コラム・特集

7.5 0ISのモデル化

IEハンドブック
第12部 コンピュータと情報処理システム

第7章 オフィス・オートメーション

7.5 0ISのモデル化

公式の情報伝達ラインと,公式のワークステーション の環境下に開発されるOISは ,正確なモデルに従う必要がある。OISをモデル化する利点はいくつかある。

第1に,公式な作業方法でOISを記述すれば,完璧性 や一貫性をチェックする 材料になる。
第2に,妥当性のあるOISモデルは,システムの標準的で不変的な資料となる。
第3に,そのモデルは,さらに異なった多くの分析にも 用いること ができる。例えば,事務改善の専門 家は,OISモ デルをシステムの性能を予測するために用いるかもし れないし ,内部統制問題に携わる 会計士は , 統制構造や処理構造の分析に用いるかもしれない。
第4に,管理者が,OISモデルを,しっかりした十分に統制された。効率的なものであると確信すれば,OIS実施の際に,そのモデルに従う保証を求めるであろう。オフィスの複雑なすべてのケースを問題にすると,このような分析を手作業で行うのは不可能である,必要なことは,これらのモデル化のプロセスなのである。

情報制御ネット(Information Control Net)
情報制御ネット(ICN)は ,オフィス情報の流れを 分析し,記述するために,ゼ ロックスPARCが開発したモデルである。HICNモデルは,オフィスをレポジ トリに格納された情報をアクセスし,それを更新するようなアクティビティ の集合とし て定義する。可能な,アクティビティの実行順序は ,「先行順序条件」により定義される。先行順序条件は,あるアクティビティの直後のアクティビティ を指定するという,単純なルールに基づいている。1つのアクティビティの実行が終了すると, その直後のアクティビティの中の1つが実行できる。ほとんどのオフィス・データの流れを表わすモデルと同様 に,あるアクティビティは,必ずしも直前のアクティビティが終了してただちに実行される必要はない。ワーク・ステーションの作業者が手一杯であったり,ワーク・ステーションにいなかったりすれば,そのアクティビティ は一時的に保留される 。

ここに示すオフィス・モデルは,処理環境について次のような 基本的見解を持っ ている。オフィスは取引志向であり,各種の取引を処理するのに必要なアクティビティは,多くの取引が並行して行われていても ,並行処理を考慮することなしに記述できる。このモデルは,あるタイプの取引に対する,予想されるすべての処理を表現するように設計されている。

ICNは,アクティビ ティおよびレポジトリの集合で定義された図形として表現される。ICNダイアグラムにおいて,長方形はレ ポジトリを表わし,三角形は一時的レポジトリを表わす。ラベル付の円はアクティビティを意味し,小さな未記入の円は条件分岐(選択ノード) を表わす。アクティビティに接続している実線は先行順序条件を表わし,破線はレポジトリヘのアクセスまた は更新を表わす。小さな円は一連のアクティビ ティが始まる(終る)ことを表わす。

図表12.7.4は (購買システムの)ICNの例である。

例では,アクティビティa1は ,各部門から の請求が到着することにより実行される。a1は単に請求の記録をとるだけである。a1が完了すると,a2が実行され,その結果,請求伝票が作成され,請求伝票レポジトリに格 納される。アクティビティa3は,購買注文書を作成する。a3に続く選択ノードa4は,a5またはa6のどちらが次に処理されるかの選択を行う。その選択は,請求された品物の在庫があるかないかによって決まる。在庫があるほうの枝には,0.75の確立が割り当てられている。 在庫がなかった場合,a6,a7,a8が購買注文書を確認し,承認をとるために他の作業者へ送ることを指示する。一方,a5は 在庫品に対する作業指示を行う。
これらのアクティビティは,単に漠然と定義しているだけであることに注意する必要がある。ICNの設計者は,操作上の複雑すぎる詳細事項によって,基本的な流れが不明確になることなしに情報の流れを説明できるので,漠然性というものにも利点があることを暗示している。

