コラム・特集

7.2 オフィス・インフォメーション・シ ステム

IEハンドブック
第12部 コンピュータと情報処理システム

第7章 オフィス・オートメーション

7.2 オフィス・インフォメーション・シ ステム

実務環境へのコンピュータの導入に伴い。在庫管理,債務会計,債権会計,給与計算等の業務が,首尾よく自動化されてきている。

これによる利点は,
(1)迅速かつ正確な報告,
(2)大量データの効率的処理および格納,
(3)システムの高信頼性と一貫性,等があげられる。

しかし , 自動化には利点があるにもかかわらず,伝統的な事務作業は変わらないままであるところが多い。自動化OISの目的は,コンピュータの処理速度や精度,そして,絶対に間違えることのない記憶力を利用した,トータルなオフィス志向のシステムを事務作業者に与えることにより, 彼らの日常業務履行を助長することにある。

OISは ,情報処理システム(IPS),ワードプロ セッサー (WP),意思決定支援システム (DSS)等とはオフィスの人間を支援するのに必要な要素をすべて統合することを強調しているという点で異なる。これらのIPS,WP,DSSは,オフィス機能志向ではなく,事務作業の限られた一部分を対象にしている。事務作業 の基本機能は,テキストの編集,文書の準備作成およびファイリングに複写,単純な数値計算,意思伝達,情報分析およびその検証,等である。事務手続の観点に立つと,WPや,IPS,DSSは,単に,独立したOIS の一要素である。OISが持つ利点は,オフィスにおける人間と機械の,インターフェイスの複雑さを削減できることである。このインターフェイスが簡潔に保たれ,学び,使うことが容易でなければ,OISは,専門家以外には何の価値もないものになってしまうであろう。

OISを ,WP, IPSや DSSと比較して得られる2番目の利点は,OISが自動化されたとした場合,オフィスの構造が改善されることにある。オフィスの組織 は,事務作業者が,高度に相互影響的であり,自律的,併発的である業務を遂行するのに,便宜を図るように設計される。固定的なプログラムは柔軟性に欠け,相互影響的なシステムは,環境が変化することにより生じる仕事に対して,効果的ではない。

OISの将来性
前述しておけば,OISは ,事務作業を遂行するための設備を含んだ,統合されたコンピュータ・システムである。特にOAは,文書の準備作成,情報処理,意思決 定において,人間を支援する。OISによって処理される文書の種類は,メモ,手紙,報告書,等から,請求書や購買注文書のような,典型的なビジネスフォーム までである。これらの文書は,OISでは電子的に格納される。事務作業者がある操作を行うことにより格納された文書は,標準的頭書きや,個々の文書に適した字体により完成される。

事務作業者は,ワーク・ステーションを通してOIS と交流する。ワーク・ステーションは,オフィス志向の機器およびソフトウエアにより成り立っているプログラム可能なマイクロ・コンピュータである。ワーク・ステーションは,将来,事務作業者に,次のようなことを可能ならしめるであろう。すなわち,電子文書の読み書き,他のワーク・ステーションとの電子的な会話,データベー ス情報へのアクセス,そして,前もって決まっている仕事を,自動的に他のワーク・ステーションに行わせるような指示。

ワーク・ステーションにより,自動的に遂行される仕事の例としては,購買請求伝票に載っている品物が,在庫しているか,注文中であるのか,特注が必要か等を決定するため,在庫データベースを検索するといった例があげられる。請求書とデータベースから得られる情報を用いて,購買の注文書の空白を埋めることができる。他システムヘのアクセスにより,指図された状態での情報を作り出すことができる。こうしてできた完璧な購買注文書は,購買承認等の処理をするため,他のワーク・ステーションヘ伝送される。

電子文書や,伝統的なデータに加えて,OISは ,図形やグラフのようなビデオデータをもサポートするようになるであろう。グラフィック ・パッ ケージは,最近,利用可能となり,OISへと統合できる。音声認識は,OISの姿として,大変好ましいものであろう。というのも,一部の経営者には,ワーク・ステーションとの交流に,キーボードを用いることを好まず,事務作業者との意思伝達においても,口述して記録をとることを好む人がいるためである。現在,音声認識システムは,開発のほんの初期段階である。実験的な会話解釈システムであるHearsay Iは,約90%の精度で,1,000語の語彙を持ち,言葉を理解する。2キーボードに代替する他の ものとしては,タッチスクリーンとライトペンがあげられる 。

ワーク・ステーション間のコミュニケーションは,電子郵便によって,または電話回線やサテライト情報通信 網を利用した他の種類の電子信号により,たちどころに行われる。電子メイルシステムは,住所や,電話番号のような適当な情報を用いて運営される。メイルを送り,受け取る作業は,ワーク・ステーションの作業者が,ほんの少しの操作を行うだけで,自動的に行われる。各ワーク・ステーションには「メイルボックス」が用意され,その中味は要望があれば見ることができる。到着した郵便物をただちに知らせることも可能であり,「メイルボックス」が空でなければ点灯するインジケーターも取り付けられる。

