コラム・特集

10.1  シミュレーション・モデリング

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第10章 コンピュータ・シミュレーション

10.1  シミュレーション・モデリング

公企業や私企業で働いているIE技術者は,絶えず規模や複雑さが拡大するという問題に直面しており,経営工学やシステム分析の手法は,それらの問題を解決するのにますます重要な役割を演じている。過去30年にわたる電子計算機の進歩によって,これらの手法は急速に発展しており,特にシミュレーションは,複雑なシステムを分析するのに,もっとも強力で広範囲に使われる手法の1つとして発展している。コンピュータ・シミュレーション・モデルは,次の4つのレベルで使うことが可能である。

・システムや問題を定義するための説明用ツール
・重要な要素,成分,論点を決定するための分析用ツール
・提案された解を総合し評価するための評価用ツール
・将来の開発を計画する予測用ツール

この章は現実のシステムで生ずる問題を効果的なシミュレ ーション・モデリングを使って解決できるように読者を導く。以下のトピックスについて述べる(1)プロジェクトに対し適切なモデリング・アプローチとシミュレーション言語の選択,(2)妥当な確率分布の選定,(3)提案されたモデルの評価,(4)望ましい情報を得るための実験結果の分析これらの議論を進めるために,最初にシミュレーション・プロセスの全体像について述べる。

シミュレーションの定義
広義な意味において ,コンピュータ・シミ ュレーションは,現実システムの数学的論理モデルを設計し,コンピュータを用いて実験するプロセスである。かくしてシミュレーションはモデルに関する妥当な実験の計画と実行と同様に,モデル・ビルディングのプロセスを含んでいる。これらの実験は,システムを描写するための推定を行う シミュレ ーションは設計,手続き分析,そして性能評価のために使用できる。

シミュレーション・モデリングにおいて,システムはコンピュータで処理可能な言語で記述できると仮定する 「システム状態の記述」は重要な概念である。もしシステ ムが状態や条件を表わす変数によって特性化できるならば,変数値の変化によってシステム状態の動きはシミュ レ ート される。かくしてシミュレート実験により,時間 の経過につれてダイナミックな行動をするモデルが観察できる。インプットの性質によって,観察されるアウトプットのプロセスは決定的か確率的かのどちらかになる。また1つのシステム状態の変化は連続的か離散的に生ずる。

モデル・ビルディング
モデルはシステムを記述したものである。モデルの有用性はシステムを記述し,設計し,分析するときに理解できるモデル・ビルディングは複雑なプロセスで,ほとんど芸術の分野である。システムのモデリングは次の場合に容易にできる。(1)物理法則が利用可能である,(2) グラフィックな表現ができる,(3)システムのインプット , 要素,そしてアウトプットの変化が意味をもつ。

複雑で大規模なシステムのモデリングは,次の理由で物理システムのモデリングより困難である。(1)基本的な法則はあまり利用できない,(2)表現するのが困難な多数の要因を含む,(3)計数化できない戦略的なインプットが要求される,(4)確率的な要因は重要である,そして(5)人間の行う意思決定の多くは,そのようなシステムでなされるシミュレーション・アプローチには以上のように多くの困難な点がある。

モデルはシステムの記述であるが,またシステムの抽象でもあるモデルの作成が成功するかどうかは,重要な要素とそれらの要素間の関係をいかに決めるかに依存するシミュレーション・モデルは理想的には問題解決に利用される。シミュレーションは総合的なモデルでも部分的なモデルでも柔軟性をもっている。

シミュレーション研究のステップ
シミュレーション・モデルを開発するにはまず簡単なモデルから開始する。その開発過程は次のような段階をふむ。

1.問題の定式化  客観的な言葉を使って問題を定義する

2.モデル・ビルディング  問題の定式化に従って数学的な論理関係を使ってシステムを抽象化する

3.データ収集 データを識別し,特性化し,そして収集する

4.モデルのプログラム化 コンピュータ処理ができるようにする。

5.モデルの検証  プログラムにエラーがないかテストする

6.妥当性の検討 シミュレーション・モデルが現実世界を表わしているかどうかを検討する

7.実験計画 実験条件を設定する

8.実験 出力値を得るためにシミュレーション・ モデルを実行する

9.結果の分析 シミュレーションによる出力結果を検定したり,問題の解答案を提出する

10.実施とドクメンテーション  シミュレーションから得られる結果を実施し,モデルやその利用法をドクメントする。

問題の定式化に始まって, ドクメンテーションに終わ るというステップで,シミュレーションの開発が手順通 りに遂行されることはまれである。シミュレーション計画の中には間違ってスタートしたり,後に棄てなければらない誤まった仮定をたてたり,問題を再定式化したりして,モデルの評価と再設計が何度も繰り返される。これがかなり行われることによって代替案を評価し,意思決定過程を高めることのできるシミュレーション・モデルが作成される。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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