Ellisと Morrisは ,ICNモデルの分析と最適化を自動化する技法を開発した。 このICNモデルは,3種類のオフィス変換手段により,最適化することを意図している。すなわち,自動化,再編成,簡素化である。自動化変換は,人手により行われていたアクティビティを, 自 動化されたアクティビ ティで置換することである。再編成変換とは,並行処理等によって,モデルのある特性を高めるように,アクティビティの組み立てを変化させることである。簡素化交換とは,必要のないアクティビティを削除したり,情報伝達の負荷を小さくしたりすることにより, ICNを単純化するために用いられる。

図表12.7.5は 自動最適化変換を,図表12.7.4の購買システムに適用した結果得られたものである。図表12.7.4 のアクティビティa6およびa7は,図表12.7.5では,a3とa8の中で自 動化された。

OISコミュニケーション・システムは,この最終図を完成させるために用いられる。記録アクティビティa1を考慮して,請求伝票作成 アクティビティa2,との組み立てを変化させることに より,a4(在庫チェック)とa1との並行処理が可能になった。この変換は,再編成の概念によるものである。並行処理の主な利点は,トランザクションを実行する総時間を減少させることができる点である。カタログは,請求された品物の在庫がない場合にのみアクセスすればよいのだから,a3は,選択ノードa4の後に回してもよい。
a3とa8は,カタログをアクセスし,a8は,a3の直後のアクティビティであるから,a3によって得られるカタログ情報を,a8が使用する購買注文書と共に,一時的レポジトリPに格納してもよい。この変換により,カタログ・アクセスの競合を減らし,a8が,即座にカタログ情報を使えるようにする。これらの変換は,ファイル・アクセスの負荷を減らすもので,簡素化の例である。

ICNダイアグラムに,分岐の確率と,平均サービス時間を与えてやれば,1つのトランザクションを処理するのに要する時間の期待値を計算することができる。図表12.7.6は,条件を与えたダイアグラムの例である(簡単にするため,フ ァイ ルは省略してある)。

前後関係を表わす矢印には,分岐の確率を明示してあり,各アクティビティには,平均サービス時間Sを表示してある。例えば,a3のサービス時間が1.5分であり,a3終了後,a4 またはa5が処理される確率は,そ れぞれ0.3および0.7である。 このようにすれば,a3とa4または,a3とa5が完了するのに要するサービス時間の期待値は,15+03×5+07×10=10分となる。同様にしてわれわれは,グラフ全体のサービス時間の期待値を計算することができる。11行列表を用いれば,この計算は以下のようになる。

グラフのサービス時間の期待値=W〔 Σ(V π l)〕
ここで ,
Wi=Si
Vi=アクティビティiが処理される確率
πij=aiの次がaiとなる確率

この種の分析は,オフィス・モデルの特性を分析するのに有効である。モデルに並行処理を導入した場合の効果の測定や,個々の,あるいは全体の処理における,負荷や処理時間を得ること,さらにはシステム全体の効率を測定することが可能である。このような基本的な分析は,有効ではあるが限界がある。例えば,注文取引が,ある優先度をもって処理されるオフィスを考えてみる, 取引の優先度は,顧客の信用格付のような単一条件によるかもしれないが,購買量や顧客との過去の取引,現在の在庫水準等,より複雑な複合体条件によって決まるかもしれない。いま,季節的または散発的な取引に対しての到着率を,モデルに付加して複雑化してみる。すると, ある注文取引に要する合計時間値を計算することは,大変難しい。最近では,こ のようなモデルを分析するのに, シミュレーション技法が用いられる。

OISシミュレーション
システム・シミュレーションは,システムの性育しを測定するのに広く用いられている学際的な技法である。システムをシミュレートする能力は,システムをモデル化する能力と考えられる。IEerやORの専門家は,マシン・ネットワーク等のシステムを分析するツールとしてシミュレーションを用いる。会計調査者は,取 引処理の システムを研究するため,またはシステム設計において, 誤りを発見および修正することに対する効率を測定するため,シミュレーションを用いる。この種のシミュレーションの応用に共通な点は,システムの性能や,効用,負荷,処理能力や応答時間等を測定するのが目的であるということである。

