コラム・特集

5.3 能力目標の設定

IEハンドブック
第11部 計画と管理

第5章 能力:その測定と管理

5.3 能力目標の設定

企業の能力目標を設定するために,一般に,以下の3つのアプローチが用いられる。

1.技術的アプローチ ーーボトルネック作業の限界の設計。
2.経済的アプローチ ーー財務的制限,限界分析や最適化モデル。
3.経験的アプローチ ーー実際に行われていることの測定。

この章では,経験的アプローチを用いる。「実際に行われていることの測定」の研究に力点を置く理由はたくさんある。
第1に,技術的や経済的アプローチは起こり得ることだけを定義することができる。これらの予測の長期的な正確性は,ある一定の一様な方法でフィードバックされているデータと同程度でしかない。
第2に,短期間の事業の成功(例えば,年度)は,同様に,正確な成果のフィードバック情報に基づいて予測される。能力は,時間当たりのアウトプットだけでなく,アウトプットに影響を及ぼす,あらゆる支援要因の有効性も意味しているため,総時間構造に関連する,すべての要因の成果を計算するメジャーの必要性がある。
第3に,計画はそれを遂行する人が,理解し同意する範囲でのみ有効であることが知られている。

行われていることを測定し,能力目標を設定するこのアプローチは,スタッフ企画担当者と同様に,ライン組織でも用いられる 。このプロセスは以下の5ステップで構成される。

1.ボトルネック作業の定義
2.データ収集
3.成果分析の確立
4.能力目標の設定
5.継続的に稼動測定をするプログラムの開発

ボトルネック作業の定義
この段階では,とくに注意をはらわなければならない。多くの場合,もっとも遅いプロセスや作業をボトルネックと仮定しがちであるが,実際には,もっとも遅い機械が最低のアウトプット効率を示さないこともあり得る。時間当たりのアウトプット比率と,ジョブが完了する実際の時間との関係が,本当のボトルネックを決定するのである。

ボトルネックは,全製品の全部品に対して求められ,各部品は,全製品のアウトプット限界に関連付けてランク付けされるのが望ましい。

データ収集
本当のボトルネックが求められ,ランク付けがされると,アウトプット可能能力(ロスなし,干渉なし)が決定される。これは,一般に,時間当たりの数量,体積,重量によって表わされる また,アウトプット可能能力は,労働力の効果だけで表わされると考えられている。

例えば,手作業による機械操作では.部品の着脱は , 総作業時間を計算するために機械のサイクルタイムに加 算される。自動化された工程では,部品搬送だけが機械 のサイクルタイムに加算される。手作業による組立では,直接組立に貢献するワーク要素だけが含まれ,測定,作業者の交替,人的余裕時間のような他の要素は含まれない。

次に,全アウトプットに対する干渉を求めなければならない。これには,2つの基本的カテゴリ ー がある。1つは,計画通りで規則的なもの,もう1つは,未計画で不規則なものである。干渉とは,ツ ール交換,マテハン,作業者余裕時間などの非周期的な余裕である。そして, これらは,作業標準を作るために,繰り返しの手作業動作に加えられる。これらのロスを,規則的なものと不規則的なも のとに分類しなければならないが,分類基準の選定は企業の方針によって決められる。最後に,全可能アウトプットと標準アウトプットとを比較することによって,工程計画の中で起こるロスを定義することができる。

成果分析の確立
“成果分析”という言葉は,進行過程のステップで表わされるデータのすべてを見極め,ある期間の実際のアウトプットと可能アウトプットヘの意味づけの過程を示すものである。図表11.5.2は ,ABC部門のデータであり,多製品(E,E′ )について,6カ月の時間構造で表わされている。

欄11,12が重要なポイントである。ボトルネック機械の稼動率は,可能稼動時間の43.4%にすぎない。これはデータ分析の一例ではあるが,耐久材メーカーでは,高度に自動化されたトランスファーマシンの平均稼動率を60~65%期待するよりも,50%近くに設定すべきであると認識しつつある。

欄12は ,いわゆる6カ月間の標準稼動率を表わしている。これから,工程の最大稼動率のときに,アウトプットでは若千小さい値を示していることが分かる。しかし, 実際には,このレベルのアウトプットを出し続けるのは不可能である。それは,メンテ,廃棄,変更,昼食のような典型的な作業標準に取り入れられていないロスを除外しているからである。

図表11.5.3は,図表11.5.2のデータのうち,UAとUSCを月単位のプロットしたもので,総可能数からの偏差をグラフ表示している。総可能数は100%であり,水平線で表示される 。Uscは, 2製品のボトルネック標準が異なっているため,月単位に上下している。すなわち,2製品のミックス割合は,重み付き平均標準アウトプットに影響を与えている。Uscの動きは,ある程度UAI彬響を与える。しかし,UAの最終位置決定に一番影響持えるのは非標準/不規則なロスである。

