コラム・特集

9.2 定義,用語および手法

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第9章 制御モデル

9.2 定義,用語および手法

制御の基礎用語として通常用いられる自動制御は,自己修正またはフィードバック制御である。すなわち,ある制御装置は,制御されるプロセスのある出力変数を連続的に監視し ,この出力をある決められた希望値と比較することである。それで計測器は出力の実際値と希望値とを比較する。この比較から得られる結果的な誤差は,制御されている装置の,制御状況に対する必要な修正を計算するために用いられる。これらの結果として,出力変数値は,その希望されているレベルに調整され,そこに維持される。このタイプの制御はサーボ機構として知られている。

この時点において,読者は制御のサーボ機構のタイプを,通常のオン・オフ制御のタイプと区別すべきである。オン・オフ制御は,装置を制御するために誤差の存在だけに依存し,その誤差の大きさには関係していない。例えば,家庭の冷蔵庫または暖房炉の温度制御はオン・オフタイプの操作の1つの例である。しかし ,ここでは, 制御のサーボ機構に関心がある。というのは,それは複雑な現代的生産装置の真の自動操業の核心である。

サーボ機構の制御系の設計と使用には,制御ループのすべての要素を知る必要がある。例えば,図表13.9.1において ,技術者は図示されたおのおのの装置の動的応答または完全な操作特性を知らねばならない。すなわち(1)実際の出力を感知し測定する 指示計またはサンプラ,(2)誤差検出と意思決定論理を含む修正計算機とからなるコントローラー,(3)必要な調整を伝え作用させる制御バルブと接続ラインの伝達特性,および(4)制御されるプロセスまたはシステムであるプラントの操作特性.動的応答または操作特性は,数学的表現たとえば,プロセスの過渡特性または操作条件の変更の期間に対して微分方程式で表わされるこのことから,プロセスの伝達関数(微分方程式の他のより簡単な表現)を求めることができるか,または同じ効果の実験的または経験的表現を得ることができる。

制御技術者は,便宜上すべての装置をいわゆるブロック線図にまとめてしまうことが多い。このような線図は図表13.9.1に示されているセンサーからコントロー ラーまでの長い通信線(代表的に空気力または水力)による時間遅れやプロセスにおける他の遅れによって,プロセスの出力変数における変化が,コントローラーに到達するまでにある時間が経過する。コントローラーが変化を知ったとき,それは希望されている変数値と比較され,制御バルブをどれぐらい大きく,またどの方向に位置づけなければならないかを計算し,次にバルブを開く修正を行う。もちろん,これらの決定を行いバルブ位置を正しくするためにはある時間が必要である。

出力変数値についてのバルブ修正の効果が,出力それ自身に到達し,効果が現われるまでにある時間が経過するであろう。これは最初の修正があまりに小さいか,またはあまりに大き過ぎたかをコントローラーが知りうるということである。この時点で,それはさらに修正し, ある時間後に他の出力変化を生じさせる。この第2番目の修正の結果が観測され,第3番目の修正がなされるというように行われる。

実際のプロセスの値が,最終的にオペレーターによって期待されている値にバランスされるまで,行動の閉じた連鎖においてコントローラーとプロセスとを通じて, 測定,比較,計算および修正行動という一連が繰り返し行われる。出力の目標レベルにおける外乱や修正がときどきあるので,一連の制御動作は決して終わらない。このタイプの制御はフィードバック制御と名づけられている。図表13.9.1は,この閉じた一連の制御動作の方向とパスとを示している。閉ループの概念は自動制御を十分に理解するための基礎である。

前述の例は,用いられている基本原理を説明しているのであるが,ほとんどの工業的プロセスまたは他の複雑 な装置の自動制御の実際の達成は,次の理由によって非常に困難である。すなわち,応答の速度,多変数間の相互作用,非線形性,応答の限界またはいま述べられた簡単なプロセスに対して要求されているもの以上の制御の高精度,または高性能のみならず実在する他の困難さによる。

ここで定義したように,自動プロセス制御は,常にフィードバックの使用を意味している。これは制御計器が温度,圧力または合成物のような制御対象のプロセスのある出力変数を連続的に監視し,この出力を,前に設定された目標値,すなわち制御される変数の基準,または設定値と考えられているものと比較することを意味している比較によって示されている誤差は,出力変数値をその目標値に調整し,そこに維持するために,プロセス制御バルブまたは他の最終制御要素の設定に対する修正を計算するために用いられる。

もし設定値が変更されると,プロセスを新しい操業レベルにもってくるための制御系の応答は,サーボ機構または自己修正装置によるものである。プロセス操業中の外乱の存在に対して,前に設定された操業レベルにプロ セスを保持する行動は, レギュレーターと名づけられている。