シミュレーション・モデルは,システム手続の記述や, 待ちの方法,および,到着率,サ ービス時間,システム 資源要求等の属性の確率分布に従属する。自動化されたオフィスは,このようなシミュレートされるモデルに似ているので,オフィス設計者もまた,シミュレーションを設計ツールとして用いることができる。シミュレーショ ンを行うことによるボトルネックの発見や,ワーク・ステーションが有効利用されない可能性の発見は,オフィス設計者に,オフィスやワーク・ステーションの仕事の再編成に対する,鋭い洞察力を与えるであろう。全く同じ 作業負荷の下で動いている2つのシミュレーション・ モデルから得られた,統計的なシミュレーション結果は , 両モデルを比較,評価する測度を与えるであろう。

内部統制論理モデルーーTICOMIⅡ
どのようなOISにおいても,監査性,会計責任およびシステムの内部統制の保護が重要である。不正行為の見地からは,資産の割り当てミスを小さくするような内部統制条件を,満足する手続きが必要である。結果的には,すべてのOISは,法的制約に従うようになっている。有用な技術条件や,満たすのに都合の良い条件に加えて,どんなOISについても,設計上の重要な制約条件が課せられる。

事務手続(それが自動化されていても,いなくとも ) において,法的な制約は,OISが 満足しなければならない唯一の条件ではない。経営者は,ある限られた人間のみが,妥当な理由がある場合にのみ,会社の資産に関する情報を扱えるということを確証したいと思っている。文書処理を,手作業ではなく機械でやるようになると,内部統制を確証する難易度はさらに増してくる。これは,「コンピュータ犯罪」の増加によっても確かめられる。会社が複雑に,大きくなればなるほど監査を伝統的な方法で行うことはより因難になっていく。

法的な制約と,経営者の要望の両方を満足させるには, 拡張されたコンピュータ支援の監査が必要である。監査の自動化には,2つの利点がある。第1の利点は,精度, スピード,コストに関してである。第2の利点は,自動監査システムまたは内部統制システムとOISが,インターフェイスをとることにより,継続監査ができることである。

これは文献によれば理想的とされている。このように,OISは 法的制約をも満足し,経済的に内部統制を検証できるように,改革することもできる。

コンピュータ支援の内部統制システムの例として, TICOMⅡ があげられる。TICOMIは,人間の監査官が,内部統制が確実に行われているかどうかを検証するのと全く同じ ように処理する。分析能力は自動化されており,それゆえ,OISと効果的にインターフェイスをとることができる。OISとTICOM Iの結合によって,OISが ,内部統制の経営原則を破らないようにすることができる。 一般的に,従業員がOISを用いて文書処理をするとき,TICQM Iがその処理の結果どうなるかを吟味する。そしてTICOMⅡ は,その処理が内部統制に反していないかをチェックする。例えば,受取部門へ送られる 購買注文書には,数量のデータのみを書き込むのがよいと 考えられる。受取部門は,実際に仕入先から受け取った数量のみを記入すべきであり,購買注文書に載っている数量を写してはいけない。受取部門が,数量のデータ にアクセスしようとすると,TICOMⅡ は即座にチェックをして,内部統制の違反とし て禁止する。これは,内部統制違反の阻止にOISとTICOM Iを用いる例である。

TICOMⅡ によるモデル化
TICOMⅡ のモデル化のための手続きとは,監査官 が内部統制システムを記述し,評価するために用いる , フローチャートおよび報告手続を作成し,準 自動化する ことである。個人個人が行う課業を入力すればよい。ま た,フ ローチャート の代わりに,TICOMIモ デリン グ言語 16に よってもモデルは表現できる.そ のために すべきことは,ち ょうどフローチャートを作成するのが コンピュータ ・プログラムを組み上げるのと似ているよ うに,個人の課業をフローチャート化する作業と同じ手 続きで済む,TICOMⅡ モデリングの例は,図表12.7.7 に示してある。これは,文書処理を表わすフローチャー ト・ボックスと,TICOMⅡ モデリング言語との関係 を示している。こ の言語についての詳細および例題は , Bailyら の文献16でみることができる。この言語の特異な点は,図表12.7.7に示したように , WAIT表現式が組み込まれているところにある。