この不規則なロスは,総可能数のパーセント比率として表わされる。そこで,図表11.5.3は.以下のように解釈できる6カ月の平均が43.4%である。UAは,廃棄のロス3%がなければ,46.4%になり,変更がアウトプットに影響を及ぼさなければ,9%をさらに向上させることが可能で,55.4%になる。メンテのロス(99%)と昼食(1日当たり15時間で62%)を考えると向上可能値は,16.1%となる。そこで,Usc UAとの差29.1%のうち,28.1%が算出された。これらの成果測定は , 事例の企業が,コンピュータ支援の廃棄管理プログラムとメンテナンス順位付け/フィードバック・システムをもっている場合に可能になる。変更や昼食のロスは,生産部門の書記によってメンテされる。

最後に解説しなければならないデータは,実標準余裕ロスである。これは,製品が生産されるときの労働標準内の余裕によって起こる総可能数に対してのロスを表わしている。これらのデータは,昼食のロスの位置に加えられる。

この情報によって,2つの重要なポイントが示される。第1に,Uscは総可能数との間の差異として表わされるロス(275%)は,アウトプットが標準と等しくなる場合にのみ起こる。第2に,全体を構成するアクティビティの87.6%は説明できた経済的な見地からすると,この説明のレベルは十分であろう。未確認のロス(12.4%) は,不効率な方法による作業,受入れ仕様に不適合な資材,欠陥加エツールの利用,新入作業者の訓練/仕込み期間(正確に測定するのはむずかしい項目)のようなもので構成されている。また,職長や支援スタッフは,これらのロスを最小化することが仕事である。一般に,ボトルネックの総可能産出数の10~15%以下を期待するのが通例である。

他にもう1つの重要なロスがある。そのロスとは,運 用されていないシフトである。事例のボト ルネックの機械は, 1日当たり3シフト制で稼動されており,この場合,ロスは存在しない。

2シフト制作業で行われる場合には,33%の ロスが存在する。ロ スの算出には,最初に16時間ベースで,すべてのロスを総可能産出数へのパーセント比率で表わす。次に,作業が3シフト(24時 間ベース)制で行われる場合,昼食以外のロスは,16時間ベースと同じ比率で構成されていると仮定する(2シフト制の場合の昼食ロスは,典型的に33%と考えられている)

図表11.5.2図表11.5.3の成果分析で表わされている,アウトプットとロスのデータは,潜在的な改善領域を示している。

例えば,以下の変更と昼食ロスのデータの試行は,改善の可能性を示唆している。変更回数を経験的な2.67回 /月 (16÷6)から20回/月に減らすと,総可能数に対するロスが21%減る。

162日 ×24時間/日+6カ月=648時間/月
648時間/月 ×9%変更ロス=583変更時間/月
58.3 /2.67 = X / 2.0
X=43.6変更時間 /月
〔 (58.3-43.6)÷64.8時間 /月 〕 × 100=2.1%

昼食ロスを15時間/日から1時間/日に減少させると,総可能数の2%が改善される(他のロスも同様にシミュレートすることができる)。

このような改善の同意が責任部門 (生産管理や製造) で得られた後,図表11.5.4と同じような表が明示され,計画が実施される。新しい能カレベル(平均282個/日) に関する同意は,効果分析に用いられた確実性の高いデータに基づいている。このようにして,最終的な問題の解,すなわち,時間当たりの最大可能アウトプット・レベル (能力)が求められる。

この手法を前記の能力分析に用いると,結果を比較することが可能となる。図表11.5.6は,以下のまとめである。

(1)実際の成果 (実績)
(2)総可能数に対するロスを減少させるための計画
(3)新しい能力
(4)以前の能力目標

この段階で,重要な結論が導き出せる。すなわち,投資0で能力を向上できるということである。例えば,ある企業が20分間の昼食時間に運用コストペナルティを支払うとする。賃金レートを9ドル/時間とすると

9ドル/時間× 1/3時間/日 ×3人/日 ×162日 ÷6カ月=243ドル/月,または, 2,916ドル/年

となる。この費用増は,能力を2%向上させる(これは,おおよそ10個/日,2,400個 /年の増加に等しい)ために必要なものである。そこで,2,400個の販売増による限界利益は,年間2,916ドルの費用増よりも大きいと判断されたのである。同じような分析が,可能な在庫費用の範囲内で,変更回数を減じる (平均ロットサイズは増加) 効果のために行われる。しかし,それはこの章の目的ではない。

この事例が示すことは,能力の概念を合理的に見ること“ブラックマジック”の領域を取り除くことと,事実とグループの同意に基づいた事業判断を確実なも のにすることである。

 継続的に稼動測定をするプログラムの開発
成果分析のためのデータを収集する困難性を考えると, 能力稼動率とロス分析のレポートを月単位にプリントアウトするコンピュータ・システムを設計すべきである。そのレポートは,図表11.5.7に示し た情報を網羅していなければならない。

区分A,Cのデータは,一般にデータベース・ファイルから,コンピュータ化された方法でインプットされる可能性が大きいが,区分Bのデータは,人手積上計算/インプットで行われる。ここには,広範囲のロスがリスト化されている。このうち,企業にとって,重要なものだけが使われるであろう。

もちろん,データ の使い方が重要である。ほとんどの計画のフォローアップの部分は,ほとんど注目されていないばかりか,用いられていない部分であろう 。

有能な管理者は,成果測定とフォローアップが,成功するためには絶対に必要であることを認識している。それがおそらく,最も重要なポイントであろう。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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