コラム・特集

1.5 モデルの作成

IEハンドブック
第14部 インダストリアル・エンジニアリングの最適化

第1章 最適化:概観

1.5 モデルの作成

モデルの型
エンジニアは最適化すべきシステムの検討に望ましい 詳しさのレベルを決めたら,次にそのモデルを実際に作成する問題に入る。最適化研究では,基本的に次の3つの型のモデルが用いられている。

1.現象学的な方程式中心のモデル
2.応答曲面モデル
3.シミュレーション・モデル

第1の型のモデルは,基本的な物質やエネルギーの収支方程式,技術的な設計関係や物理的性質に関する方程式から成り立っており,これらのすべてが連立方程式あるいは不等式にまとめられる。通常このようなモデルは,その方程式が基本的な工学原理のレベルでシステムの挙動を記述しているので,広い範囲のシステム条件にわたって成り立っている

第2の型のモデルでは,全システムあるいはその構成部分が,特定の形の近似方程式で表わされている。この方程式の係数は,直接あるいは間接的に測定されたシス テム応答のデータを用いて推定されたものである。このようなモデルは通常システム変数の限られた範囲でしか成り立っていないが,利点としては構造が単純化されていることである。

第3の型のモデルでは,システムの挙動を記述する基本方程式は別々のモジュール,すなわちサブルーチンにまとめられ,その中で個々の装置はシステムの状態変化と関連するアクティビティの集合として現わされている。これらのサブルーチンはそれぞれ,通常独立した存在であって,その中に内部数値手続,方程式解法,積分, 論理分岐手続などを含んでいる。シミュレーション・モデルは方程式の評価が複雑で,暗黙裏に決まる変数を含 んでいる場合や,計算手続の論理プロックや適当な方程式の選択が,システムの状態に依存する場合に用いられる。
モデルの組立てどの型のモデルを選んだにせよ,次にしなければならないことは,モデルを組み立てる方法の選択である。人手で行うか,コンピュータを利用するかを決めねばならぬ。方程式中心のモデルの場合には,一番簡単な形は線形計画法であるが,人手によって線形方程式あるいは不等式を書き,モデルに組み立て,その係数を線形計画法コードに適した配列にまとめることができる。コンピュータ利用の場合には,マトリックス・ジェネレーターによって,ある種の制約条件の係数が自動的に組み立てられる。たとえば,Σ角=1の形の制約条件は,加算されるべき変数のインデックスと右辺の定数の数値とを指定するだけで簡単に作り出される。この場合,マトリックス・ジェネレーターが適切な配列の要素を作り出してくれる。各種の標準的な構造をもつサブシステムが互いに連結されているような場合には,方程式ジェネレーターを利用するのが効率的である。ジェネレーターはサブシステムの形に応じて作られており,モデルを作り出すには, 単に用いられるサブシステムとそれらの相互連結関係を与えれば十分である。たとえば,ベスレヘム製鋼所は最近,工場の操業を最適化する線形計画法モデルのための方程式ジェネレーターを開発した。 応答曲面モデルの場合には,従属変数と独立変数とを関連づける近似方程式を推定するためのデータを,直接そのシステムや構成部分から取り出して使っている。典型的な例としては,複雑な関係を近似するために,二次方程式の係数の当てはめが行われる。一方,シミュレーションのような,もっと複雑なシステム・モデルが,応答曲面を作り出す自動近似ジェネレーターとともに用いられることもある。

最後にシミュレーション・モデルを作るには,始めから完全にプログラムを作る場合もあるし,シミュレーション言語やパッケージを利用する場合もある。このようなシステムを使うときには,モデルはブロック構造の概念によって組み立てられる。すなわち,シミュレーション・パッケージによって与えられる個々のモジュールは, 使用者が与えるデータ記述かプログラムによって,互いに連結される。

モデルの型とモデルを組み立てる方法に応じて,それぞれ多くの利点,欠点,落し穴が考えられる。方程式中心モデルは,工学的利用では最も一般的に用いられている。モデルの自動的な形成は,通常線形計画法と混合整数計画法にしか用いられていないけれども,非線形プロセス・モデルヘの応用でも,自動ジェネレーターの利用が注目されている。というのは,このモデルにはポンプ, 圧縮機などの装置,すなわち繰り返し現われるシステム・アクティビテイが含まれており.方程式によるそれらの表現は,加工率や条件に独立であるからである。方程式中心モデルの次元は通常大きい。したがって,人手によリモデルを作る場合には,特定の変数に対していくつかの方程式を解いて,それを代入することにより,変数の数を減らしたり,逐次的に解けるブロックに方程式を並べかえて,それに繰り返し解法を適用したり,x4= min(x1,x2,x3)のような,最大または最小のオペレーターを用いて,不等式の数を減らしたりすることが望ましい。一般にこのような手段には,次に述べるような潜在的困難さを伴うものである。

1.変数を消去するために方程式が用いられるとき,それらの変数に与えられている,陽的であれ陰的であれすべての限界を,それらの変数を置き換えている式に対して,はっきりと与えておかなくてはならない。これをしないと,不能解が作り出されるおそれがある。
2.モデルの方程式の中に組み込まれる繰返し計算は, すべて十分厳格な許容誤差の下で実行されなくては ならない。さもないと,モデルの導関数の数値評価に誤差を引き起こしたり,探索法のロジックに誤差を引き起こすおそれがある。
3.最大または最小のオペレーターは,導関数に基づくアルゴリズムが用いられている場合には,使うことができないなぜなら,それは導関数の不連続性を持ち込むからである。

さらに方程式によるモデルでは,整数でない指数をもつ幕乗,対数,その他の超越関数のような,常用の関数の引数が定められた範囲を超えないように,適当な限界を与えておく 配慮が必要である。一般的には,モデルの方程式の中に,計算のループを含まないものがよい。しかし直接的な計算が不可能のときには,その方程式は等式制約としてはっきり書いておくのがよい。それにより非線形計画アルゴリズムでは,最適値を探索する過程の中で,その解を許容領域のほうに導くことができる。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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