内部統制を記述するのに現在用いられているモデルには,フローの並行構造が多く含まれる。TICOMⅡ モデリン グの手続きにおいては,個々の課業は別々に記述され , 自動化アルゴリズムによって, 1つの完全なモデルに統 合される。個々の課業の連結は,WAIT表 現式によって決定される。図表12.7.7によれば,事務員1(Clerkl) は,請求書の承認を待っていることがわかる。この表現 により,コ ンピュータは,(承認された請求書の)TR ANSFER(送 達)は ,事務員1に対して行われることを認識する。このように,TRANSFERと WAIT の表現式をマッチングすることによって,個々の課業が 全体の内部統制モデル・システムと組み上がっていく.モデルがすべて継ぎ合わされると,次 に,TICOM Iは モデルの一貫性および完全性を分析する。各コマンドは正しい動作を遂行するかどうか,文書処理は実行可能であるかを確認する。例えば,購買注文書上の,仕入先という項目を変更するという指定に対して,TICOMⅡ は購買注文書に,実際にその項目が存在しているか を確かめる。第 2に,各WAIT表現式には,対応するTRANSFER表現式があるかどうかが確認される。最後に,各文書の定義は完璧かどうかがチェックされる。 一貫性と完全性のチェックは,監査官の仕事の中の重要な部分であるが,このように,モデルの自動組立てや初期テストを用いて,機械のアルゴリズムは容易に監査官を支援できる。

しかしながら,TICOMⅡシステムの主たる価値は, 内部統制モデルに関する問い合わせに対し,自動的に解答することにある。これは問合せ言語によって実行される。問合せ言語は,モデル設定時に定義した用語と属性によって表現される。このシステムが答えられる質問のタイプは,

(1)ある文書や資産の集合に,ある個人や部門 は,ア クセスできるか,
(2)あるコマンド の集合は,もう一方のコマンドの集合の前,あるいは後に置くことができるか,
(3)問合せ言語によって記述されたある種の状態は,全体のモデルにおいても成り立つか,―等のものである。

これらの質問で,現在,文献で論じられているような,ほとんどの内部統制問題に対応できる。これらの詳細は,Bailyらの文献で論じられている。TICOM Iについて,モ デル化の手続き,一貫性と完全性のチェックおよび,問合せ処理等に関することは 調査されたが,OISと のインターフェイスに関しては まだ研究不足である.手続きというのは,監査に関する内部統制の質問に答えられるように,TICOMⅡをプログラムすることである。そうすれば,文書処理に直面したとき,その処理はプログラムされた機密管理に対して,矛盾がないかどうかを確かめることができる。 このように,すべての文書処理は,許容条件を実際に満足していることを確認できる。TICOM Iの使用に当たって,もう1つの重要な使用法は,OISの設計に用いることである。OISの実施が決定されれば,TICOMⅡ モデリング言語でモデル化することができる。そのOISに対する適切な内部統制を,モデルによって評価することができる。もし, 会計原則の許容範囲を超えていることがわかれば,OISを改良するまで,付加的な機密保護を実施すればよい。 このようにTICOM Ⅱは,実施システムの安全性保証のみでなく,OISの設計ツールとしても 機能する。

会計原則は,すべての管理システムの重要な部分を形成する。OISでは,電子的な文書処理と,手作業によるそれを連結させるところに,十分な内部統制を確立することの困難さがある。そのような統制を検証するこ がTICOM Iの目的である。付け加えれば,TICOMⅡ は内部統制システムの欠陥を発見することにより, 設計ツールとしても使用することができる。最後に,TICOM Iは ,継続監査を行うために,OISとのインターフェイスをとることができる。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー