コラム・特集

1.6 モデルの検証

IEハンドブック
第14部 インダストリアル・エンジニアリングの最適化

第1章 最適化:概観

1.6 モデルの検証

モデルが現実の通りに動くという確信を得る過程を,一般には「検証」と呼んでいる。モデルの利用者がある 基本的な環境のもとで,そのモデルが役に立つことを納得したときに,モデルは正しいモデルといえる。もちろん,その正しさは理解されている環境に制約される。その環境の中であっても,まだ納得できないという理由で,そのモデルの正しさを受け入れることを拒む人もいる。 したがって,この「検証」は「証明」に比べるとかなり弱い言葉である。

モデルは実施の前に必ず検証されなくてはならない。検証手順の目的は,最適化研究に用いられるモデルが現 実のシステムの正しい表現になっており,それを解いて得られる推測や結果が,研究中のシステムと矛盾しないことを確かめることである。検証は次の2つの段階からなる。

(1)検査モデルが実験者の意図した通りに振る舞うことを確かめる。
(2)検証モデルの挙動と現実システムの挙動とが一致していることを確かめる。

たとえばコンピュータ・モデルの検査では,サブプログラム内の個々の文番号に対してと,別のサブプログラム に対してなされるCALLの回数を数える。そこでこれらの回数を,このようなCALLの現実の見積り値と比 較・検討することができる。

前に述べたように,モデルの正当性を,確実性をもって断言しようとしても 無駄なことである。しかしこのこ とは,適切な妥当性の標準に対して,モデルを検討する必要がないということを意味するわけではない。このような検討のために,モデルの性質に応じて,多様な手法が用意されている。

予測モデルを検証する1つの方法として,「遡及テス ト」がある。これはモデルを過去の実績データと比較して,実際に観測されたことを,モデルが正確に予測していたかどうかを調べることである。たとえば,モデルがある商品の月間販売高を予測するために作られていたとすると,現実の販売実績データを,予測値との比較に用いて検討することができる。同様な考え方は,モデルがある種の現実を表現するために作られているような場合にも有効で,そのモデルの定式化のときには用いられなかった,同種類の別の現実と比較することによって検証することができる。たとえば,回帰モデルによってあるデータのあてはめを行った場合に,同じデータの別の部分がその後のテストに利用できる。ある種の記述モデルの検証によく用いられる方法として,現実システムのパラメータを組織的に変更していき,モデルがその変更を, うまく“ 追う”こ とができるかどうかを調べる方法がある。またモデルを人為的に作られたテスト状況の中に入れて,わざと弱点を現わさせることもある。もしモデルが極端な状況の中でも適切に働いたとすれば,もっと正常な環境の下では良好に動くであろうと信頼することができる。

モデルが実施の前に検証できなかったとしても,その場合は実施の中で検証することができる。たとえば在庫管理の新しいモデルを,ある特定グループの品目についてだけ実施してみて,その他の大部分の品目は従来のシステムのままで扱うことにする。モデルが検証されるにつれて,より多くの品目をその管轄の中に入れていけばよい。

注意しなくてはならない点は,検証はやればきりがな いことである。たいへんな努力をしても,もうほんの僅かしかモデルの信頼度が上がらないような時点がくる。モデルの重要性に対応して,もっと低い信頼度で我慢したほうがよい場合もある。他の人が同じようなことを行い,うまくいったことを知るだけで十分な場合もある。

最後に留意すべきことは,現実は時間とともに変化していることである。極めて満足すべきモデルも,時が経てば全然駄目になる場合もある。このような要因が,モデルの特性と正当性に及ぼす影響をよく考えて,実施中のモデルに対しては,常時の監視から定期的な再検討までの何らかの対策が必要である。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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