コラム・特集

10.5 シミュレーションの応用

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第10章 コンピュータ・シミュレーション

10.5  シミュレーションの応用

コンピュータ ・シミュレーションの応用は過去20年間,急速に成長している。シノンとビルス の調査によると, シミュレーションや統計処理は,政府や産業界 にもっとも 広範囲に利用されている定量的手法である。シミュレーション言語の絶えさる開発は, この成長の重要な要因である。他の要因として,例えば問題を数学的プログラミングで解く場合の構造的な制約と比較すればわかるが, シミュレーション・モデリングの柔軟性にある分析モデルがある問題に適用できるときでさえも, シミュレーションは,その分析モデルのもとになっている。仮定の本質的な意味を調べるのにしはしば使われる。

産業界で利用するシミュレーション・モデルを設計じ開発することは困難な仕事ではない。そのような代表的なモデルは,規模は大きいがシミュレーション の本に書いてあるモデルよりは概念的に複雑でない。シミュレーション・モデルを作成する際に,分析者は利用可能な代替アプローチを検討し,固有のモデル化ルールに制約されることを避けなければならない。モデル化の改善は, ここで述べる広範囲の応用分野に見出すことができる。各トピックスに関して参考文献をリストした。

製造工程
多数の研究が次の分野で行われている。

1.プラント設計
2.生産性改善
3.人員配置計画
4.CAD/CAM
5.スケジューリング
6.マテリアル・ハンドリング

プラント設計のシミュレーション利用における特に興味深い例として,穀物製粉工場の備蓄タンク容量,蒸発 器,そしてイオン交換器の規模を決定する問題がある。原材料を積んだ鉄道貨車の到着から始まって,様々な工程を通る材料の流れを含むモデルは,離散系・連続系の混合シミュレーション・モデルで作られている。コスト効果分析による装置の最適規模を決定する問題に加えて,そのモデルはプラントに対する手動とコンピュータ制御システム案を評価するのに使われた。そのような制御システムは,最終製品の収益を最大にするためのシミュレーションに線型計画法を取り入れている。このようにシミュレーションはプラント設計の決着をつけるのみならず,製品の品質と生産量に両立した,もっとも経済的な制御政策を決定するのにも使用される。

輸送システム
最近,次のようなトピックスが研究されている。

1.鉄道旅客輸送システム
2.バス輸送計画と路線計画
3.航空輸送計画
4.空軍基地管理

この分野のシミュレーション研究の問題と目的の例として,軍のエア・ターミ ナルにおける貨物処理設備の能力評価を考えてみる。とくに,変動する需要に見合うターミナルの能力をタイムリーな方法で決定する必要がある。

ターミナルにおいて,貨物はトラックか飛行機で到着する到着した貨物は荷が解かれて,積荷のタイプ,行先,優先度によって分類される。分類された貨物は一定の分量になるまで開いている集荷場に運ばれる。規定の量の貨物が貯まると,重量が測られ,検査され,そして保管される。これを「移動可能」状態と呼ぶこと ができる移動可能貨物の輸送が決まると,輸送の決まった。他の貨物と一緒にするために集荷場に運ばれ, 1個の貨物にされる。それから搬送装置によって処理され,飛行機に積まれる。

この一連の貨物処理操作は,次のような質問に答えるためにプロセス中心のアプローチを使って容易にモデル化できる (1)自動化された荷造りや荷解き装置を設置すべきかどうか,またその場所はどこにすべきか (2)同時に何機の飛行機を処理できるか (3)緊急時に増加する飛行航路を確保するにはどれくらいの施設が必要か。

プロジェクト計画と管理
この分野における応用の多くは,ネットワーク・モデルを基にしている。これらの研究は次のように分類される。

1.製品計画
2. マーケティング
3.研究開発
4.建設(設備)

アラスカにおけるパイプライン建設のリスク分析が, この種の応用として例示される。パイプラインの建設は, 基本的に,(1)敷設パイプの敷地の準備 ,(2)パイプの敷設,(3)接合部分を含めたパイプの埋設,の3段階に分けられる。

パイプライン建設に付随するものとして,建築,撤去, 敷設場所の移動,道路や輸送施設の建設,敷地の再開発等がある。パイプライン建設がアラスカで行われるとき, 建設を計画するのに悪天候を考慮しなければならない。

パイプライン建設アクティビティと輸送設備開発アクティビティからなるQ-GERTネットワークが開発された。 建設アクティビティの天候条件をモデルに含めた。特別な負荷日数を使ってパイプライン建設の完成する確率を決定するリスク分析が実施された。潜在的に予測される建設の遅れを決定するコスト分析も行われた。この分析により,時間と費用の超過が予想されることが示された。また,アクティビティのスケジュールや建設進捗率を変化させたときの影響を調査した。

財務計画
この分野では次の研究が含まれる。

1.キャッシュ・フロー分析
2.会社モデル
3.計量経済モデル

キャッシュ・フロー分析は,確率的なキャッシュ・フローの正味現在価値の期待値を推定するためのサンプリング実験を含んでいる。多くの会社モデルは ,決定論的, 離散的事象のシミュレーションであり,長期の経営戦略案を比較するのに使われる計量経済モデルは連続的シミュレーションであり,その時間間隔は一定で,変数は代数方程式や差分方程式によってモデル化される。

環境・生態系研究
この分野の代表的な応用には,次の研究が含まれる

1.食料コントロール
2.環境汚染コントロール
3. エネルギー・フロー
4.海洋資源
5.農業
6.昆虫コントロール

重工業地帯におけるカドミ ウム汚染の研究を例示する。インディアナ州北西端にある60平方マイルの土地に,大気中や水中に大量のカドミウムを出す数百個所の汚染源が見つかった。次の質問に対する回答が求められた。 (1)大気中の放出の特性と水中の放出の特性はどのように異なるだろうか。(2) 都市構造によって沈澱したカドミウムの特性は何か (3)下水処理施設の沈澱物にあるカドミウムは,工場からの流出によるよりも 都市構造からの雨水の流出によるのか。 (4)正常な大気にするにはどのような政策が有用であるか。

この地帯のカドミウムの流出を記述するために,連続系シミュレーション・モデルが使用された離散系・連続系の混合モデルは,離散的に発生する降雨事象のもとで都市構造における様々なカドミウム 量を調査するのに利用された。さらに,そのモデルは,得られた流出量を研究するのに使用された都市の沈澱物のカドミウム量を減らすために,定期的な街路清掃のような,いろいろな政策案が混合モデルを使って評価された。

健康保護システム
この分野におけるシミュレーションの応用は,近年急速に増大している 次のも のが含まれる。

1.在庫管理
2.病院計画
3.人員計画
4. マテリアル・ハンドリング

代表的な応用例として,大病院の診察室における患者の流れの管理がある。 医 者と看護婦は急がしくないときから,大変重労働で混雑したときを持つ状況の下で働いている。病院の管理者は現存する作業を崩壊したり,あまり資本投下を要しないような問題の解決法を探している。複雑な待ち行列シミュレーションが,観測したネックをもとにして医者の増員計画や患者のスケジュール管理の効果を評価するために使用された。この研究の成果として,医者の増員なしにネックを取り除く患者のスケジュール管理が採用された。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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