コラム・特集

1.2 線形代数および行列

IEハンドブック
第13部 IE技術者の定量的方法論

第1章 IE技術者数学基礎

 

1.2 線形代数および行列

行列
「 行列」は ,数字を長方形に並べたものと定義さ れている 。行列は ,アルファベットの大文字で,またその要素は小文字でそれぞれ表わされる。Lをある行列,αijを第i行,第j列の要素とすると

はm×n行である。

例13.1.1次の行列の次数は(2,3)である。

演算と性質
1.m×n行列は,(m, n )次であるという。
2.2つの行列AおよびBは,両方の次数が等しく,かつ,すべてのiおよびjについてαij =bijであるときに限り,等しい。
3.行列は,相互に同じ次数であれば,加えたり,減じたりできる。このとき,こ れらの行列は,加法または減法に適合しているという。いま,行列AおよびBを与えるとき ,
C=A± B
は ,
cij =aij± bij
となる要素を持つ行列であると定義される。

4.行列の加法においては ,次のよう に交換法則が成 り 立つ。

A+B = B+A

5.行列の加法においては,次のように結合法則が成り立つ。

A+(B+C)= (A+B)+C=A+B+C

6.行列Aと,あるスカラー量々を与えると,スカラー乗法は次のように定義される。

KA=|| kaij ||

すなわち,行列kAのij要素は,スカラー量たと,行列Aの要素αijとの積である。

7.スカラー乗法では,次のように交換法則が成り立つ。

kA=Ak

8.2つの行列AおよびBの積Cは,Aの列の数と,Bの行の数とが等しいときに限り定義される。このとき,AおよびBは,乗法に対して適合しているという。積 C は

C=AB

となり,次式のような 要素cijを持つ。

cij=nΣ k=1 aikbkj, i=1…,m and j=1,….r

ここで,行列Aの次数は(m,n),行列Bの次数は(n,r)であり ,このとき,行列Cの 次数は(m,r)となる。

9.行列の乗法については,必ずしも 交換法則は成り立たない。すなわち,一般に、

AB≠ BA

10.行列の乗法については結合法則が成り立つ。

A(BC)=(AB)C=ABC

11.行列の乗法については分配法則が成り立つ。

A(B+C)=AB+AC

12.行列Aの行と列とを入れ換えることによって得られる。行列の転置をATと書く。ATが (m,n)次なら ば , ATは (n,m )次である。すなわち

13.行列AおよびBにおいて加法が成り立つならば ,

(A+B)T=AT+BT

14.行列AおよびBにおいて乗法が成り立つならば

(AB)T=BTAT

15.A=ATであるならば, 行列Aは対称であるという。

16.A=-ATであるならば,行列Aは非対称であるという。

17.(n,n)次の行列は,π次の正方行列であるという。

18.スカラー行列は,対角線上に,左上から右下までのすべての要素がスカラーκである正方行列である。すなわち、

A が ,スカラーκをもつスカラー行列であるならば、

AB=kB

19.Iで表わされる単位行列は,κ=1のスカラー行列である。単位行列の性質は,次のとおりである。

ImA=AIn=A
IT=I
ここで, ImおよびInは,それぞれm次および π次の単位行列である。

20.単位行列の要素

I=‖δ ii‖

は,「クロネッカ ーのデルタ」と呼ばれる。すなわち,

21.0によって表わされる零行列は,その要素がすべ て零である。零行列の性質は次のようになる。

A+0=0+A=A
A-A=0
A0=0A=0

行列式
任意の正方行列Aが与えられるとき ,「行列式」 |A| が 存在する。Aが2次ならば,

となり、行列は次のようになる。
|A|=α11α22~a21a12

行列Aにおける 要素αij の余因子Aijは,Aの第i行と第j列とを取り去った行列の行列式(これを「小行列式」という)に,(-1)i+j を乗じたものと定義される。そこで,3次の正方行列については,その行列式は次のように計算される。

が与えられると,要素αijの余因子Aijを任意の行,たとえばi行について計算し,このAijに,そ れぞれに対応するαijを乗じて,これを加え合わせる。たとえば,第1行について、

この方法を「余因子展開」という。行列式|A| は,行列Aの任意の行あるいは列についての余因子展開によって計算することができる。任意のn次正方行列についても,その行列式|A| は ,Aの任意の行あるいは列についての余因子展開によって計算することができる。すなわ ち,任意のi行に対して、

|A|=n ∑ j=1 aijAij

ここで,Aijはn-1次の行列式であり,上記と同様の方法で計算される。すなわち,行列の次数が2次になるまで,n-1回の同様の計算を続けることが必要である。それから簡単な行列式(α11α22-a21α12)が計算される。

正則行列
行列Aは,その行列式が0であれば,特異であるといい,また0でないならば,正則であるという。

行列の階数
(m,n)次の行列4を考える。ここで,m<nである。このとき,Aにおいて, κ次の正則な正方小行列が少なくとも1つ存在し,かつ,κよりも大きい次数をもつすべての正方小行列が特異であるとき,Aは階数がκであるという。ゆえに,Aの中のすべての正方小行列の行列式を調べることによって,Aの階数を求めることができる。もしAが(m,n)次であるならば,そのときκ <mであり,かつκくπである。

