コラム・特集

3.7 決定情報

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第3章 決定原理と分析

3.7 決定情報

意思決定者に何らかの情報が知らされると,事象に関連した彼の主観確率は変化する。このような情報は, 外部の情報源や経営情報システムから得られる。情報 によって主観確率が変わるので,行動や獲得する価値も変化する。情報を得たことによって得られた価値の増加分が,情報の価値である。情報源が正確であり, ただ1つの事象だけが生起することを知らされるとき, これを「完全情報」であるという。明らかに完全情報の価値は,期待リグレットの最小値である。完全情報は, もし存在していても,めったに得られない。しかしある事象と相関があるが,完全に相関があるわけではない何らかの兆候Zが得られることはよくある。

標本における不良率や,経済指標,その他多くのも のが事象についての兆候である。そして次のベイズ方程式によって,観測されたZの値が与えられると,事象を表わす変数yについての主観確率が決定できる。

P(ylz)=[P(y)|[ P(z|y)] [ΣyP(y)P(z|y)]              (3)

式(3)の 右辺の括弧の部分は,おのおの次のような特定の名前が付けられている。

1.事前主観確率(zの知識が与えられていないときの,主観確率).
2.条件付確率
3.剰余または正規化因子式(3)の左辺は,事後主観確率であり,得られた情報z を考慮に入れている。

例13.3.5 塗装装置には,故障(e1)と正常(e2) の2つの状態があり,行動には,自 動運転を続行 (α1) 手動操作への切換(a2),または装置を止めて修理(a3)の3つ がある。この決定問題の評価結果は次のようになっている。

期待価値原理の下では,行動α2が選ばれる。完全情報が得られる場合,もし事象e1が予測されるとe3を選び , e2ならば a1 を選ぶ,その時の期待価値は ,

E(Ui)=0.4(7)+0.6(10)=8.8

である。完全情報が得られるときの期待価値は,情報がないときに比べて22だけ高い。これが完全情報の価値である。

次に,完全情報は得られないが,装置からの10個の任意標本から欠陥塗装が発見されたという,装置の故障情報が得られた場合を考えよう。装置は停止されたときに, 故障していたかどうかが調べられる停止される前にサンプルが取られており,故障していた場合とそうでない場合のサンプリングの結果は,次の表のとおりである。

これらのデータから 計算された条件付確率は,

p(z1|e1)=1/3,p(z1|e2)=65/70,p(z2|e1)
=2/3,p(z2|e2)=5/70

である。e1とe2の事前主観確率はそれぞれ,0.4と0.6であるので,情報が与えら れたときのベイズの方程式から計算された事後主観確率は,次のようになる。

P(e1|z1)=0.4[1/3]/[0.4(1/3)+0.6(65/70)=0.193

P(e1|z2)=0.4[2/3]/[0.4(2/3)+0.6(5/70)=0.862

P(e2|z1)=1-0.1930=0.807

P(e2|z2)=1-0.862=0.138

 各サンプリングにおけるこれらの事後主観確率から計算された各行動の期待価値は、

である 。こ の結果からサンプリング条件がz1であるときは ,行動α1,z2のときは 行動α3を選ぶべきことが分かる。z1の生起確率は,

P(z1)=p(z1e1)P(e1)+P(z1e2)P(e2)

P(z1)=(1/3)(0.193)+(65/70)(0.807)=0.8137

であるので,この計画の期待価値は,

E[plan]=8.842(0.8137)+6.724(1-0.8137)=8.4474

である。情報がない場合の期待価値は6.6であり, 期待価値の差(価値の単位で1.85)はこの情報の価値を表わしており,情報を得るために支払うことのできる最大の費用である。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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