コラム・特集

8.2 システム機能とパラメータ

IEハンドブック
第11部 計画と管理

第8章 ディストリビューションとロジステックス

8.2 システム機能とパラメータ

物流システムの分析をする場合に次の3点が考えられる。

(1)施設の位置と設計
(2)サプライ,ディマンド・ポイントヘの配給
(3)サプライ・ポイントとディマンド・ポイント間の運搬輸送

これらの3要素は個々に独立してはいけない。例えば,施設の場所と設計は運送費に影響を与える,また,送り出すサプライ・ポイントから届けられるディマンド・ポイントヘの配給によっても影響を与える。

これらの要素の中に,計画と制御の機能がある。その機能についてはすでに11部で,また,施設の設計については10部で述べられているので,この章では配給と運搬の問題の分析に論点を絞ることにする。しかし,読者は物流システムの設計および分析の前に10部と11部に精通しているべきである。ディマンド・ポイントからサプライ・ポイントヘの配給(allocation)と,運搬のシステムを考えるに当たって,この目的は安い費用で相当のサービスを与えることができるようなシステムを設計することを目的とする。

倉庫の設備の場所と大きさがすでに決まっている場合には,関連する費用というのは,購買,製造費,保管費, 遅れにより発生する費用,運搬費である。費用の見積りについては9部2章でのべているので,この章では,配給と,運搬システムを決定するときに重要と思われる費用のみを考慮することにする。

相当のサービスの中に,システム上に存在する制約に対する負担が含まれている。この制約というのは,外部からのものも あれば,例えば政府の規則や,建物の大きさ等の物理的制約も考えられる。しかしながら,常に,比較選択するとき比較しにくい費用,計数化しにくい費用,例えば機会損失費用がある。そこで色々のシステム・パラメータを考えるときに,費用と制約を同時に考えることが便利である。

需要の変化 (Demand Variation)
需要の変化には季節的なものがある。この場合には季節ごと,または日々,週ごとには安定しているといえる。季節的な変化は,季節の変わり目において物流システムにおけるスケジュールとルーチンを変えなければならないが,それ以上に施設等の容量の計画に与える影響が大きい。容量,例えば倉庫の大きさ,車や,人員といった量が,どの季節にも同じであれば,オフシーズンの量の少ないときの余分な費用と,ピーク時に需要を満足できないためにかかった費用との,トレードオフになる。

一般的に,容量の内でスペースに当たるものは,運送の車や労務人員のように変えることは難しい。そのために,一般的には固定的スペースは,ピーク時の需要に合 わせて確保し,ピークに必要な運搬機械や車はリースにより,労働量は時間外労働により増加させられる。もし容量が季節ごとに変えられるならば,固定的な容量をいくらにするかを決めることが基本的問題である。ピーク時にのみ容量を増し容量追加することは,固定の容量を持つより単位当たりに高くなるので,オフシーズンの需要を少々上回る程度の固定容量を持つことのほうが経済的であることもあり得る。

需要が日々,または短期間に変わることは,1回の積荷を1個所以上に運ぶ状況にあっては,配送ルート計画に影響を与える。需要が安定していれば,1台の車がルートにそって同じ所へいく,固定ルート方式を使用すことは可能である。反対に,もしトラックの容量が配送先ごとに変化する場合には,日々を基礎にしたルートに改める。さもないとトラックの容量をいっぱいに使えないという効率の悪い使い方を強いられることになる。日々需要が変動する場合,各サプライ・ポイントにおいて必要なバッファ在庫を持つ。バッファ在庫レベルは,平均需要プラス需要の標準偏差を掛けたものとする。その結果として,客の要求が比較的独立したものであれば, バッファ在庫は増し,在庫はサプライ・ポイント間に散らばることになる。

例えば,仮に2個所のディマンド・ポイントがあり, 各個所平均の需要は20,標準偏差は5とすると,バッフ ァ在庫は平均需要+3×D5になる。いま,この2個所のディマンド・ポイントヘ2個所のサプライ・ポイントから供給するとする。バッファ在庫,20+3(5)=35が各サプライ・ポイントで必要になる。しかし,もし, 1個所から2個所へ配る場合はSD=V(52+52)=7,ゆえに2個所から配れば70になるバッファ在庫の合計は,40+317)=61個に変わる。

この現象は,各客の需要が他の客の需要の増減に影響されないという場合に考えられる。この場合には与えられた日に,平均以上の需要の客と平均より低い需要の客を合わせて持ちたい。そうすれば,それらの客が同じ在庫の地区から供給される場合であっても,各客の最大需要を満足させるだけのバッファ在庫を持つ必要がない。一方,もし,季節変動のある商品に多いケースであるが, ある客の需要が増すと他の客の需要が増すという具合に,需要が他に影響される場合には,少数の在庫場所にバッファ在庫を持つという不都合が起こる(有利さはない)。それゆえ,客の需要が比較的独立している場合にかぎり, 客へ供給する場所を少なくすることにより,在庫量が少なくてすむという有利さがある。