OISの物的な構造は,数個のワーク・ステーションをサポートする,単一プロセッシング・ユニットのように 単純にもできれば,大型コンピュータのネットワーク網 のように複雑にもできる。いずれも,ワーク・ステーション群をサポートする。各ワーク・ステーションが他のワーク・ステーションやネットワーク処理装置と,どの程度 独立に操作できるかによって,ハードウエアの故障や休 止に対して,どれくらい対応できるかが決まる。各ワーク・ステーションは,ローカルなデータベースや目的データを,そして他のワーク・ステーションにとってはローカルな情報の,間接的アクセス機能を持つようになるであろう。OISの設計は,どんなデータベースが各ワーク・ステーションに対して有効であるか,また,どのようにしてその情報にアクセスし,使用するか,を決定することになるであろう。

各ワーク・ステーションでは,同時に複数の仕事を実行できる。事務作業者が,仕事の全部または一部を指示した結果,ワーク・ステーションが自動的に処理をすることは,十分に起こり得ることである。ワーク・ステー ションが,予期していなかった事態に直面すると,作業者にそれを伝え,次の指示を待つようになるであろう。

これに加えて,複数のワーク・ステーションが,1つのトランザクションを同時に処理することもあり得るであろう。例えば, 2人の管理者の承認が必要な購買注文 を考えてみる。承認を受ける準備ができると,注文書は同時に2人の管理者のワーク ・ステーションヘ届くであろう。管理者は購買を承認し,次の行動を起こすよう。

「待ちの状態」にOKを入力することもできるし,承認をしないことにより,購買をやめさせることもできる。重要な点は,この2つの承認処理は,必ずしも順番に行う必要がなく,同時にできることである。一方が承認しなかったのなら,その旨,もう一方に通知され,それに 応じて処理されれば良いのである。

シティバンクにおけるワーク・ステーション
1976年 にシティバンクに設置された12台 のマネジメン ト・ワーク・ステーション(MWSs)は ,顧客業務に必要なペーパーワークという,事務作業者にとっては厄介な問題を軽減することが主旨であった。 MWSシステムは,多くの理由から,OIS原型への興味ある導入として見ることができる。

第1に,これは実社会の実務環境下であること。
第2に,実務問題を解消するために設計されたこと。
第3に,エンド・ユーザーである業務作業者の考えを取り入れて,いくつかの実務を1つのシステムに統合したこと。

MWSシステムは,以下のものを供給することにより, 伝統的なペーパーワークの非効率部分の多くを軽減した。(1)内部書簡の自動化,(2)電子メイルシステム,(3)簡単な文書処理,(4)財務等の報告書処理。

MWSシステムは,以下のことが可能である。すなわち,ワード・プロセッシング,文書作成,編集およびファイリング,実務計画,カレンダー・メンテナンス, フォームの開発,原価―利益分析,財務報告,ハードコピー,他のワーク・ステーションヘの文書やメッセージの伝送。

各ワーク・ステーションは,PDP-8Aプロセッサー,2つのキーボード・ディスプレイ装置,インパクト・プリンターおよびフロッピィディスク装置からなっている。MWSは ,電話回線と接続され,管理者と秘書によって共有されている。MWSの機能は,移行による悪影響を最小にするため,手作業で行っていたことと大幅に変わらないように設計され,これにより,システムを受け入れやすくした。シティバンクは,MWSシステムの導入効果を測定するため,訓練中の秘書と管理者 を観察した。そして,システムを使うに当たって,秘書は,管理者よりも,より柔軟で,冒険心に富んでいると結論付けた。

シティバンクでは,伝統的な事務作業を自動化することによる主な利点として,管理,機密,コスト,生産性等の問題に効果があることと考えていた。電子ファイルは,機密性に優れ,容易に分割できるし,事故に対しても安全であると見られた。速やかなファイリング,オフィス情報の速やかな検索や,その他の機能は,生産性や顧客サービスを向上させた。同時に,これらの利点は,コスト的にも釣り合うと思われる。

しかし,MWSの限界は数多い。基本的な機密や制御メカニズムが頼っている部分は単純なものに違いない。効果的に使用する必要がある電子メイルシステムは,内部で作成された文書や書簡のみでなく,外部からのものも扱えるようにならなければならない。MWSの機能は,実務作業のすべての範囲を網羅するように,また,仕事を自動的に遂行させるようなプログラムをユーザーが組めるように,拡張されなければならない。しかし,ここで示したとおり,自動化されたオフィスは,このような基本的なものでさえも,実戦的であり,有益であり,OISの将来の方向性を示している 。

OIS:発展の方向
シティバンクの例で説明したように,OISはまだ開 発段階にある。OISを現実的にするためのほとんどの技術は,いまや可能となっているが,未解決な問題点も残っている。仕事が続く限り,OISは新しい評価や, 経験を組み入れながら発達するであろう。大部分の造形 的な仕事は,研究室で行われているので,OISの原型の実施状態を観察するのは有効である。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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