コラム・特集

2.3 組織的情報処理システム(Organizational IPS)

IEハンドブック
第12部 コンピュータと情報処理システム

第2章 情報処理システムの基礎 (分類と特徴)

2.3 組織的情報処理システム(Organizational IPS)

すでに指摘してきたように, IPSは異なる複数の目的に役立つように設計され構築されるであろう。本節では,組織的IPSを,それを利用する組織の観点から分類するに用いられる方法のいくつかを概説する。

アプリケーション領域
「アプリケーション」というのは,航空機予約システムや在庫管理システムのように,システムが果たす主要な機能を指し示している。これらの機能は,しばしば組織の機能分野に対応している。製造企業におけるこのような機能とは,マ ーケティング,生産,資金調達,会計, 計画であろう。

情報システムに関する理論は1つもない。しかし,システムのユーザーや設計者は,なんらかのシステムに関する概念モデルを必要としている。システム分野の半構 造的性質とその発端か学際的であることのために,望みうる最上のものは,情報システムの直観的モデルを開発することである。

Anthonyは組織でなされる意思決定についていくつかの異なるタイプを提案した。
(1)戦略計画(strategic planning)一一これは,組織目標とそれを達成するための手段を決定するプロセスである。
(2)管理的制御の意思決定  (managerial control decision)―― これは,戦略計画で述べられた諸目標を達成するために管理者か諸資源を効率的かつ有効に利用するのを確保することである。
(3)業務的制御の意思決定(operational control decision) これには,日々,効率的で有効に成し遂げられなければならない具体的な課業が含まれる。

Anthonyのフレームワークは,異なるタイプの意思決定には異なるタイプの情報を必要とするということを強調している。たとえば,戦略計画決定には,しばしば外部の情報源から得られる,最新で予測的で集約されたデータを時たま必要とする。このフレームワークの主要な貢献は,意思決定のタイプを区別し,またそれに必要な情報を区別したことである。

システムはAnthonyのフレームワークに従って,そのシステムかもともと対象としている組織のレベルによって分類されることもある。

業務的ないし「定型的(routine)」システム
このシステムは,組織内の業務活動と密接に関連した定型的なデータ処理を行う。 たとえば,製造業における定型的システムは,タイムカードを処理して給料を支払ったり,顧客の注文を処理して送り状を発行したりするであろう。このような業務の特徴は普通,大量で定型的であるということである。

ミドル・マネジメント・システム
このシステムは,中間管理者に役立つように意図されているか,時には,自動化ないし半自動化された方法によって,中間管理者の意思決定のいくつかを代替しようと意図される場合もある。たとえば,あるシステムは, 自動的に,購する物資の量を決めたり,適当な販売者を選択したりするあろう。このシステムは,予算に対する実績をチェックするとか,乖離を確定するとかいったコントロールのためにも用いられる。

トップ・マネジメント・システムないし戦略計画システム

このシステムは,経営者を支援するように設計されている。一般的にこれらのシステムには,下位レベルのシステムからの要約データだけではなく,組織外からのデータも含まれている。

このようなシステムは「経営情報システム(management information systems)」 (MIS)と呼ばれることもある。このカテゴリーの特徴は,ユーザーに情報を提供し,これによって,組織の基本的な計画機能を容易にして戦略的意思決定を支援することである経営情報システムは,組織や部門ユーザーか述べる必要条件に応じて,複雑さや規模の点で範囲が広い。システムは,財務,技術,マーケティング,人的資源の分析や計画にとって基本的な情報を提供する。たとえば,人的資源の分析と計画に関する典型的なMISは,人的資源情報システムと呼ばれるであろう。このシステムは,次のようなことが結びついて意思決定を支援する であろう。

選抜― 新人の採用と人の適当な仕事への配属
利用― 現在および将来のニーズに応じた職員の配置
維持― 従業員給付,キャリ ア・パス,俸給管理 , 欠勤状況等の観点からのサービスの提供
責任― 組織に対する人的資源の有用性の現在の評価の維持
計画― 既存のものと将来の技術や能力の必要条件に応じた将来の職員のニーズヘの備え

範囲の面からみてMISは幅広い領域のデータを含むであろう。新しいデータソースか入手可能になると,それか取り込まれるであろう。MISのユーザーは慣習的に将来のほうに向いており,なんらかの根本的な変化を注意深く観察している。 「革新の開発(development at innovation)」 に彼らが関わっている場合かしばしばある。

支援される意思決定のタイプ
Simonは,2つのタイプの意思決定,すなわち,プログラム化される意思決定とプログラム化されない意思決定を提案した。プログラム化される意思決定は定型的で反復的であり,意思決定するには,なんらかの明確にされた手順か,その状態が発生するたびに適用されるであろう。他方,プログラム化されない意思決定は,新奇 なものであり,構造化されていない。問題か以前には出現していないであろうから,このようなプログラム化されない意思決定には単一の解は存在しない。

