コラム・特集

7.15 シミュレーションによる待ち行列解析

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第7章 待ち行列の理論

7.15 シミュレーションによる待ち行列解析

これまでは待ち行列現象を解析するのに解析的アプロ ーチを考えてきた到着間隔やサービス時間はあらかじめ定められた分布,たとえば指数分布やアーラン分布などに従うものと仮定してきた。また,一般分布もある場合には考えに入れてきた。しかし解析的アプローチでは, 多くの複雑な待ち行列モデルを扱うのは困難であり,使用することができない。そのため,これに代わる別の方 法としてシミュレーションによる手法が示されている。

(シミュレーションの詳細は13部 10章を参照されたい )。シミュレーションによる待ち行列問題の解析を示すために,簡単な例を用いよう。この例は,ある工場の工具庫におけるもので,サービス人が1人の場合の待ち行列である。

例13.7.4 あるマシン・ショップの工具庫では,作業者たちが1人の係員から工具を受け取るためにやってくる。 到着間隔の分布とサービス時間分布は知られていない。

工具庫は午前8時にオープンし,午前9時45分まで開いているとしよう。もしサービス設備(係員)が空いていたら,到着者 (作業者)は設備の中へ入っていくサービス設備がふさがっていたなら,到着者は待ち行列の中に加わる 待ち行列の規律は先着順である到着の様子とサービス時間を100週にわたって調査した。そのデータは図表13.7.713.7.8に示されている。

この工具庫の作業を,図表13.7.713.7.8に示されている到着間隔とサービス時間の分布を用いてシミュレーションすることができる。到着とサービス時間のために, 標準乱数表から乱数を抜き出す最初の2桁だけを用いることにする。第1番目の乱数が15であったとしよう。

到着間隔分布の累積確率を調べると,0.15が3分と4分の間にあることが分かる。これから,第1番目の到着は到着間隔が4分であるとされる同様にして次々と到着間隔とサービス時間のシミュレーションを行っていく。

図表13.7.9は作業の1周期を完全にシミュレーションした結果を示している この図表より,全到着数20のもとで,客と係員の平均待ち時間が次のように求まる。

客の行列中の平均待時間= 全到着の待時間合計/ 周期全体での到着数
=20/20=1.00分

係員の利用率= 周期の時間ー係員の遊休時間=周期の時間(100)
=(105-12)/105(100)=89%

客がシステム内で費やした平均時間=客の平均サ―ビス時間+客の行列中での平均待時間=93/20+1=5.65分

上の計算で,平均サービス時間は465分であることが分かる。しかし,図表13.7.8に与えられている 経験分布から計算した平均サービス時間は5分である。この差異はサンプル・サイズ が小さいために生じている シミュレーションの中での繰り返じ数を大きくすれば,平均サービス時間は現実の5分により近くなるだろう待ち時間の費用を考えることによって,もっとサービス人を増すべきかどうかが判定される。

複雑な現実の待ち行列現象に対して,シミュレーションによる方法は混雑を緩和するための意思決定に大いに役立つものである。たいていの場合,解析的アプローチは不可能なので,これが唯一の手段となる。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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