コラム・特集

7.6 電子機器産業における全社的保全活動

IEハンドブック
第11部 計画と管理

第7章 保全マネージメントとコントロール

7.6 電子機器産業における全社的保全活動

電子機器,ヒーター,クーラーおよびその他の自動車部品を生産し,従業員24,000人の日本電装では,“全社的生産的保全(TPM)”システムを1969年以来,全従業員参加の下で実施している。この活動の目的は,以下の通りである。

・すべての生産機器や施設を最高の稼働効率に維持し,製品品質を保証すること。
・すべての機器や施設の全生涯について生産的な保全を行うトータル・システムの設定。
・トップ・マネジメントから現場で働くすべての従業員までを包含すること。
・計画業務に関与している部門,運営に関与している部門,機器や施設の保全に係わる部門などを動員すること。
・自主管理原理に基づき,すべての従業員を小グループにして動機づけ,コントロールすること。

自主的な評価法に基づいてTPM活動を評価し,実施することにより,会社は機器や施設の稼働効率を向上し, 製品の品質を改善し,生産費を削減し,その他幾多の改善をなしとけた。

TPM方針の決定とその具現化
図表11.7.12
に示されたTPMの基本方針は,“全従業員の参加を通じてTPMシステムを全社に確立する” という観点から,すべての機器と施設の保全マネジメント責任を担当する管理部長によって策定された。この方針に基づいて,同社は,各機能ごとに経営管理のレベルに応じて,毎年,各種の経営管理指標や目標値を設定する。

1971年に,TPM・ QC安全サークル活動が開始された。それは,小グループごとに,自己動機づけ活動を改善し,従業員自身によって組織化されており,品質,生産的保全(PM),安全を積極的に取り扱っていくことを目的としている。その結果,これらのサークル活動は,会社の全従業員に対して,PM知識を増大せしめ,モラールを向上させて,日常保全の堅実度を高め,将来のPM改善にも多大の効果をもたらした。

PM診断システム
同社は,1969年に“PM診断システム”を開始した。これは,PMポ リシーのチェックを可能にし,確実に具現化するものである。また,実施結果のフィードバックを促進する。

この診断システムの下では,診断に対して2つの概念がある 。1つは“自己診断”であり,これは部門内自身で実行される。他の1つは“相互診断”である。これは部門相互間で実行される。相互診断は,PM活動のすべての局面について吟味する場合には,“全体診断”となり, 特定のPM機能か実行中の特定のプロジェクトを吟味する場合には“プロジェクト診断”となる。こうした2つのタイプの診断は統合され,連動して実施される。

PM部門の教育 ・訓練
生産部門には,PM用語 集,PM解説書 ,潤滑油管理マニュアル,PMスライド等が教育用教材として与えられ,システマチックに教育スケジュールが編成される。また,作業者に対するOJTも重視されている。

保全部門は,水力学,電気学,安全法規などと共に,特定の教育・訓練が与えられる。これにより,特殊技能をもったPM作業員が養成される。

さらに,同社は“アインシュテラー・システム”と“ロ ーテーション・システム”を実施している。これらは PMにおける人事管理上のユニークなものである。前者は,作業現場において特別に選定された作業者を教育・訓練することを意図している。アインシュテラー作業者は, 生産業務や日常保全業務を担当しているだけでなく,作業のスケジューリングや準備,簡単な調整,日常修理および未熟練作業者の訓練などの業務を担当する。このシステムの利点は,高精度生産機械が導入され,未熟練作業者の数が増加するにつれて増大してきている。後者のシステムは,機械製造部門から機械製造テクニシャンを教育することを狙っている。ここで機械製造部門は,内部使用の機械を生産する業務を担っており,また,それらの機械を据え付けたり,調整したり,オーバーホールしたり,スタッフの計画に従って他部門に引き渡す業務を担当している。

PMの評価とその効果
PM活動の効果を評価する際に,同社は保全そのものの結果を評価するだけではなく,トップ・マネジメントによって設定されたPMポリシーが,作業現場のPM作業員に浸透しているかについても評価する。また,PMモラールが全従業員に広まっているかや,機械設備の初期故障保全や標準化が十分進められているかについても評価される。PM評価システムの全体図が図表11.7.13 に示されている。

全体評価を実施するには,各機能ごとにPM管理項目が用意される。また,重要な管理項目間の関係を明確にするため,特別に用意された表が使用される。これによ り,PM活動は目標と実績を比較しながら,図式的にコントロールや評価ができる。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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