それぞれのタイプの意思決定に取り組むには,異なるタイプの意思決定技術か適切である。プログラム化される意思決定は伝統的には,習慣や事務手続きやその他の手段によってなされてきた。プログラム化される意思決定を解決するより近代的な技術には,OR,数学的分析,モデルの構築,シミュレーションがあるプログラム化れない意思決定は,判断,直観,経験則によって解決される傾向かある。プログラム化されない意思決定に対する近代的なアプローチには,特別なコンピュータ上のデータ解析プログラム,意思決定者のための問題発見技術の訓練,発見的コンピュータ・プログラムがある前述の2分法にしたがえば,ここで定義する業務支援システム(Operational support system : OSS)は, 戦術的意思決定を手助けするもの(戦術 OSS :tactical OSS)とプログラム化される意思決定を手助けするもの (プログラム化 OSS: programmed OSS)とに分けられるであろう。

戦術OSSは ,現行のプロセスの実施と制御にかかわっており,一般的に短期で「リアル」タイムで稼動する。かなりの程度,それらが情報処理サブシステムとして機能するシステムの構成部分である(たとえば,飛行機の自動操縦サブシステムのように)。それゆえ戦術OSSの運用は,特色としてシステムの運用によってペースが決まる。その有効性を定義する基準は, OSSが作動しているシステム全体のパフォーマンスの観点から定義される。戦術的意思決定の手助けをするシステムの典型的な例には,石油化学工場,航空管制所,原子力制御室の制御操作がある。戦術的意思決定支援にははっきりとした境界かあり,明確に定義された限界がある情報の獲得,スループット,アウトプットは明確にされ定型化されている。反複および規定された性能か戦術的意思決定支援の特徴である。戦術OSSの典型的な作用には,現在の事象の記述,現在のパフォーマンスの監視,短期の予測,新しい環境や偶発事象等の分析やシミュレーションかある。

プログラム化OSSは徹底的に定型化され規定された情報の流れを用いる。自動式で電子式のデータ処理システムがプログラム化OSSの例である。そのようなシステムは第一義的にはなんらかの最小量のデータ処理を行うだけで,データを伝送することにかかわっていることが多い。たとえば,銀行振替システムは,預金(ドル量) をある所から他の所へ移すためにつくられているが,これはデータ処理活動を,始点と終点という観点から項目を分類することに限ることによってなされる。そのようなシステムの主要な必要条件は正確性である。したがつ て,エ ラーの検出ルーチン(たとえばパリティ・チェックー並列に2つ以上のプロセスを行ってみて,それらが同じ結果を与えるかをみるプロセス)がプログラム化

OSSに通常組み込まれている。プログラム化OSSは,一般に,データの転送,中心点でのデータの統合 ,記録の更新と調整,データバンクの呼び出しのために用いられる。

意思決定のレベルとタイプの組み合わせ *
Gorryと Scott‐Mortonは,情報システムのモデルを開発するためにAnthonyと Simonのフレームワークを統合した。彼らはAnthonyの意思決定のタイプをマトリックスの列に,またSimonのプログラム化される意思決定とされない意思決定を行に割り当てた。

既存の情 報システムの大半は,このマトリックスの構造化された業務制御(structured operational control)の セルにある諸問題に取り組んできた。これらの問題は多の組織で似かよっており,とりわけ容易に理解される。これらの意思決定を機械化し,費用節約を予測し達成することは,構造化されていない意思決定や戦略的計画の意思決定に比べ容易である。これらの業務システムは企業の日々の機能において重要な役割を果たすので,優先度の高いアプリケーションである。

システム分野の専門家の多くは,組織にとってもっとも大きな利益をもたらす意思決定は非構造的なものであると信じている。非構造的問題のシステム開発が大きな課題であるか,構造化された問題のシステム開発に比べ間違いなくより危険である。構造化されている場合には,情報システムの目標は,通常,情報処理を改善することである。構造化されていないアプリケーションにおいては,システムの目標は,組織を改善するとか,意思決定者に情報のインプットを与えるといつたたぐいのものである。

統合の程度
システムは,組織全体をカバーしている程度によって分類されることもある。単一機能システム(single function system)は1つの機能を果たす。他のシステムとのどのようなコミュニケーションであれ,ある1つのシステムのアウトプットが次のシステムか受け入れることのできる形のインプットに変換されることか必要である。多機能システム(multi functional system)は ,組織内で2つ以上の機能を果たすものである。このようなシステムはしばしば,単一機能システムを共通のインターフェイスを開発して結合することによってつくられる。

統合システム(integrated system)は ,組織のあらゆるニーズに役立つものである。この定義で意味するものは,情報の単一エントリーという概念である。すなわち1つのデータがシステムにはいるのは1度だけであり,いったん入ればどこであれ必要とされるところで利用される。同様に1つのデータは1個所だけで記憶される。

統合の程度が重要であるのはトレードオフがあるからである。単一機能システムは,その機能を果たす諸個人にとって最適化可能である。しかしなから,同じデー夕をいくつかの単一機能システムに入れたり記憶させたりすることになるであろう。同様に,経営情報を得るには,多数の単一機能システムからよりも,統合システムからのほうがはるかに容易である。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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