コラム・特集

4.2 企業運営上のインパクト

IEハンドブック
第11部 計画と管理

第4章 総合生産計画

4.2 企業運営上のインパクト

サービス業を除いて,あらゆる企業には在庫が存在する。そこでは,企業内部の効率(効率的な生産)と共に,外部的な効率(市場に対するサービスの提供)を向上させるために,多くの努力がなされている。しかし,これらの貢献は,犠牲(コスト)なしでは得られない。在庫を運営する上でのインパクトについては,次節で述べる。ここでは,財務的な側面に限定して述べることにする。損益計算書と貸借対照表は,企業の経済面の業績を判断するための情報源となる(図表11.4.1,11.4.2参照) 損益計算書は,前年度の収益を表わしている。

在庫は,この報告書に明確には表わされないが,在庫を維持するためのさまざまなコストは,売上原価中に含まれている (これらのコストについては, 44「 在庫管理」で詳細に述べる)。利益は,単独では完全に満足のできる業績評価のメジャーにはなり得ない。また,利益を生み出すために必要な資本額を算出するのも意義がある。

この情報は貸借対照表から得られる。ある企業がある年度に20万ドルの利益を生み出したとすると, これは大変印象的な事実ではあるが,それが平均4,000万ドルの投資を行ってきた結果だとすると事情は変わってしまう(ROI =0.5%), この企業が500万ドルを使って,同様の利益を出したとすれば,はるかに好業績といえることは明らかである(ROI=4%)。

損益計算書とは逆に,貸借対照表には在庫が記載されている(年度末の在庫合計の推定値)。これは企業総資産の物的数量をまとめたもので,在庫は総資産の10~45 %の値をもち,この比率は業種によって異なる。在庫削減の効果は,製品のコストダウンや投下資本の削減として表われてくる在庫削減が,顧客へのサービスや生産効率という。他の要因を犠牲にしないで達成できれば,企業の利益は増大し, ROIをも向上させることができる。

在庫,利益とROIの関係は,有名な財務分析の手法であるデュポン・チャートで表わすことができる(図表 11.4.3参照 )。最近10年間に,多くの企業は企業間の競争激化,製品ライフサイクルの短命化,製品多様化 ,支払利息の増大, 高速のコンピュータの出現のために,在庫管理が利益増大,原価低減,資本不足解消のポテンシャルをもった手段であることを悟り始めてきている。


とくに,製造業においては,資材所要量計画(Material Requirement Planning)と呼ばれる生産計画立案や,在庫管理に応用される強力な手法の開発によって,大きな変化が起こっている。従来, トップは在庫管理をあまり重要視せず,重大な決定を中間管理層に委せていた。しかし,現在,トップは在庫管理に関心を持たざるを得ない状況にある。そして,この結果は,損益計算書や貸借対照表に表われるはずである。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

 

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