コラム・特集

2.5 経験的分布

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第2章 確率の概念

2.5 経験的分布

経験的分布は,統計的実験の結果から得られたデータをまとめて得られるも のである。種々の表やグラフが,分析に有意義なようにデータを表示するために用いられる。

経験的なデータに関する用語として最もよく用いられるものは,「相対度数分布」および「相対累積度数分布」である。相対度数分布はPDFに似ており,それをグラフに示したものを「ヒストグラム」と呼ぶ。相対累積度数分布はPDFに似ていて,「オージィブ」(ogive)と呼ぶ(これらの形式にデータをまとめるのに必要な手順については,Blank,WalpleおよびMyersによる文献を参照されたい)。 図表13.2.10に示される度数表のデータは,機械の故障に対する修理所要時間を表わしており,この場合,時間はほぼ1/10時間までの精度で測られ,保守運転における115枚の修理伝票のランダム抽出のデータが用いられている。

図表13.2.11は,以上に対応するヒストグラムを表わしており,また図表13.2.12は,累積度数すなわちオージィブを示している。

多くの応用において,一度グラフ表示が決定されると,表示された相対度数や確率分布の型を,理論的なPDF やCDFによって表わすことができる。経験的分布や理論的分布の応用において,それらの性質を記述したり, 説明したりするのに用いられる分布特性の一般的な測定用の物指しがある。これらの物指しの1つは,観察値が密集し,測定対象の大きさを性格づけるような中心の傾向や位置についてのものである。一般に用いられる中心の傾向についての物指しは,算術平均,メジアン,モードである。次に第2の物指しは,離散や変動の状況を示すもので,観測値の間の変化性を測るものである。変動を記述するのに用いられる物指しは,分散,標準偏差および範囲である。これらの物指しについての議論は以下のとおりである。

中心傾向の物指し
これには, 3つの物指し,すなわち平均値,メジアン, モードがある。これらは,ある実験から得られるすべてのデータを代表するのに用いられる単一の値である。メジアンは,その値の上下に50%ずつの度数が存在するような値である。モードは,最も頻繁に現われる観測値である。 算術平均,平均値,期待値は,中心傾向の最もよく用いられる物指しである。経験的でも理論的でも,分布の平均値は,その値に関してデータが均衡を保つような中心となる値である。 経験上あるいはランダムな標本データに対する平均値は,次のようにして計算される。

一 χ=∑Xi/n

Xiは,すべてのX1すなわちi=1,2,…,nについて加え,観測回数nで割られている。データが,図表13.2.10の度数表のように与えられているときは,計算式は次のようになる。

一 χ=∑ƒiXi/n

ここで ,n =Σ・i=1・ ƒiである。

 

変動や離散の物指し
度数分布およびそれのヒストグラムは,それらのデータの一般的な変化のパターンを記述している。これらの特性と同様のものを,単一の物指しで表わすこともできる。最も普通に用いられる離散状況を示す物指しは範囲,標準偏差,分散である。

「範囲」Rは,単に,データの最大値から最小値を差し引いたもので,次式で示される。

R=XH―XL

ここで,XH :Xの最大値,XL:Xの最小値

範囲は,標本が少なく,データが度数表として整理さ れていないときに用いられる。範囲は,品質管理への応用において,かなり用いられている。 離散状況の記述に最もよく用いられている物指しは, 「標準偏差」(Sで示す)である。これは,数学的には,次のように定義される。

S=√∑^n(Xi-一 χ)^2/n-1

ここで,nは標本数である。 上式は,計算が容易になるように,次の形でも表わされる。

S=√n∑^n・X^2-(∑^n・Xi)^2/n(n-1)

データが度数表の形式で与えられているときには, 標準偏差は次式のようになる。

S=√n∑^κ・ƒ1X^2-(∑^κ・ƒiXi)^2/n(n-1)

ここで,κは度数表にあるXの各値の数である。

機械の故障の例(例13.2.4)においては,Sは次のようにして求められる

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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