コラム・特集

5.2 コンピュータの利用

IEハンドブック
第12部 コンピュータと情報処理システム

第5章 イングストリアル・エンジエアリングにおける情報処理システムとコンピュータ

5.2 コンピュータの利用

インダストリアル・エンジニアリングの発展
過去ずっと,マネジメントとインダストリアル・エンジニアの両方とも,インダストリアル・エンジニアリングの学問としての正確な境界を定義することは困難であった。品質管理,工場レイアウト,職務評価,ワーク・サンプリングと 作業測定,および時間標準といった伝統 的な分野において,イ ンダストリ アル ・エンジニアの役割に挑戦する人はほとんどなくなってきているといってもよいであろう。最近,システムズ・アナリシスおよびオペレーションズ・リサーチの分野に対して,その学問の科学的価値の回復が信じられている。インダス トリアル・エンジニアによるこれら2つの分野の採用によって,インダストリアル・エンジニアリングの専門職における尊ぶべき基礎に対する重要性が減じられるとい うことにはならない。即ち,インダストリアル・エンジニアはコンピュータ技術の助けを借りて,インダストリアル・エンジニアリングの基礎となる技法に対して,今でも重要な貢献をすることができる。今日の産業組織の複雑さにおいては,インダストリア ル・エンジニアは膨大な量の変数に対して,コンピュー タの助けなくして,直観力や経験の利用に多くの期待はできない。組織の機能の多くに関する,タ イムリーかつ 正確な情報への依存性のために,インダストリアル・エンジニアがコンピュータ・システムを最もよく使うユー ザーの一員になることを約束している。

新しいインダストリアル・エンジニアは,人間要素 , 物的貢献,および組織内の資源の有効活用に重要な新しい管理情報機能を統合するというユニークな機能について,特に責任を負わされているマネジメント・チームの一員としての役割をより的確に果たすべきである。

コンピュータ・アプリケーションの効果的な利用は, インダストリアル・エンジニアヘの一つの大きな挑戦である。コンピュータを効果的に利用するためには,情報 システム概念(12部 2章),解法のテクニック,および計 算ツール (12部 1,12部 2,13部 10章)に関する適切な知識を持つべきであり,そしてインダストリアル・エンジニアリングの様々な分野にコンピュータを応用することが可能となる。

方法論と解法のテクニック

方法論
インダストリアル・エンジニアリングの“方法論”は,単に目的の達成に対する活動の体系的な統合である。それは,与えられたいかなる時点においても,問題のすべての点に関して,できるだけ正確にわかるように,目的を設定し資源を割り当て,活動を組織する過程であり,あらかじめ決定された計画とスケジュールに従って,日の過程は,必要とされるものと,技術的に実行可能で実用的なものとの間のかけ橋を供給するものである。

方法論は,ツールおよび解を導き出すために使用される技法から区別される(この相違は,主に思想の違いにある。この2つは,実際の応用においては,分離することができない)。ツールと技法は,数学,確率統計,オペレーションズ・リ サーチ,モデリング,シミュレーション ,意思決定理論,およびその他の関係領域を含んでいる。個々の認知に価値のあるサポート・ツールはコンピュータである。コンピュータの能力と,コンピュータにより可能となるより進んだ分析技法を,システムの開発および実施の改善段階で使用される資源の管理に使用することができる。コンピュータをシステムの方法論と合体させると,中央制御および迅速かつ正確なデータ管理が可能となる。コンピュータの使用により,膨大な量のデータが迅速に処理でき,新しいアイデアの検証のためのシミュレーション・モデルの構築が可能となる。

システムの方法論の真に重要な機能は,関連する変数および それらの関係の選択,問題の構造化,基準の設定,および関連するリスクと不確実性の取り扱いである。コンピュータと数学的な技法の利用が不可能とすると,意思決定に対するこのアプローチは,非常に難しいものになる体系的なアプローチの使用に加えて,方法論は科学的な手順をとる。科学的手順の各ステッ プは,次のように まとめることができる。

1.問題の定式化
2.研究中のシステムを表わすモデルの構築
3.モデルから の解の導出
4.モデルと導き出した解の検証
5.解に関する制御手段の設定
6 解の実施

