コラム・特集

6.6 設計プロセス

IEハンドブック
第12部 コンピュータと情報処理システム

第6章 活用される情報システム作り

6.6 設計プロセス

この節での議論は 一般にケース・スタディ中心になる。ここでは,要因だけを単独に取り上げる代わりに,要因間の関係の説明を試み,また,システムが構築されていくときの設計者とユーザーの間の関係に,焦点を当てていく。

設計プロセスの中で,以下のものが重要な論点となる。 組織構造,作業グループ,個々の人間に対するシステムのインパクトは何か。設計プロセスはどのように管理されたか 新しいシステムの受入れを,ユーザーはどのようにして動機づけられたか(文献〔20〕~〔25〕の引用.詳細略 )。

これらの研究で述べられている中で特に有用なモデルは,組織の形成に関するKolb-Frohmanによるアプローチである。このKolb-Frohmanモデルは,情報システムの開発のために特に構築されたものではないが,情報システムの開発に応用できる(図表12.6.4参照)。

このモデルは,変化をもたらす行為者と組織との関係に重点を置いている情報システムが産み出す変化ゆえに, 自覚しているか否かは別にして,システムの設計者は変化をもたらす行為者としての役割を果たしている。

このモデルは,連続するいくつかの段階から構成されている。第1段階は偵察段階で,設計者とユーザーのどちらの活動も,相互関係の不足で特徴づけられる。両者は互いに相手の動機を評価しようとする。参入の段階では,実施者(実施者=設計者と考えてよい)とユーザーとの初期の関係は,そのシステムとの原始的な接触,あるいはその利用をもたらすまでに拡大する 実施者は, 法的と言うより,むしろ心理的な意味での契約文書を作り始める。すなわち,プロジェクトの目標,利用できる資源,設計のやり方,最終的に得られる恩恵,設計者とユーザーとの関係の本質について,両者の合意が必要である。

診断段階では,情報システムをより詳細に定義することが目的である。実現可能性の検討結果が,こ の診断段階の典型的なアウトプットである。計画段階には,システムの技術的な仕様を詳細に展開することや,ユ ーザー と実施者との関係を明らかにすることが含まれる。

実行段階はプロジェクトのもっとも大きな部分を占める。この段階で,ユーザーとの関係が終了した後にも, そのシステムをユーザーが最終的に受け入れてくれることに,設計者は特に関心を払わねばならない。実行段階では,システムのユーザーにとって,実際の変化のプロセスが始まっている。システムの設計チームは,システムの仕様を発展させるために,ユーザーと協力して仕事を進める。

この分野の大多数の研究者たちは,設計がユーザー主導となる程度にまで大きく,設計プロセスにユーザーを関与させ,巻き込むことを考えている。ユーザーの意見を取り入れ,ユ ーザーを巻き込む理由は,それによってユーザーがよく訓練され,そのシステムの利用方法を熟知するようになるからである。設計に関与したので,ユー ザーが情報サービス部門に頼ることが少なくなる。また, そのようにして設計されたシステムはそれ自身,ユーザーがそのシステムに対する究極的な責任者であろう から, ユーザーにとってより良いシステムであろう。参加することはまた自我を高める。すなわち,ユーザーカシステムにより多くの係わり合いを持つと考えられる。

評価段階では,システムの開発プロセスの成果を正しく調べねばならない。また,評価は将来システムの計画作りにも貢献する。

実施の最終段階は終了段階であり,多分にもっとも重要な段階である。ここでの目的は,システムの設計者とユーザーとの間の一時的な関係であったものを,成功裏に終結させることである。ユ ーザーがそのシステムに対する心理的な所有権を意識したとき,情報システムの開発プロジェクトはもっとも成功した形で終わる。終了を設計の最終段階としてだけ考えるよりも,むしろ最初の偵察段階から開発プロセスの完全な終わりまで,連綿と常に終了段階のことを考えていなければならない。

Kolb-Frohmanモデルの各段階は,現実には互いに全く別個のものではない。むしろ,フィードバック・ループの意味と同様に,1つの段階から次の段階へ,そして開発プロセスの間に再び元に戻るように動く関係である。このモデルの主要な特徴は,焦点を設計プロセスに当て,システム設計それ自身だけでなく,設計者とユーザーとの関係への考察が重要であることに注意を向けさせた点にある。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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