コラム・特集

3.6 連続的意思決定の定式化と原理

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第3章 決定原理と分析

3.6 連続的意思決定の定式化と原理

前節で定式化された意思決定における行動と事象の集合は,ともに任意の順序の離散的な場合であった。そして決定原理は,そのような場合に合うように考えられていた。行動や事象が異なる多くの次元をもつ場合は,離散的な定式化が有効であるが,行動の集合や事象の集合が単一次元上で変化するような場合もある。典型的な例としては,購入材料の量や設計上の安全率等のように, 行動の集合が連続的であるかほぼ連続的である場合である。事象の集合もまた,在庫品の回転率や新製品ライン との競合の度合,プロセス中のロット・アウトの割合の変動,操業の生産性などのように連続的または不連続的に変化する場合もある。行動や事象の集合が現実には離散的値として得られていても,これらのうちの大部分は連続的であるとして扱ったほうが便利であったり,もともとその集合が連続的であり忠実に分析する必要があるので,連続値として扱う場合がある。どのような理由から連続値として扱われても,連続的な定式化は,行動や事象をもとに行われる。

連続的な定式化でも,主観確率,結果,および結果の評価についての同様の定式化が必要である。例えば,連続事象を変数yで表わし,事象集合はe(y )と表わす。行動の集合が連続的ならば,主観確率や評価結果および 行動評価はおのおのP (x,y),u〔 θ (x ,y )〕,U (ω) となる。行動や事象が離散的な場合と連続的な場合について,4つのケースを図表13.3.3に示す。

連続ランダム変数として表わされた現象によって, 評価結果の極値(最大値または最小値)が,計算によって,または1次元探索法によって得られる。マキシ ミン価値やミ ニマックス・リグレットの決定原理では, υ(ω )上の行動評価 Uiを決定するために,評価情報の最大値か最小値が必要である。ラプラス原理とリスク原理では,評価結果の関数の積分,主観確率と評価結果の関数との積,または主観確率と結果の関数における偏差の2乗との積の積分が必要である。どの原理の場合も,いったん連続的な定式化ができると離散的な場合と同様である。事象が連続変数y,または離散的な一連の値として与えられると,主観確率または事象の確率は,図表13.3.3に示すようにッの関数として表される。13.2章の最後の図表13.2.14や 13.2.15のように,分析上は標準の確率関数を用いて主観確率を記述したほうが便利 な場合もある。図表13.2.14や 13.2.15は ,これらの関数の統計量を計算するための算式と標準関数の関数形を示している。主観確率の関数P (y)の統計量がデータから,あるいは主観的に推定できるならば,これらの統計量を対応する統計式に代入して主観確率の関数の係数を決定する。この手順は「モーメント法によるパラメータ推定」として知られており,例13.3.4に示す。

事象が1つの確率変数yで表わされるときは,評価結果も同様に表わされなければならない。評価結果がyの線形関数ならば〔 例えばU(y)=α +by〕 ,期待価値 (または費用)は yの期待値による価値または費用である。また価値や費用の分散は線形関数の傾きの2乗とyの分散の積に等しい。このことは,次の価値か費用の統計量を得るために,yの統計量を線形関数のyに代入すればよいことから,「確実同値」としてよく知られている。

E(Ui)=∫(a+b)p(y)dy=a+bE(y)

しかし ,確実同値は2次関数〔 例えばUi(y)=α + by+cy^2〕の場合には,必ずしも 成立しない。

E[ui]=∫(a+by+cy^2)P(y)dy=a+bE(y)+C[E8y)^2+V(y)]

なぜなら ば,E〔Ui〕を計算するためにyの2つの統計量が必要であるからである。 価値か費用の関数u〔 θ i,(y)〕 またはu〔 θ (x,y)〕の期待値と分散は

E[Ui]=∫u〔 θ i,(y)〕P(y)dy

V[ui]=∫{u〔 θ i,(y)ーE(Ui)}^2P(y)dy

である。準分散は積分の範囲を調整することによってⅤ[Ui ]から得られる。yを等しい増分で変化させたときの数値例が計算できる。例13.3.4では,SpetzlerやStael von Holstein の数値積分法で,価値または費用の統計量の推定値が計算されている。

例13.3.4 ここでは,事象yをロット不良率によって定義し,確率変数y(0≦y≦1)が,ベータ確率密度関数で表わされるとする。品質管理部での記録では,不良率の期待値が10%でそのパーセントの分散が0.00177である。これら2つの統計量をそれぞれ平均と分散の各式に代入すると

0.10=a/(a+b)      0.00177=ab/[(a+b)^2(a+b+1)]

となり ,α はだいたい5で b~45となる。その結果,主観確率の関数は

P(y)=49!/$!44!・Y^4(1-y)^44=9534420y^2・(1-y)^44

となる。行動a1の費用低減額は,2次関数θ1(y)=20+3y-0.05y^2として表わされ,この行動の費用低減額の期待値は,

E[Ui]=∫(20+3y-0.05y^2)[9534420y^2(1-y)^44]dy

である。この積分は,Simpson法でyの増分を0.05すると,次のように近似値が得られる。

費用低減額の期待値は(0.05)(1232.36)/3= 20.5393である。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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