この方法論は多くの学問を含み,与えられた問題の解法に必要な知識の科学に基づいた本質をすべて含んでいる。

目的は,すべての有用な代替案から最も望ましい行動の方針を決定することである。その基礎となる方法は,システム全体(すべての重要な要因,人間と物質の両方) を考えることにより,問題を研究することであり,そしてオペレーションズ・リサーチの技法を用いて,結果として生じたモデル(通常は,数学的モデル)を分析することである。このように,基礎となるツールおよび技法 は,システムズ・アナリシス,およびオペレーションズ・リ サーチである。そして,長時間かつ複雑な計算が必要となることが多いので,コンピュータは常に使用される。

解法のテクニック

マネジメントに直面する問題は,組織構造の異なった部門から起こり,その内容が問題となる。この問題は組織の機能と同義であり,財務,人事,ロジスティックスといったような大規模なシステムに関係した問題,および研究開発(R&D),マーケティングといった小規模なシステムに関係した問題として分類される。マネジメントの困難さのすべてが,概説したカテゴリーに適切に分かれるという訳ではなく,多くはカテゴリー間にオ―バーラップする傾向があるということは明白である問題のいくつかは,構造全体に対して,密接な関係をもつ場合さえあるかもしれない。

これらのマネジメントの内容の問題の解に対して,科学的な知識を応用するといった職務を持つインダストリアル・エンジニアは ,これらの問題の大多数は1つもしくはそれ以上の基本的な構造,形式からなっているということが,経験から分かっている。われわれがほとんどのマネジメントの問題に分類が可能な形式は,在庫,割当て問題,待ち行列,順 序決定問題,発送問題,交替問題,競争問題,探索問題である。また,1つの形式または構造の問題は,他の形式の問題として定式化されるかもしれない。例えば,在庫問題のいくつかは,割当て問題または待ち行列の問題として定式化することができる。

問題が特定の形式として分類された後,特定の状況のモデルを開発することができる。記号モデルまたは数学モデルが,最も使用され好まれているモデルのタイプである。最も簡単でかつ経済的な方法で複雑な状況を表わすのを別として,数学モデルが問題を定量化し,解のより明確な理解を助けることができる。これらの開発したモデルから解を導き出すために,ある特定のツールや技法が応用される。

一般に,“技法”はマネジメント問題を解くための,ある特定の基本的なオペレーションの応用を意味している。解を導き出すのに必要な基礎となるオペレーションは,“ツール”として知られている。そして,さまざまな技法にいくつかのツールを見出すことができる。

問題の解法に利用される技法は,形式から決定論的な技法および確率論的な技法に分類できる。これら2つの技法の相違は,次のような点である。決定論的な技法は, 正しいと仮定できるデータを使用する。一方,確率論的な技法は,相対的な答を与えるために,確率および統計を応用するものである。これらすべての技法において詳細な研究が必要な場合,コンピュータが必要である。

インダストリアル・エンジニアに特に重要な技法およびツールについて,本節の残りに要約する。

数学的,確率,統計ツール
ー般に,決定論的な技 法は,幅広いグループの数学的ツールを利用している。例えば,線型計画法は主要なツールとして , 線型代数を利用している。データの行列表現および単位行列の使用により,シンプレックス法は,線型計画問題の解法に利用が可能である。図形的な線型 計画法の解法においては,連立方程式を解くのに代数学の使用も重要である。

確率論的な技法は,当然決定論的な技法よりも多く,確率,統計および確率分布に負っている。感度分析は,費用曲線における最小点を探すのに,大部分は微分を, この点からの変動を決定するために確率を, 最適点からの偏差を評価するために期待値を使用する。

モデリング,シミュレーション,最適化技法
まず最初に決定論的な技法がある。ここには,線型計画法,経済発注量(EOQ),経済的水準量,損益分岐点分析,改善曲線,クリティカル・パス・メソッド(CPM),時系列分析,動的計画法,次元分析,および記号論理が含まれる。確率論的技法には,発見的(ヒューリスティック)モデリング,感度分析, 意思決定理論,競合的モデリング,待ち行列理論, 統計的品質管理,PERT,モンテカルロ理論,行動モデリング,マルコフ過程,およびシミュレーションが含まれる。

もちろん,管理者の問題の解法に貢献するその他のモデリング,シミュレーションおよび最適化技法もある。

これらのツールや技法の利用できる知識は,インダストリアル・エンジニアにとって重要である。ほとんどの状況において,コンピュータの使用は,上で述べたさまさまなツールや技法の応用において,大きな助けになるだろう。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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