コラム・特集

6.2.MRPの基本ロジック

IEハンドブック
第11部 計画と管理

第6章 資材所要計画(MRP)

6.2.MRPの基本ロジック

本質的に,MRPは ,工場の製造工程のシミュレーシ ョンを,通常の場合コンピュータを用いて行っているのと同じである。製造工程における資材の流れのシミュレーションを実行することによって,MRPシステムは次のことを決めることができる。

・どんな資材が必要か
・おのおのの資材の所要量はいくつか
・おのおのの資材はいつ必要か

独立需要品目の需要予測に始まり,MRPはその品目の部品構成表を用いて,それぞれの構成部品の需要量を導き出す。

基準生産計画の準備
最終ストックの目標水準を維持するために必要とされる,期別生産日程計画である基準生産計画は,MRPの最も重要な入力情報である。基準生産計画は,通常次のような入力に基づいて準備される。

・需要予測
・顧客オーダー
・最終製品の所要在庫量
・サービスパーツ 所要量
・安全在庫の所要量
・生産平準化,安定化のための所要在庫量

受注生産の工場では,基準生産計画は顧客オーダーだけからつくられ,見込生産の工場では,すべて予測に基づいてつくられるであろう。しかしながら,ほとんどの工場では,上に示したすべての入力情報が,基準生産計画をつくるのに使われるものと考えられる。基準生産計画には,何日,何週間,何力月という,ある長さの期間にわたって期別の所要生産量が示される。この全体のスケジュールがカバーする期間の範囲は ,“計画期間”(planning horizon)と呼ばれる。図表11.6.2 はAjax事務器社の基準生産計画の例である。

部品構成表:MRPの鍵となる入力情報
部品構成表は,MRPシステムに対して鍵となる入力情報であり,この部品構成表の集合は,一―各最終品目に対する部品構成表と,それ自身は組立部品あるいは製造部品である最終品目の各構成部品に対する部品構成表―製品工程全体の資材の流れを表わす。ここで製造部品と異なり購入部品については,当該工場における MRPのロジックの中では構成部品をもたないので,部品構成表は必要としないことに注意すべきである。これらの部品構成表は,全体として製造工程の各レベルごとに, ある製品をつくるのに必要とされる,すべての構成部品とその数量を表わす。

1つの製造品目の単一レベル部品構成表には(“第1レベル構成部品”:first―level componentsと呼ばれる),その品目をつくるのに直 接必要とされる,すべての構成部品の部品番号と数量が示されている。

図表11.6.3 に示されている製品Aの部品リストのように,単一レベ ル部品構成表は,本質的に製造工程における1段階の資材変換過程と,製造工場における1段階の資材の流れを記述するものである。

これに対して,図表11.6.4は,最終品目Aに対する全体の部品構成表を表わしている。

最終品目に対する多段階の部品構成表においては,それぞれのレベルはダイヤグラムによって表現でき,図表11.6.5bのように,これらをつなぎ合わせたものは“プロダクト・ストラクチャー・ツリー”(product structure tree)と 呼ばれ,購入部品から最終品目まで,資材がどのように流れるかを示すものとなる。

この例において,購入部品は,D,E,F,GとHである。製造工程において,Dは製造部品Cに変換され,次に購入部品E, Fと組み合わされて組立部品Bとなる。そしてB,GとHが最終品目Aに変換される。プロダクト・ストラクチャー・ツリーを見れば,Aが直接構成部品としてBをもち,そしてBは 直接構成部品としてC,EとFをもつこと,さらに構成部品EとFは,製造部品というよりも購入部品であり,Cは構成部品Dをもつことなどが,一目瞭然である。最終品目Aの直接構成部品であるB,G, Hは,プロダクト・ストラクチャー・ツリーにおいて, 2次レベルの構成部品よりも高位にあるので,Aのより高次レベルの構成部品と考えられる。

製品Aの全体の構成を表わすもう1つの方法は,多段階レベル部品構成表を用いることによってできる。“インデンティッド部品構成表”(indented bill of material) と呼ばれる多段階レベル部品構成表は,ある品目が何段階のレベルの構成部品からなり,それぞれのレベルにおいては,何種類の構成部品からなっているかを簡潔に示すことによって,組立品の複雑な部品構成を分かりやす くしている。それぞれの構成部品のレベル番号は,字下がりの形で示すことによって,見やすくなっている。図表11.6.6は,製品Aのインデンティッド部品構成表である。

