コラム・特集

3.2 意思決定の定式化

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第3章 決定原理と分析

3.2 意思決定の定式化

こ れから述べる意思決定の定式化は,多分意思決定における最も重要な部分であり,創造力と正しい判断力とを必要とする部分でもある。このことは,以下の理論的かつ実際的議論において明らかになるだろう 。

理論的には,すべての決定は,つぎの5つの部分から成り立っている。

1.行動または,考慮中の行動の代替案。
2.起こり得て,しかも結果に影響を与える事象。
3.各行動に対して,これらの事象が多分起こるであろうと思われる主観確率。
4.行動と事象の結合に対応した結果。
5.結果および行動の評価。

1と2は ,それぞれ,決定において制御できるものと,制御できないものをもっている。ただ1つの行動のみが, 必ず選択されるという前提によって,決定の範囲内における受容可能な一連の行動を列挙することができる。一般に理論上は,このようにしてすべての行動の一覧表が作成できることを仮定している。

Aを行動全体の集合とし, α1,α2,… … … ,αi ,… αnを任意の順に列挙された個々の行動であるとしよう。一般に事象は,その中のただ 1つのみが確実に生起する離散的事象の集合として表現される。事象がそのように列挙されたとき,おのおのの事象は排反的であるといわれ,この集合にはすべての事象を含んでいる。事象の集合はEと表わされ,おのおのの事象はe1,e2,… … ,ej,一 ,emと表わされる。現実には,行動や事象は離散的であるが,AかEまたは両方が,連続変数として記述されたほうが,当面している決定に対して適切である場合も存在する。行動と事象のおのおのの組合せに対応して主観確率と結果 (要素3, 4)が存在する。主観確率とは,その行動が選ばれたならば,生起する事象の生起確率の推定値(客観的であろうと主観的であろうと――)である。主観確率は,通常ある行動に起因した各事象について主観的に推定される。Pijは行動αiが選ばれたときに,事象ejが生起する主観確率を表わす。理論的には,主観確率も確率と同様に扱われ,事象は排反的(ただ1つのみが生起する)で,どれかが必ず生起するので,確率が主観的に推定されても,客観的に測定されても

n∑(j=1)・Pij=1

となる。結果も事象と行動のおのおのの組合せに対応している。そして結果とは,もしその行動が選ばれ,その事象が生起するならば起こるであろう結果の推定値である。当面している決定に関連した行動に対応して事象が生起する。その事象に起因したすべての事柄が結果である。

ある行動や事象に対する結果は, θ ijと表わされる。観測結果には,経済上のことや,誘因上のこと,物理的なことなど,意思決定者に関心のあるすべての事項を包含している。

決定の最後の要素は評価である。そして評価には, 2つの重要な演算がある。第1の演算は,ある行動と事象の結果の評価を,意思決定者,または,意思決定主体(たとえば企業)の結果に対する評価数値に変換することである。

一般には,結果の評価尺度として費用かまたは利益が使用され,経済的評価が行われる。評価の第2の演算は,いくつかのまたはすべての行動による結果の評価を,結合し全体の行動評価にすることである。行動に対する結果の評価を統合するための方法論は,意思決定の原理によって異なっている.そ のため,行動の比較には,意思決定者の目的が反映される。これらの原理については後で議論される。結果の評価は,ここでは記号的にu (θij),ま たは,簡単に uijと表わし,行動の評価は,uiと表わす。

意思決定の理論は,前述の意思決定要素への分解とともに,これらの要素を完全な意思決定構造に再構成する方法が必要である。2つの構成形式が一般に用いられている。図表13.3.1.aに行動の後に事象が続く順序が樹形図で示されている。一方,樹形図は計算向きの簡潔な形をしていないので,図表13.3.1bに示すような行列表現がよく用いられる。

例13.3.1は典型的な意思決定状況における定式化を示している。意思決定者の究極の目的は,リストされた行動の中から1つの行動を選択することである。そのため彼は,結果の評価uijや主観確率Pijを基にした行動全体の評価を導き出さなければならない。

例13.3.1  5つの生産方式が,行動α1,…… ,α5として考慮されており,こ れらの方法のオプションとして α6がある。 また5つの異なった販売水準が,事象e1,… , e5として予測されている。各行動に対する次の費用削減額(千ドル/年)と,主観確率の推定値が次表のように表わされている。ここでの決定は,生産方式の1つを選択することである。

 

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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