コラム・特集

8.4 統計的な手法

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第8章 時系列予測

8.4 統計的な手法

「自己回帰―移動平均(ARMA: auto regressive moving average)」 モデルと呼ばれるものについて述べる。このモデルでは経験的なモデルとは異なり,特定のモデルが観測値の集団に当てはめられたのち,統計的検定が展開され,ある有意水準のもとでモデルが受け入れられるか棄却されるかを決めることができる。ここではこの手法の概要のみを紹介する。

ARMAモデル
ここで述べようとする定常モデルは,

と 表わされる 。ここに,Z′ =Zr~μ ,pと 9は 正の整数, φ ,(自己回帰の係数)と θ ,(移動平均の係教)は定数,そしてUrは自色雑音である。このモデルはARMA (ρ ,q)と表わされ,(μ やσ みを含めると )ρ+q+2個の推定すべき定数がある pまたはqが 0であれば, 自己回帰または移動平均のすべての係数は0となる。なお,自己回帰や移動平均の係数となる値には制紡ちる。

たとえば,前に示したように,ρ=1で q=0のとき, ztが定常であるためには lφi|は1以下でなければならな い。特定のパラメータをもつモデルでは,z′ の自己相関関数が計算できる。ρ +9く2の場合のパラメータの種種の値についての自己相関関数の図が得られている。それ以外の場合については,自己相関関数を求めるためのコンピュータ・プログラムが用意されている。したがって,データから自己相関関数を求めて図示したのち、ARMAモデルによって生成されたデータについての規準となる。各種の自己相関関数と比較すれば,同様な自己相関関数になるモデルという観点から,適当なρ やqの値を選ぶことができる。自己回帰や移動平均の係数の推定については簡単に述べる。このような比較を行う場合の問題点は,データの誤差が自己相関関教の図をかく乱して分かりにくくしてしまい,その結果比較が困難になる とである観測値が非定常過程からのものであるようにみえる場合,このような比較はできない。したがって, 自己相関関数の図が定常過程からのもののようになるまで ,観測値の差分をとる必要がある。その場合は,モデルの次のクラスを考えることにつながる。

ARIMAモデル
時系列ωtは系列 ztのd階差分をとって得られるものとする。 すなわち,

 wr=▽^dZt,  d>o, r=d+1, d+2,…       (32)

とおく,こ こに,dはωtを定常にするのに必要な最小の差分の次数である。それより , ωtはARMA過程でモデル化できる 財に関するモデルが選定されれば,原系列は式13.2.1を「和分」することにより得られる。そして 「自己回帰一移動平均― 累積形(ARIMA: autoregressive integrated moving average)モデル」と呼ばれ , ARIMA(p,d,q)と表現される。たとえば , d=1 であれば,式13.2.1を和分して(和をとって),

zt=z1+t∑i=2 Wi, t=2,3,・・・・・ (33)

 

が得られる。なお ,式(32)を和分するにはd個の定数を必要とするが,それにはデータ系列の最初のd個の観測値が用いられる ω tが定常でも ,ztはその分散がtとともに増加するために非定常である。
多項式に従う。傾向要素をもつ拡張指数平滑モデルとあるARIMAモデルとが,等価であることが明らかにされている。

ARIMAモデルの同定と推定
予測問題にARIMAモデルが使われて成功を収めてい ることには,コンピュータのソフトウエアを利用できる点に大きな原因がある。それは利用者に対して分析のための初期モデルを選定し,必要な諸計算を行う。その手順の概略は次のとおりである。

まず,そのままのデータや差分をとったデータの図,さらにそれらの自己相関関数の図が作ら れる.予測を行う者がρやqの値を決めやすいように,偏自己相関関数の図も通られる。ある遅れに対する自己相関関数や偏自己相関関数の値が、その標本誤差と暮部て有意かどうか判定するために、それら推定値の標準偏差を与える式が使われる モデルが選定されれば,パ ラメータの最大 推定値とその信頼区間が計算される そし て,当 てはめ たモデルを用いて残差の時系列が求められ,そ の自己相 関や偏自己相関の図が作られる 残差系列が自色雑音で あるという 仮説が,あ る 有意水準のもとで受け入れられれば,選定されたモデルはデータに適したものと考えられる有意水準は求められるうえ,予測を行う 者がさらに良いモデルがあると考えた場合には,さ らに手順を繰 り返せばよい。次のクラスのモデルを選ぶ場合,残差系 列の自己相関関数や偏自己相関関数に大きな値のものがあれば,新しくρや9の値を決める際に有力な目安とな る 予測を行う者がそのモデルで満足し た場合,観測値 の集合のうちの,どの時点からでも予測値の計算を始めることができ,その値が図示される。それゆえ,比較のためにモデルにデータを当てはめてみることも 可能であ る 予測値の信頼区間も求められる満足できるモデルが見つからない場合は,データを変換して新しい系列を作ることがしばしば役に立つデータの対数変換は有効な変換としてしばしば用いられる。

ソフトウエアを十分に使いこなすには,予測を行う者の練習が必要であり,既知のモデルで作られたサンプル・データ系列が用意されている。現実に適用する場合は, 少なくとも50から100個のデータを使うべきである。そ れは,ソフトウエアに組み込まれている数値計算の多くは“大きな”サンプルのデータに対して正確であることによる。

季節性モデル
ARIMAモデルは,BoxとJenkinsにより季節変動をもつ系列にも適用できる ように拡張され,「乗法形モデル」と呼ばれている。BをB^dZt=z・t-dと 定義される後退演算子とする d=1の場合はβ ziと表わす。したがって,乗法形モデ ルの一般式は,

と表わされる。ここに,φ0,T0 ,θ0お よび△0は -1であり,sは季節変動の周期である。それゆえ,式13.4.1はデータの季節性による非定常性を除去するために, 1ではなくs時点の間隔でデータの差分を行うわけである。この乗法形モデルは,ARIMAモデルで使われるソフトウ エアで解析できるが,非常に多くの自己相関関数や偏自己相関関数の組合せが存在しうるので,モ デル作成はより困難である。

その他の統計的モデル
多重時系列の理論が展開されていて,コンピュータのソフトウエアも用意されている。多変量のモデル作成 や予測では,状態空間によるアプローチがなされている。 計量経済学でのモデル作成では最小2乗法の手法が使われる。一般に,予測において多重時系列を用いることは,データ収集やモデル作成およびその維持に, 余分の費用がかかるのを惜しまないような重要な変数を予測する場合にのみ考えられる。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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