コラム・特集

3.2 非線形モデルの実例

IEハンドブック
第14部 インダストリアル・エンジニアリングの最適化

第3章 非線形最適化

3.2 非線形モデルの実例

この章の目的は,非線形モデルがどのようなものであるかを読者に知らせ,非線形最適化の実用性の広さを例示することにある。現実にある問題は,多くの場合,大規模モデルとなってしまい,この短い章の中で,そのうちの1つ を説明することさえ難しい。そこで3つの簡単な非線形モデルについて述べる。おのおのの例において決定変数はx jで表わし,他の記号は問題中のデータを示す。

地域暖房システムの最適化
ある地域では暖房用の高温水を必要としている。高温水は近くの原子力発電所からと,地域の石油燃焼プラントを使用することにより得られる。原子力発電所では ,熱は僅かな電力消費だけで作り出され,パイプ・システムを通して高温水の形でその地域に供給される。この高温水は地域で熱交換器に入り,そこで熱は地域暖房シス テムに渡される。そこから出た水は再利用のため再び原子力発電所にもどる。

変数とデータの定義を次に示す (関数形は熱と電気の法則や過去のデータの解析からいたものである)。

x1=石油燃焼プラントから供給される熱量(単位熱量)
x2=原子力発電所から供給される熱量(発電所出口で)
t0=周囲水温(地域暖房システムの熱交換器に戻っている水の温度,同時に熱交換器から原子力発電所にもどる水の温度でもある)
x3=熱交換器に向けて原子力発電所から出る時の水の温度
x4=原子力発電所から出て,まさに熱交換器に入る時の温度(パイプの長さ,口 径,保温状態,ポンプに使われたエネルギー等のデータや,以下の式のような冷却法則によって決められる)
x5=熱交換機において地域暖房システムの水に移された熱量
x6=原子力発電所から地域暖房システムヘの水の流量
x7=熱交換器における地域暖房システムヘの水の流量
q=その地域で要求される基準最小熱量

費用としては,原子力発電所における熱の生産費(電力損失のコスト),原子力発電所と熱交換器の間で水を流すためのポンプの運転費,石油燃焼プラントでの熱の生産費がある。これらの費用は目的関数の中では,この順番で3つの項に示される。

この例題は Fahlander他からとったものである。

コイルねじりばねの設計
この例題はAgrawalによるものである。コイルねじりばねはドァのちょうつがい,自動車の始動器,電気モーターのブラシホールダー等のばねに広く利用されている。問題は与えられたねじり荷重,たわみ角,材料密度のもとで,重量を最小化するために,次の変数の最適値を求めることである。

x1=線材の直径
x2=平均コイル径

ここでc1,c2,c3はばね材料の密度,弾性係数,その他から定まる定数であり,この式はばねの法則により求められたものである。

この例題はCHWhiteによるある工場で並行して運転されている5台のボイラーがある。問題は許容操業範囲内で5台のすべてのボイラーを運転して,最も低い燃料 費用で,指定された総蒸気出力を得るためには,どのように各ボイラーに,蒸気負荷を分担させたらよいかを決めるものである。実際には1つまたはそれ以上のボイラーを休止し,需要に見合うように残りのボイラーを使用して,全体ではより低い総費用を得ることができる可能性もある。これは離散形 (組み合わせ形)最適化問題 となり,ここでは議論しない。離散型最適化に関しては 144章で詳しく述べる。

i=1から5に対して,

l1,k1=ボイラーiが運転可能な最小負荷と最大負荷
xi=第iボイラーの運転時の負荷
L=定められた総負荷(蒸気出力)

非線形最適化のさらに多くの実際応用例については , Awielと Dembo, Balinskiと Lemarechalを参照されたい。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー