コラム・特集

2.7 LPにおける感度分析

IEハンドブック
第14部 インダストリアル・エンジニアリングの最適化

第2章 線形計画法

2.7  LPにおける感度分析

LPモ デルにおいては,目的関数や制約条件式の係数は入カデータとして,すなわち,モデルに対するパラメータとして与えられている。シンプレックス法によって得られた最適解は,これらの係数の値に基づいて得られたものである。実際にはこれらの係数の値を,絶対的な確実性で知りうることはめったに無い。なぜなら係数の 多くは,制御できないパラメータの関数となっているからである。例えば将来の需要,原材料の価格,エネルギー資源の費用などは問題を解く前に,完全な正確さをも って予測することは不可能である。それゆえ実際問題の解決には,最適解を決めただけでは不十分である。

係数データの値がそれぞれ変動すれば,LP問題自身が変わってしまい,そのため,すでに求めた最適解も影響を受けるかもしれない。さまざまな偶発性に対処できるような,総合的な戦略を展開するためには,入力 (データ)係数が変化したとき,どれだけ最適解が変わるかを調べておかなければならない。これが感度分析であり, いいかえれば最適化後の分析である。感度分析を実施する理由には,さらに次の点があげられる。

1.資本,原材料,機械能力の利用可能量などのように,LPには制御可能な係数データ,すなわちパラメータが存在する。感度分析では,これらのパラメータの変化が,最適解に及ぼす効果を検討することができる。あるパラメータを僅かに変えただけで,最適値 (利益/費用)にかなりの大きさの望ましい変化を与えられることが分かれば,これを変更する価値は十分あるといえる。たとえば残業を認めることによって,労働力の利用可能量を増やし,そのことが残業労働による費用増加に比べて,はるかに大きい最大収益の増加に役立つのならば,残業生産を認めようとするにちがいない。

2.多くの場合,係数データの値は販売予測,価格見積り,コストデータのように,過去の数値の統計的 推測によって得られたものである。これらの見積りは,一般的にはそれほど正確ではない。どのパラメータが最も目的関数の値に影響するかを見分けることができれば,これらのパラメータの,もっとよい見積り値を求めることができる。このことは,モデルとその解の信頼性を増すことになろう。

実際の使用
感度分析の実際の使用状況を説明する。手助けに,この章の最初に述べた例題14.2.1を使うことにしよう。この問題の解の計算出力結果が図表14.2.3に与えられている。最適解をみると,最適製品混合は製品1と2をおのおの33.33単位と66.67単位生産することである。

シャドウプライスは,ある資源を1単位追加したときの最大利益への正味の影響を与えている。労働量が最も大きい影響力をもっており,労働量を1時間増やすと利益は333ドル増加する。

資源の変動が,図表14.2.3 に示された制約条件式の右辺の値の範囲内に留まる間 は,このシャドウプライスが成り立っている。いい変えれば,時間当たり3.33ドルの利益増加は,労働時間が150時間を超えない限り手に入る。仮に追加労働コストドルをともなう残業スケジュールを組むことにより,25%だけ労働時間を増やせるものとしよう。残業を組むことが得なのかどうかを知るために,まず25時間の残業による最大利益の正味の増加量を(25)(3.33)=83.25ドルとして求める。この利益は残業の費用よりも高い額であるから,残業スケジュールのほうが経済的である。どれか右辺定数の1つが変わったとき,最適解も変わるということを認識しておくことが重要である。しかし,右辺定数が指定された範囲内で変化する限り,製品混合には影響は起こさない。いい換えれば,製品1と2だけの生産をそのまま続けるのだが,それぞれ生産量は変わるかもしれない。

図表14.2.3の目的関数係数の範囲は,3種類の製品の単位当たりの利益の変化に応じた最適解の感度を示している。製品1の単位当たりの利益が,6ドルから15ド ル の間では最適解に変化が無いことがわかる。この変化によって,最大利益に影響が及ぶのはもちろんである。たとえば製品1の単位当たりの利益が,10ドルから12ド ルに増加すれば,最適解は同じであるが最大利益は733.33 +(12-10)(33.33)=799.99ドルにまで増加する。

製品3を最適製品混合に入れるのは経済的でないことに注目しよう。したがって単位当たりの利益を今より減らしても,最適解や最大利益に何らの影響ももたらさな い。また製品3の生産が引き合うようにするためには,その単位利益を667ドル(現在価値+機会費用)にまで増加しなければならない。

パラメータの同時変化
利益や右辺乗数の範囲についての感度分析の出力は, パラメータのうちの1つを変えていき,他のすべてのパラメータは,現在の値に固定しておくことによって得ら れたものである。しかしながら,いくつかのパラメータ が同時に変化したときにも,感度分析の結果を使うことができる。これは次の「100%ルール」を活用することによって可能である。

目的関数の係数に対する100%ルール 目的関数の係数に対する100%ルールは、

∑ δcj / △cj ≦1   (6)

で与えられる。ここでδcjιは,変数xjの目的関数の係数の実際の増加(減少)であり,△cjは感度分析によって認められた最大増加(減少)である。(6)式の不等式が成立するかぎり,LP問題に対す最適解は変わらない。たとえば製品1の単位当たりの利益は1ドル減少するが, 製品2と3では1ドルずつ増加するとしよう。この同時変化は,100%ルールを次のように満足する。

 δc1=-1,△c1=-4, δc2=1,
△c2=4,δc3=1,△c3=2.67であるから

-1/-4+1/4+1/2.67=0.875 < 1

ここでは最適解は変わらないが,最大利益は(-1) (33.33)+1(66.67)+1(0)=33.34ドルはだけ変化するだろう。

右辺定数に対する100%ルール右辺定数に関する100%ルールは,次のように与えられる。

∑δbi/△bi≦1    (7)

ここでδbiは,i番目の制約条件式の右辺定数の実際の増加(減少)で,△biは感度分析によって認められた最大増加(減小)である。不等式(7)が満足されれば,最適製品混合は変わらず,同じシャドウプライスが適用されるが,最適解と最大利益は変わる。もちろん,最大利益の正味の変化量はシャドウプライスを用いて求められる。<警告> 100%ルールが破られたことが直ちにLP解に影響するとはいえない。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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