コラム・特集

2.6 理論的分布

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第2章 確率の概念


2.6 理論的分布

平均値,標準偏差,分散についての説明において,用いられた諸式および例は,すべて経験的分布に関するものであった。理論的確率分布に対しても,同様な物指しがある。X,S,S2は,標本データから計算される統計値であるが,理論的確率分布の,これらと同様な性質を表わすμ ,σ,σ2がある。これらの両者の比較が図表13.2.13に示される。

基本的な理論式は次のとおりである。

μ=E(X)=ΣXƒ(x)               (離散的の場合 )
μ =E(X)=∫xƒ(x)・dx         (連続的の場合)
σ^2=V(X)=Σx^2ƒ(x)-μ^2      (離散的の場合 )
σ^2=Kχ )=」「 :χ 2rCX)dχ ― μ 2
σ=√ 2 (連続的の場合)

確率分布は非常に多種にわたるが,その中で普通に用いられるものは,ほんのわずかである。そのうち最もよく用いられるものを,その分布関数,パラメータと共に図表13.2.14および図表13.2.15に示してある。

正規確率分布 標本測定値の多くは,中央値や平均値のまわりに集中する傾向がある。ある制御プロセスにおいて,度数分布またはヒストグラムを平滑化することによって,一般的なベル形の曲線が作りうるということがよく知られている。このベル形曲線は,「ガウス分布」または「正規分布」と呼ばれる(図表13.2.16参照)。

あるヒストグラム がベル形曲線に近似しているならば,その母集団からとられた標本は,普通正規分布をなすと考えられる。正規分布は最もよく使われる統計モデルである。 正規分布は,その平均値に関して対称である。 これは,2つのパラメータ,すなわち平均μ,標準偏差σを設定することによって正確に定義される。したがって,これらのパラメーターの1つまたは両方を変化すると,異なる正規分布が定義される。この曲線の基線は,平均値から両側に無限遠に伸びる。正規分布は,多くの産業や技術上の観測値の母集団の仮定された分布である。

図表13.2.16に示すように,理論的な正規分布についての面積が,平均値の両側にそれぞれ3つの部分,計6つの部分に分けられている.各面積は,基線の幅で,標準偏差に相当する。観測値が正規分布をなしているならば,その997%は,平均値から±3×(標準偏差)以内に存在する。

図表13.2.16に示した曲線は,普通,「標準正規分布 曲線」といわれる 。基線に沿う値は,標準変量Zの分布を表わしている。

この値は,任意の,正規分布の確率変量の,その平均値からの偏差を,その標準偏差σの倍数として現わしている。これを式で示すと

Z=X-μ/σ(平均0,分散1)

この簡単な,変換された確率変量は,次の望ましい性質をもっている。

1.すべての測定単位は相殺され,無次元値である。
2.確率変量が小さくて,平均値を中心とする99.7% の範囲に入るならば,Zの値は±3以内になる。
3.任意の正規確率変数Xは,常にそれに対応するZの値に換算できるから,累積確率の表1つだけあればよい。

確率分布に相当する面積が確率を示していることを前に述べた。ある正規分布について,確率を決定しようと思えば,Zと,図表13.2.17に示すような正規分布の面 積に関する表とを用いる。

例13.2.12 ピストンのリングの仕上がり内径が,平均4,500 cm,標準偏差0.005 cmであるとすると内径が4,510 cmを超える確率を求めよう。

与えられているものは,
μ=4.500 cm
σ=0.005 cm
Z=(4.510 cm-4.500 cm) /0.005 cm =0.01 /0.005=2.00

ゆえに, 内径が4,510 cmを超える確率=P(Z>200)

正規分布の面積の表から P(Z>200)=0.0228
この解は図表13.2.18に図示される。斜線の面積は求めている確率の値を示している。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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