自動制御系の計測
典型的な工業プラントにおける変数は,制御系のセンサー要素によって測定される流量,レベル,温度,組成 , 位置および他のパラメータなどで非常に多様である。このような装置は,考られている変数の物理的,電気的または他の情報的性質を測定し,それを用いて問題の変数値の電気的,機械的または流体的信号を作り出す。それで,信号は工業プラントにおいて用いられる標準信号レベルの1つに変換するために,変換器によって得られる (流体的システムでは3~15psig,電気システムでは1~4,4~20,10~50mAまたは0~5V)。もし制御系がデジタル化されているならは,この時点で信号はまたデジタル化される。重要なセンサーおよび変換技術は文献に詳細に述べられている。

多くのタイプのセンサーによって得られた信号は,測定される変数の連続的表現であり,アナログ信号と呼ばれている。アナログ信号がアナログーデジタル変換器によって操作されたとき,それは一連のビットまたはオン・オフ信号になり ,これはデジタル信号と呼ばれる。変換されるアナログ信号を適正に表現するために,常に数ビットが考慮されなければならない (典型的に10から12ビット)。前述したように,測定された変数の信号は ,その変数に対する目標レベ ルまたは設定値とコントローラーで比較される設定値はプラント・オペレーターまたは上位の制御系によって決定される。これらの値の間の誤差 (差異)は ,コントローラーの出力に対する修正を計算するためにコントローラーによって用いられ,その出力はシステムのパラメータのバルブ、または他の作動器に送られる。

コントローラー(アナログまたはデジタ ル)がその修正を計算する代表的アルゴリズムは次のようなものである :3つのタイプのゲインすなわち比例,微分,積分ゲインと呼ばれる関係によって,入力を出力に変換する要素からシステムが成り立っていると仮定しよう。このときコントローラーの出力は

出力=Kpen+n∑i=1 KR^ei+Kd(en-en-1)+K1

ここで , KP,KD ,KR=コントローラーの比例,微分,積分ゲイン

K1=比例制 御だけをゆるすための中位置の常数(すなわち′Ko=0,KR =0)
n=コントローラーによって得られた最後のサンプル
n-1=最後のサンプルの一段前

積分ゲイン項に対する和は,最後のサンプルnまでのサンプリングの繰り返しのすべてにわたって行われる。誤差enは次のように計算される。

en=±(設定値-制御される変数値)

誤差項におけるプラスまたはマイナス符号の使用は,その制御ループに依存して選択される。

通常の制御方法
アナログ制御自動制御の理論的および実際的な研究は,1950年代中頃まで図表13.9.1に類似な単一ループの研究に原則的に限定されていた。これらの研究は,1930年代に研究者によって最初に提案された方法の連続的な発展であり,これに続く20年間,これらの方法が用いられ重要な成果を得た。安定性の研究(図表13.9.2)およびフィードバック制御系の設計方法は,ここで特に重要であった。これらは古典的制御の文献において,広範囲にわたって検討されている。すなわち,根軌跡法,ボード 線図,ナイキスト線図およびニコルス線図である。

上記のすべての仕事は,アナログ 制御系すなわち,要求される行動をシミュレーションする機械的または電気 的装置を含んでいた。それらは同じ環境において,人間のオペレーターが取るような行動の類似物であった。この時期に大量に製作することが可能であった機械的・電気的装置の複雑さに対する限界と,この時期の制御システム理論の限界のために,これらの大部分のシステムは, 図表13.9.1におけるような単一ループを制御するために構成されていた。

計算機制御上述したように,デジタル計算機は,初期のアナログ装置によって課せられていた,複雑さについての限界を超える潜在能力があるために,デジタル計算機が開発されるとすぐに,研究者はこれを自動制御系に用いることを考えはじめた。

このように,1960年代後半における能力のある,安い, 信頼性のあるデジタル計算機の発展にともなって,これらの装置は制御系にとって都合のよい要素になった。デジタル計算機は ,大量の変数の設定値を容易に処理することができる。すなわち,計算機プログラムは,意思決定に対する必要な高度に複雑な計算を定義し作成することができるまた ,多くのセンサーは同時に信号を計算機に伝えることができる。計算機技術の進歩は階層的分散制御系の設計を可能にしている。ここで,計算機間の信頼できる通信は機械,ステーション,部門または遠隔のプラントのネットワークの制御のために用いられる。これと並行して制御モデルは,より複雑な制御系を表現し,解析し設計するために発達し進んだものになった。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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