コラム・特集

5.2 統計的推測

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第5章 仮説検定と統計的推測

5.2 統計的推測

各(すべての)確率変数は1つの(ただ1つの)確率分布をもつ。この分布はまた唯一のものである。ほとんどの場合,統計学ではこのような確率分布を取り扱う。 経営工学の技術者は,ある確率現象に関する実際的な知識に興味があり,その確率変数の確率分布を用いるか , あるいは,対象としている確率変数に関連するであろう。他の変数の確率分布を用いて,それらの知識を見出すことに興味をもっている。

統計学の基礎において,確率密度関数は「母数(parameter)」 とよばれる定数によって定義されることを学んでいる。これるの母数は確率現象の位置,型 ,可変性の測度として確率変数を特徴づけるために用いられる。 最も重要なものは平均μと分散σ^2とである。平均は分布の中心(物理学では,ある物質の重心に類似している) を示すもので,分散は分布の広がり(範囲)(慣性モーメントに類似している)を示すものである。したがって,われわれが確率変数の平均や分散について述べる場合,その確率変数の確率的行動を特徴づける,統計的な母数 (定数)の使用について言及することになる。P(x)が離散型確率変数の確率分布を表わし,またƒ(x)が連続型確率変数の確率密度関数を表わすものとして、

μ=∑xp(x)

または

μ=∫xƒ(x)dx

となる。関与する母数は確率密度関数の関数形に包含されていて,それらは簡単に調べられる。また、

σ^2=∑(x-μ)^2・P(x)

または、

σ^2=∫(x-μ)^2・ƒ(x)dx

である。自然界に発生する多くの確率変数は,パラメータや統計的な特性値μ,σ 2のみが異なるが,基本的にはいくつかの一般的分布形にしたがうことが数理統計学によって示されている。これら分布のいくつかは,次のような特定の名でよばれている:

二項分布,ベータ分布,一様分布,超幾何分布,正規分布,コーシー分布,ポアソン分布, χ 2分布,レイリー分布,幾何分布,スチューデントのt分布,マックスウエル分布,負の二項分布,F分布,ワイブル分布,ガンマ分布,指数分布,アーラン分布。

確率および統計学の分野が,なぜ一つの学問分野となっているかを見ることは困難なことではないし,また, ほとんどすべての学問分野において,なぜ統計学の実用 的知識を必要とするのかを見ることも困難なことではない。確率的行動(確率変数)はすべての行動局面に存在している。

ある確率現象に興味がある場合,最初に必要となることは,その現象を測定する何らかの手段を開発することである。その手段を開発して,確率現象に対するいくつかの観測値の収集を行う.統計学はn個の観測値(1つの標本(sample))を選択し,対象としている確率変数に関して,有効な情報が得られるように,標本を操作するための手法や技法の開発を取り扱っている。通常,これらの情報は,確率分布あるいは確率変数の関数の研究から得られる。明らかに,確率分布の平均と分散とは有効な情報をもたらす。

とがある。これらの量は本質的には理論的なものではなく,n個の観測値の集合から計算されるものであることに注意されたい。

μとσ^2とが,対象としている確率変数の平均と分散であるとして,Xはμの最良点推定であり,S2はσ^2の最良点推定であることが数学的に証明されている。 通常, μとσ^2との性質は全く 知られておらず,その真の(未知の) 値に関する推測を導き出すために統計量が用いられる。 平均と分散に関する知識は非常に重要であるので,統計学では,それらを研究するための手法や技法が,広範囲にわたって取り扱われている。以後,本章では次の2つの基本的な目標が取り扱われる。

1.μ ゃσ^2の ある仮定された値が,通常の操作,あるいは仮定された条件のもとで合理的であるか否かを見るための検定の方法。

2 μ (σ^2)と x(s^2)と を用いて,与えられた信頼性の測度のもとで,推定すべき母数がある区間に含まれていることを言明する方法。たとえば,I1からI2までの区間がμの真の値を含むということに95%の信頼度があるなどという。

第1の目標は,統計的仮説検定を用いて論じられ,第2の目標は信頼区間の推定を生じさせる。

統計的手法は,2つあるいはそれ以上の確率分布の平均や分散の差を推定したり,仮説に関する仮定を検定したりするためにも存在する。これらの手法は,単一母集団に関する推定や,検定のために開発された手法の自然な拡張である。

すべての統計的方法は,対象とする確率現象の%個の観測値からなる標本をその基礎としている。このような方法では,(大きさπの)無作為標本(random sample) は,起こり得る結果の「代表的なも の(representative)」であることが要求されている。このため,標本が無作為標本であることを確かなものとすることに関して,多くのことが述べられている。現在行われている多くの統計 計算は,データが代表的なものでないために有効なものとはなっていない

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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