供給元の制約条件
異なるサプライ・ポイントから送られることができる数に対して,制限が加えられることは,通常起こり得ることである。この制限は,与えられたサプライ・ポイントから供給される需要の一部という表現で述べられる。この意味するところは,供給者の数を制限することである。顕著な例では,各ディマンド・ポイントヘは,たったの1個所のサプライ・ポイントから配るというシングル・サービング(Single Serving)と呼ぶケースもある。
事務費用や,良好な労働条件を保つための時間や,責任度を明確にするなど,各供給者側との引取き上必要な費用が発生するが,これらの費用は,計数化することは困難である。そこで,これら の費用を,より少数の供給側を使うことにより起こる購買と運搬の費用増と,比較調整することをしたい。しかしながら ,これらの費用を 評価することは難しいので,元の制約についての決定は経営者の判断に委ねることが一般的である。少ないケースであるが,とくに軍需品の購買に際しては,少数よりむしろできるだけ多くの供給者が望まれる。これは緊急時にも,適切な供給が維持できる必要があるからである。ここでは,制約は,与えられた1つの供給者元から配られる最大の需要,という言葉で表わされる。

遅れの費用 (Delay Cost)サプライ・ポイントからディマンド ・ポイントヘ
物を動かすことにより起こる遅れの費用の換算は,商 品の性格によっておおいに異なる。例えば,軍の弾薬,コンピュータの部品,血液等は遅れにより発生する費用 は非常に高い。しかし,そ れほど危機的でない商品は,理由に合った期間内での遅れであれば,それにより発生する費用は,取るに足らないものとなる。商品を紛失したり,供給されるまでレンタル費等は見積もることができる。

信用を失ったり,死亡したり,ケガをしたりすること による費用を測ることは不可能である。そこで,最大限受け入れられる遅れの範囲を決め,その期限内での遅れに対して制限を加える。

ルートによる制約 (Route Considerations)

運送費は,荷の量がトラックやボックスカー1台分とか,ボックスが1単位であるように大きなロットであるか,逆に小さいロットで多くの場所に配るケースであるかによって変わる。大型ロットでの輸送は,工場施設から倉庫またはディストリビューション・センターヘ輸送するという幹線レベルの輸送の場合に起こる。小ロットは,ローカル配送,すなわち,倉庫またはディストリビューション・センターから,個々の客までの輸送である。

各ローカル・デリバリーにおいては,ある計画時間内に配送しなくてはならないという制限がある。これは,時間の計画の間隔が短いときや,車が複数のストップを必要とする場合には,考慮すべき重要なことである。もし,車がその決められた時間内に着かない場合には,車は次の計画時間まで待つか,その場所を後まわしにして 2番目のストップにするかを判断しなくてはならない。

われわれは常に8時間以内という,時間帯内で納めることができないと,費用増につながるために,その時間帯内でトラックがルートを回れることを好む。例えば, 時間外手当や宿泊費等,また時間帯が,労働組合との契約や,政府の規定で決められている場合,時間帯を超過してし まったことは重大な問題になる。そのようなとき多くの場合,われわれは費用を課することにより,システムにおける規制条件として,経過時間帯を持とうとする。

車の容量(大きさ)には最低2つの測り方がある。積載可能容積と重量である。ある場合には,一方の測り方だけが重要であるが,ある場合には両方を考慮しなければならない。例えば,車の部品を運ぶ場合に,冬にバッテリーを大量に運ぶときには重量を考慮しなければならないし,夏にタイヤを運ぶ場合には,車の容量が問題になる。

また,アイテムや輸送が分割できない場合には,車の容量を考えることはむずかしい。例えば,分割できない届け物がいくつかあり,おのおのが1台半の容量を必要とする場合,われわれは,容量も超過しないで,運搬費も超過しないように,調整させるように考えねばならない。また,使用している車の大きさがそれぞれ異なる場合も,容量についての取り扱いはやっかいである。このような場合には,車の容量を超えないような配送ルートを考えねばならない。もし,どの車も同じ容量であれば , ルートを第一に決め,次に車を決めることができる。

荷の積み降ろしは,使われる荷役機械によって規制される。積み降ろしの制約で最も一般的なものは,最後に積んだ物が一番先に降ろされるということだ。もしも, 運ばれるアイテムが,すべて似たようなものであれば,その制約はなくなる。しかし,車にグループとして積まれた場合には,後積みか先降ろしの制約は考慮しなくてはなら ない。このような場合,荷が車の上に積まれたら, 特別のストップの順序に運ばせる。もしこの順序で,変化があった場合(例えば,あの場所では受け取らなかった)には配送計画がくるってしまう。

荷の届け先で,他の荷を受け取るようなケースには, 容量オーバーにならないようにしなければならないと同時に,受け取った荷を他の所で届け違いをしないように注意が必要である。この問題は,すべて届けてから,次に受け取る方法にすれば単純になるが,しかし費用増になる。

配送がバッファ保存在庫から出して配送されるのでなく,製造工場から直送されるときには,供給輪郭のルートヘの影響が大きくなる。例えば新聞を配送するとき, 新聞が新聞社から直接車に積まれるようにシステムが設 計されているトラックは,新聞が印刷されている間に,荷捌場所に着いていなければならない。そのためにトラックは待つこともあるが,次の新聞の時間までに届け終わって帰ってこなくてはなら ないという制限もある。

各ルートに車を走らすトラック運転手の仕事量の測定が望まれる場合がある。もし運転手が荷を降ろした ,開梱したりしなければならない場合,その時間はどのルートでも同じにしたい。もし運転手が,出荷指図書等の書類を書くなどの仕事をして,コミッションをもらったりする場合には,どのルートにおいても同じ に取り扱いたい。物流システム設計においては条件の正当性 (平等性) を必要とするからである。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー