ +Qξ^2+Qξ^3は負荷の関数としてのボイラー効率に対する「最小二乗近似」と呼ばれる。

すべてのパラメータが関数の中に線形で現われる場合には (ボイラー効率の例のように),偏差の尺度LiあるいはL∞ を最小化するようなパラメータ値の決定問題は, 双方とも線形計画問題となり,効率の良いシンプレックス法が使えるのでたいへん有利である。しかし,パラメ ータが関数形の中に非線形で現われてくれば,パラメータの推定には最小二乗法のほうが望ましい。

最良のパラメータ値のときでも,偏差の尺度が大き過ぎる場合には,関数の形の選択を見直して,変更することが必要である。さらに,決定変数のすべての可能な値に対しては,どのような関数形も良い近似を与えない場合がある。最適点の存在しそうな位置について,なんらかの信頼できる実際的な情報が使える場合には,決定変数の最適値の近傍に良い関数表現を見つけるだけで十分である。

このようなわけで,現実問題に対して数学的モデルを構成する過程それ自体が,パラメータ推定のために,最適化アルゴリズムを利用しなければならなくなることもある。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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