最終品目Aだけを生産している工場であれば,図表11.6.5は工場全体の資材の流れを表わし,どんな部品がそれぞれ何個で必要であるかという,資材所要量を完全に規定している。しかしながら,ほとんどの工場では,多くの最終品目を生産しているのが普通であり,その場合には,図表11.6.5に示されるような図を,各最終品目について描くことによって,それら全体が,工場全体の資材の流れを表わす役割を果たすものとなる。

期別総所要量の決定
MRPシステムは,最終品目の部品構成表を用いて, 基準生産計画を展開することによって,各最終品目の構成部品の総所要量を決定する。図表11.6.7は ,製品Aのプロダクト・ストラクチャー・ツリーであり,あわせて, 構成部品を購入,あるいは製造するのに要するリードタ イムが示してある。

さらに図表11.6.8は ,第 1レベルの構成部品B,G,Hに 展開した基準生産計画を表わす。

展開される各製品のリードタイムから,構成部品が入手される べき時期が決まってくるわけであり,この場合,製品Aの納期の1期前に,その構成部品B,G,Hは入手される必要がある。このような展開の過程の中で,基準生産計画に時間の次元を導入することから,すなわち,期ごとに資材所要量を分割して計算することから,このようなやり方は,“ タイムフェィジング”(time phasing)と呼ばれる。

基準生産計画の計画期間は,すべての所要資材がそのリードタイム内に手配され,入手できるように,全製造工程における最長の累積リードタイムを,カ バーするほ どの長さのものでなければならない。例えば,図表11.6.7の製品Aのプロダクト・ストラクチャー・ツリーに示される最長の累積リードタイムのパスは,A,B,C,D であり,そのリードタイムはそれぞれ1,2,3,4期であるので,累積リードタイムの長さは10期 となる。

累積リードタイムは,ある最終品目が製造されるまでの最早の終了日程を表わし,最終品目の終了日程がすでに決められているときには,最下位レベルの構成部品のオーダーを着手する最遅の開始日程を表わす部品構成表の展開とMRPの期別の所要量計算のロジックは,11.2章におけるアクティビティ・ネットワーク計画の一般化した理論と似ている。図表11.6.9は,卓上セットAの構成部品について,累積リードタイムの概念の例を示したものである。

期別正味所要量の決定
最終品目の基準生産計画と,部品構成表を展開することによって,計算される構成部品の総所要量は,手持ち在庫をすでにもっているとか,指示済みオーダーがある

とかで,実 際に必要とされる所要量よりも多くなっている場合がある。したがっ て,正味所要量は,総所要量から ,これらの数量を引くことによって,求められなければならない。図表11.6.10は,最終品目Aの基準生産計画を,その部品構成表を用いて展開したものを,さらに各構成部品の手持ち在庫量,指示済みオーダーの納入予定を考慮することによって,求められた構成部品B,G,Hの正味所要計算を示すものである。

指示済みオーダーの日程が正しく計画されていない場合には,MRPシステムは,再計画や納入予定を早める進度訂正の勧告を出す。例えば,構成部品 Bにおける第7期の95個の指示済みオーダーの納入予定は,第9期まで必要とされておらず,このような余分の在庫をもつ費用を2期分減らすためには,再計画することが望まれる。同様に構成部品の第5期における110個の納入予定は,第4期における構成部品の45個の所要量を満たすためには,第4期まで早められなければならない。このようにMRPシステムにより出される進度訂正や再計画の勧告により,資材計画者は,実際の必要期日をいつも知ることができるし, 必要とされる構成部品の優先順位に関して,適切な判断をすることができるのである。

