コラム・特集

6.3 MRPの応用

IEハンドブック
第11部 計画と管理

第6章 資材所要計画(MRP)

6.3 MRPの応用

MRPの標準的な出力は,構成部品や原材料の正味所要量を,経済的に満足するようにロット編成されたオーダーを,一定の計画期間にわたって,期別にスケジュールすることである。オーダーの時間経過に伴い,MRPは,次に示すようなアクションを促す指令を出力する。

・生産/購入
・計画オーダーの手配指示
・進行オーダーを早める進度訂正
・進行オーダーの再計画
・進行オーダーの数量変更
・進行オーダーの取り 消し

これらの勧告は,本質的に,資材所要量(何を,いつ, どれだけ)を満足するために必要とされるアクションを反映したものであり,さらに経営者のニーズに合わせるために,経営者のポリシーを反映したものでなければならない。この後者のことのために,MRPの計算過程に必要とされる入力としては,次のようなものが含まれる。

・指示時期に先立って何期前に指令を出すかということに関する,経営者がシステムに望む期間数。
・進度訂正や再計画などの重大な必要性があるとき, 経営者が必要と考えるそのときの期間数。
・オーダー数量が,ロットサイズに等しくないときに, “ 受容できる”(reschedule)オーダー数量の値に関するパラメータ。

いつ “ 再計画”(reschedule)よりも“ 取り消し” (cancel)のほうが 適切なアクションであることを判断すべきかの基準。

このようなポリシーは,MRPシステムを運用していく上での環境を表わすものである。厳密すぎるポリシーをとれば,MRPシステムは“神経質で”(nervous),過大に応答じすぎるものになりがちである。しかし一方で,ポリシーの指定に欠けるシステムは,無応答なものになることが多い。現実的で,しかも効率的なポリシーを設定することが,MRPシステムをうまく運用していく上での1つの鍵となる。

再生方式と正味変更方式
MRPシステムは,正味所要量計画の更新方法の立場から,一般的に再生方式と正味変更方式に分けられる。再生方式は,新しい計画オーダーやアクションのための指令を再生するために,すべての最終品目に対する多段階の部品構成表を用いて,全体の基準生産計画を定期的に展開し直す方法である。一方,正味変更方式では,基準生産計画の変更分,あるいは特定の構成部品の状況の変化分だけが,部品構成表を用いて展開される。

図表11.6.12は ,再生方式と正味変更方式についての ,システム運用に関する特性を比較したものである。

2つの方式の主要な出力は同じであるが,重要な相違点は, 再計画の頻度(正味変更方式は高頻度であるのに対し, 再生方式では限定されている)と,更新の引き金となる対象(正味変更方式では状況の変化分が対象となるのに対し,再生方式では全期間の基準生産計画が対象となる) の2点である。その他の相違点は,上述の2 の特性に関連して表現されるべきものである。例えば,正味変更方式は,変更に対する応答が早いので,MRPの使用者にとって一般に好まれる傾向がある。しかし 実際には , 正味変更方式では,誤りのデータを駆逐する能力がないために,定期的に再生方式を実行する必要がある。それに加えて,企業におけるデータ 処理能力の制限から,正味変更方式を採用することができない場合がある。

MRPにおけるロ ット編成法

MRPシステムにより作成される,計画オーダーにおけるオーダー数量は,正味所要量だけにより 決まるので はなく,資材計画者が適切なオーダー数量を計算するのに,助けとなるように設定された各品目のロットサイ ズ, あるいはロット編成ルールを考慮しなければならない。各品目の標準ロットサイズの設定に際しては,資源の利用度,保管スペースの制約,包装の要件などによって決まってくる。しかしながら,最も重要な関心は,多くの場合,発注あるいは段取コストと,在庫を維持・保管するコストとを最小にすることにある。

図表11.6.13は ,一般によく用いられているロット編成法について,MRPにおける適用可能性に関する示唆と,簡単な説明を与えたものである。

最初の2つである EOQと固定発注方式は,連続的な需要の仮定に基づくものであるが,残りの方式は,MRPシステムを用いる。ときの通常の条件である,間欠的で,離散的な需要に ,対処できるように考えられた方式である。

適切なロット編成法を選択するときには,他にも多くの要因を考慮する。必要があり,その中で次のような要 因が重要である。
・需要の変動
・計画期間の長さ
・単位期間のとり 方
・段取コストと単位製造コストの比

大部分の構成部品や部品の集合に対して,他のものより確実に優れたロット編成法というのは存在しない。しかしながら一般に,離散的に起こる需要に対処できるように考えられたロット編成法が,MRPにはより効果的である。また,引き続く計画期間の正味所要量の整数倍に相当するオーダー数量を指定するような方式を用いることによって,ある特定の期の所要量だけを満足するような“端数”(odd)の数量の発生を,最小にすることができる。

MRP方式における安全在庫の使用法
MRPシステムにおいても,あらかじめ手持ち在庫量に安全在庫の分を減じたものを用いるといった方法や, 総所要量に安全在庫の分を加えたものを用いるという方法をとることによって,それぞれの構成部品の安全在庫を確保することができる。この2つのやり方は,いずれも正味所要量を増加させるということで,同じ効果をもつ。しかしながら,MRPにおける安全在庫の使用には注意を要する。使い方を誤ると,安全在庫はMRPシステムに過剰な所要量を生み出し,それによってオーダ ーの優先順位や,オーダーを発すべき時期を誤らせることになる 。

安全在庫をもつ第一義的な目的は,予期しない需要の変動に備えることにある。一方,MRP方式のもとでは, 構成部品の需要は,予測というよりも計算に基づいてされるため,構成部品の安全在庫は通常必要とされない。したがって,安全在庫は,独立需要品目の基準生産計画 を設定するときにおける入力の1つと考えるべきである。

安全在庫をもってもよい従属需要の構成部品は,その入手に高い不確実性を伴う場合に限定される。このような部品が,工場の購入部品の中で占める割合は,通常小さいと考えられる。そのとき,MRPシステムの中で安全在庫の取り扱われ方は,納期を早めるという形でなさ れる。すなわち,この納期を早めるということは,システムが実際の納期の何期か前に,オーダー指示のための指令を出すことを意味する。このやり方のもとでは,オーダー数量は,通常計画されるものと同じであるが,実際に必要とされるよりも前にオーダーが入手される。このとき,手持ち量は,そのオーダーが所要となる期までの期間に,期当たりの平均使用量を掛け合わせた分に等しい安全在庫を,含んだものとなる。

しかしながら,実際面においては,多くのMRP使用者は,生産や輸送の遅れ,不良品による数量不足,あるいは品質管理活動のための,一時的な生産の“停止”(holds)などに起因する在庫切れを防ぐために,安全在庫を用いているのが現状である。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

関連記事一覧

2019ものづくり公開セミナーガイド

B2Bデジタルマーケティングセミナー

ものづくり人材育成ソリューション

マーケティング分野オンラインセミナー