正方行列の逆行列
Aをm次の正方行列とする。Aの逆行列Aは次のようなm次の正方行列である。

A-1A=AA-1=I

ここで,I はm次の単位行列である。また ,A-1はAが正則であるときに限り存在する。Aの逆行列は、

A-1=adj(A) / |A|

によって与えられる。ここで,adj(A)は行列Aの随伴行列といわれる。A-1は,|A|=0ときにのときは ,明らかなように定義されない。逆行列については,次のような性質がある。

1.Aがm次の正方行列であり,かつ対角線以外の要素が0であるときには

2.正方行列Aが対称であるとき、A-1もまた対称である。

3.Aが正則な正方行列であるとき、

(A-1)-1=A

 

4.Aが正則な正方行列であるとき、

(AT)-1=(A-1)T

5.AおよびBが同次の正則な正方行列であると

(AB)-1=B-1A-1

随伴行列
正方行列Aの随伴行列はadj(A)と書かれ,余因子の行列の転置として定義される。すなわち

随伴行列には次のような性質がある。

1.スカラー行列の随伴行列は,またスカラー行列である。

2.Aが対称行列ならば ,adi(A)もまた対称行列である 。

3.4がm次の正方行列であるならば,

A [adj(A)]=|A| I
A〔 adj(A)]=[adj(A)]A

4.Aおよびβ が正則行列であるならば,

adj(AB)=adj(B)×adj(A)

5.Aがm次の正方行列であるならば,

adj(A)=|A|m-1

ベクトル
I行またはI列からなる行列を「ベクトル」という。

Xはn次元列ベクトルとすると、
ただし、xiは実数である。ベクトルは(n,1)次の行列であるから、行列について前述の加減法および乗法についてのすべての性質が適用される。

ベクト ルの線形結合
X1,X2,・・・Xm がπ次元ベクトル ,またα1,α2,・・・・ , αmがスカラ ーであるとき,線形結合,

xm+1=α1 X1+α2X2+… ・+αmxm

は ,またn次元ベクトルである。

ベクトルの大きさ原点を0とすると

このとき,ベクトルXの 大きさ‖x‖ は 次式によって与えられる。

ここで,平方根は正の値のみをとる。

ベクトル間の角
X1,X2をn次元ベクトルとする。x1とx2との角θは次式で与えられる。

cos θ=0ならばθ =90° となり,x1と×2とは直交しているという。

例13.1.10

ベクトル間の距離
X1とX2とが共にn次元ベクトルであるとき ,x1とx2との 距離はベクトル x1-x2の大きさとして定義され, 次式のように表わされる。

 llX1~X2‖ = √(x1-x2)T(x1-x2)

連立一次方程式
Aを,与えられた係数αiJからなる(m,n)次の行列,またbを既知の定数からなるn次元ベクト ルとすると ,

Ax=b

は,π 個の未知数をもつn個の一次方程式からなる1組の連立方程式を表わす。

m=nとなる特殊な場合には,その解は,|A|≠ 0の場合に,簡単に ,
x=A-1b

A≠ 0であって,Aが正方行列であれば,クラーメ ルの公式によって次のようにXが求められる。

Xi=|Ai| / |A|

ただし ,Aiは, 行列Aの第i列をベクトルbで置き換えることによって得られる行列である。 n個の未知数をもつn元の連立方程式を解くための他 の方法として,「ガウス計算法」と呼ばれるものがある。方程式の組が次のように与えられる。

ここで,α11≠ 0(Aの各列は,a11≠ 0となるように常に並べ変えられる)。 第1式をα11で割り,これを用いて,残りの第2式~第n式からx1を消去する。 これによって次の方程式群が得られる。

xn =κn が解である。この結果を (n-1)番 目の方程式 に代入し,xn-1について解く。 この手順をx1に対する解が見付かるまで繰り返す。

いまn 個の未知数をもつn個の方程式からなる連立方 程式においてm<nであるとすると ,こ の場合,任意の 値をとる(n-m)個のxjの値が存在する。

この場合 , (n-m)個のxiの値を一定値に定めて,残 りのn個の xiの値を求めることが必要である。もしも ,こ のようにして定められたxiの値が零となるときには ,この場合の連立方程式の解を「基底解」という 。 例13.1.12 次の連立方程式をガウス計算法によって解け。

2X1+6X2-X3=4
3X1-2X2-X3=1
5X1+9X2-2X3=12

第1の方程式に1/2をかけ,新しい第1の方程式に-3をかけ,それからそれを第2の方程式に加える。これによって次の各方程式が得られる。

X1+3X2-1/2X3=2
-11χ2+1/2X3=-5
5X1+9X2-2X3=12

新しい第1の方程式に-5をかけ,それからそれを第3の方程式に加えると 次のようになる。

x1+3χ2-l /2X3=2
-11χ2+1/2X3=-5
-6χ2+1/2χ3=2

次に,新しい第2の方程式に-1/11をかけ,それから,その結果に6をかけ,それを変形された第3の方程式に加える。これによって変形された各方程式が次のように得られる。

X1+3X2-1/2X3=2
X2-1/22X3=5/11
5X3-104

この変形された第3の方程式に1/5をかけてX3=104/5を得る。この結果を変形された第2の方程式に代入して、

X2-1/22(104/5)=5/11
x2=5/11+104/110=50/110+104/110=154/110

これからのX2,X3の解を、変形された第一の方程式に代入して、

X1+2-462/110+104/10-220/110+1144/110+902/110

これらの解が,初めの連立方程式を満足することは容易に証明できる。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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