オーダーの作成と指示

MRPシステムは,計画オーダーの作成も行う。この計画オーダーによって,資材計画者は,正味所要量を満足する資材を確保することができる。図表11.6.10においては,第9期に部品Gの 計画オーダーが作成されている。もしこのオーダーが作成されなければ,第 9期に部品Gの所要量に不足が生じる。この場合,この構成部品のロットサイズが110であるので,計画オーダーの数量は110と計算される(MRPを用いたロット編成法は,この章の後の部分で説明する)。次に計画オーダーは,そのオーダーを指示(着手,手配)すべき期,すなわち, “計画”(planned)から“ 確定”(irm)に変わる期を決めるために,必要リードタイム分だけ先行計算される。このように部品Gの110の計画オーダーは,6期分だけ先行計算され,第3期がオーダーを指示すべき期となる。

正味所要量計算に示されているオーダーの指示は,MRPシステムの中の重要な出力を構成するものである。それぞれの指示は,そこで指定される構成部品や原材料について,指定された数量の製造指図書や注文書を,その期に発行せよという指令を表わす。このようなアクションを促す指令により,基準生産計画の中で指定される生産の所要量を最終的に満たすために,どのような資材が,どれだけ,いつ必要とされるかを,MRPの使用者に教えてくれるものとなる。

正味所要量の決定は,部品構成表の各レベルを通して行われる。計画オーダーは,下位レベルの総所要量に展開され,次に手持ち在庫量,指示済みオーダー量により調整されて,正味所要量が計算され,さらに必要に応じて次々と計画オーダーが作成される。特別な場合には,確定オーダーも部品構成表を用いて展開されることがある。これは,確定オーダーが正規の手順に拠って作られなかったときに起こる。このようなオーダーは,“確定計画オーダー”(firm planned order)と呼ばれ,MRPの計算過程では作成されないが,計画オーダーと同様に構成部品の所要量を計算するために,部品構成表を使って展開されなければならない。確定計画オーダーは,多くの場合,あらかじめ決められたロットサイズやリードタイムなどの条件を無視するために,MRPと結合して用いられる。

例えば,図表11.6.10において,第7期の構成部品Bの95個の指示済みオーダーは,第4期の80個の所要量を満足した後,まだ5個の部品が手持ちとなっているため,正規のBのロットサイズである100を無視 するための確定計画オーダーを表わす。図表11.6.11 には,最終品目Aの基準生産計画を,全体の構成部品に展開した正味所要計算が示されている

総所要量の合算
図表11.6.11
に示される正味所要計算は,1つの独立 需要品目だけを生産するのに必要とされる構成部品の所要量を示すものである。MRP方式では,それぞれの第1レベルの構成部品の合計の総所要量を計算するために,すべての独立需要品目の期別総所要量が合算される。これらの所要量は,手持ち在庫量,指示済みオーダーにより調整されて,期別の正味所要量を満たすべく計画オーダーが作成される。そして次に,コンピュータ・システムは,第2レベルの期別総所要量を作成するために,部品展開表を用いて,第1レベルの構成部品の正味所要量を展開する。その結果,今度は第2レベルの正味所要量が計算され,計画オーダーが作成される。このような過程が,すべての部品構成表を用いて,購入部品の段階までレベルごとに繰り返される。

部品構成表の複数のレベルに表われてくる構成部品については,総所要量から正味所要量への変換の計算は,その構成部品が使われる最下位のレベルで,行われなければならない。これは,正味所要量に展開する総所要量が,その構成部品のすべてのレベルの総所要量の合計となっていなければならないことによる。各品目につけら れているロ ーレベル・コードは,部品構成表の中で,その品目が用いられる最も低次のレベルを表わす。このことより,ローレベル・コードは,それよりも高次のレベルからの総所要量の合計が求まるまで,その品目の構成部品の展開を留保すべきことを,意味するものである。

この総所要量の展開の時期を誤ると,過小の総所要量が作成され,その結果として,それぞれのレベルにお いて,過小の正味所要量が計算される。さらにその結果, 誤ったロット編成,不適切な安全在庫量といったことが起こる。

このような計算,調整,再計算のサイクルは,すべてのレベルの部品構成表に及び,複数のレベルで使われている品目に出合うたびに,それまで完了している総所要量の計算はやり直さなければならないし,ロット編成,安全在庫の計算もやり直さなければならない。さらに,その品目の正味所要量が変化するため,その品目に従属するすべての品目の正味所要量も,再計算されなければならない。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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