コラム・特集

7.8 事務作業における保全マネジメント

IEハンドブック
第11部 計画と管理

第7章 保全マネージメントとコントロール

7.8 事務作業における保全マネジメント

富士ゼロックス社は,複写機器の生産・販売会社である。製品の販売は,主にレンタル・システムに基づいている。同社の方針は,トータル・ライフ・コストを考慮した保全サービスによって,高い信頼性と利用性をもった製品を提供することであった。

事務機械および保全の特徴
事務作業の機械化は,エレクトロニクスなどの技術を使用することにより,急速に進歩し,実用化してきた。これは,莫大な情報を即座に処理するという。今日のユーザー・ニーズに合致したためである。機械化を導入した際,保全サービスの不適切による事務機の不整備は,生産性を低下するばかりでなく。情報不足による意思決定遅れによって,機会費用をもたらすことにもなる。

事務機に対する保全の型
コピア,デュプリケーター,電子計算機などの事務機に対する保全活動は,今日,製造業者によって広く実施されている。これは,高度な保全技能を必要とする複雑で精密な機構をもった機器の特性から,保全業務をメーカーに任せることによって,ユーザーは事務機の使用効率を向上するよう期待しているからである。

機器の特性,複雑さ,使用頻度,設置台数,設置環境,作業者や修理者の技能水準,保全コスト等に応じて,事務機の保全にはいくつかの方法がある。典型的な保全の型とその特徴は次の通りである。

1.操作者による保全故障が生じたとき,操作者が機械を修理する。この型の保全は,機構や故障個所が単純で,部品取替が容易な場合のみに行われる。この型の利点は,停止時間が短くなり,修理費用が安くなる。しかし,操作者の訓練や保全の認識が必要となる。

2.ユ ーザーによって用命された修理作業者による保全操作者によって機械故障が知らされると,修理作業者は,故障を診断し,修理もしくは部品取替をする。修理作業者が解決できない場合には,外部からの保全サービスを要請することもある。この型の保全は,機械の設置台数が非常に多い場合,機械が遠隔地に設備されている場合,メーカーの保全サービスが利用できない場合に停止時間を短縮する。スペア部品の在庫が必要となる。

3.メーカーによる保全これには,計画されない保全と計画された保全の2つの保全サービスの型がある。計画されない保全は,ユーザーがメーカーの保全サービス部門に修理を要請したとき開始される。メーカーの修理作業者がユーザー側に出向き,診断し,欠陥個所を検出して,修理するか,もしくは事務機をメーカーに持ち帰って修理する。事務機が複雑で精密な機構のときには,予防保全が有効である。

利点としては,(a)不適切な修理の可能性や操作者による保全手続きの削減,(b)保全時間や修理時間が限度を超えると推定される場合には,同一の部品に取り替えることが可能となり,これによリユーザーの停止時間が削減されること,である。欠点としては,修理作業者がユーザーの所へ出向するまでの移動時間による停止時間が増大することである。

停止時間を最小化するためには,メーカーは次の活動を重視する必要がある。

a サービス・ステーションの数,位置,人員配置を合理的に決定すること。
b 作業量が平滑化されるように計画・統制すること。
c 中間在庫水準や流通システムを適正化することによるスペア部品の管理。
d 将来開発される製品の信頼性や保全性を改善するため,保全活動分析の情報を設計部門ヘフィー ドバックし,保全マニュアルや保全方法を改善するため,保全サービス部門にフィードバックすること。

ユーザーは,これら2つの保全の型のうち,いずれか1つを選択したり,それぞれの長所に基づいて,それらを組み合わせて使用することができる。

謝 辞
これらのケースは,3つの会社から著者に提供された ものである。76の電子機器産業における全社的保全管理の事例は,日本電装によって提供された。77の鉄鋼業における作業者のモチベーションと機器の利用度を共に高める新保全・生産システムの事例は,新日鉄・名古屋製鉄所によって提供された。78の事務作業における保全管理の事例は富士ゼロックス社によって提供された。著者らは各社から提供された原論文を再編成・抜粋した。著者らは各社のご好意に感謝の意を表する。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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