コラム・特集

3.1 はじめに

IEハンドブック

第11部 計画と管理

第3章 総合生産計画

3.1 はじめに

総合生産計画は,計画策定が個々の製品または作業を考慮するのではなく幅広いレベルで始められるときに生じる。総合計画の目的は,ある制約のもとで将来の需要に見合った出力予定を詳細に計画することにあり,それによって利用可能な資源を有効に活用し,高水準の実行基準を達成することにある。

そこでは,いくつかの問題が検討される必要がある。
1.計画を評価する基準
2.システムや計画者に関する制約
3.生産の方式
4.制御または決定変数
5.総合・分離プロセス
これらの総合計画に関する問題を分析しよう。

評価基準
文献や種々の事例研究を検討すると,多数の評価基準が管理者や分析者によって,たびたび考察されていることがわかる。

それらは以下のようなものである。
・費用の最小化
・利益の最大化
・投資利益(ROI)または利益率の最大化
・正味現在価値(NPV)または内部利益率(IRR)の最大化
・計画時間幅の最小化
・総処理時間またはその分散の最小化
・工程仕掛量の最4ヽ化
・機械遊休時間の最小化
・実行可能性
・規則性の最大化

これは,明らかにすべてを列挙したものではないが,発表されたモデルや実際に見出される非常に幅広い広がりを説明するのに役立つ。上記の評価基準のいくつかは互いに両立するが,多くはそうではない。例えば,費用の最小化と利益の最大化――おそらく最も卓越した2つの評価基準一は, しばしば異なった解を導くが(在庫問題からよく知られた結果),最大のROI(利益対費用の比として測られた)と最大の利益率(単位時間当たりの利益比)との比較においてもそうである。同様に,NPVの最大化基準はIRRの最大化基準と一致しないこれらの種々の評価基準のなかでは,費用の最小化が最も一般的である。なぜならば,それは第1に,工程仕掛量の最小化や生産能力利用の最大化のようなより狭い評価基準を包括するからであり,第2に,生産環境における決定に直接に関係するからである(他方,利益,利益率,NPV, IRRは,価格・市場方策/キャッシュ・フローの考慮によって非常に影響を受ける)。

しかし,前述の評価基準リストにおける最後の2つの基準は,また実際において重要である。実行可能性に関する基準は(列挙された他のものと異なって), 最適化を含んでいなく,それは単に許容可能解が見出されることを要求する満足化基準である。システムに課せられた制約条件が非常に厳しく,実行可能解が存在しないか,または見出すことが困難なときには,評価基準は, これらの制約条件をできるだけなくすことであるかもしれない。この場合に用いられる方法が目標計画法であり,それは財務およびコーポレート計画のための道具として主唱されてきたが, しかし,今まで生産領域において,重要なインパクトを与えたようには見えない。目標計画法は,目的関数として,所与の制約条件からのすべての偏差の重み付け和をとる方法である。問題は,そのとき,異なった制約タイプ間のトレードオフが,いかに決定でき,かつされるべきかという点に集まる。

リストの最後の評価基準は,設備の円滑な運転を妨げる妨害を最小にしたいという生産管理者の要望を反映したものであり,これは繰り返される生産サイクルの規則性を考えることによってたいてい可能である。連続生産の場合には,規則性は一定の生産率を採用することによって達成されるが,これも在庫変動を減少させる必要から,調節されなければならない。そのため,評価関数はασ′+bσQの形となり,ここでσ1,σ Qはそれぞれ在庫,生産水準の標準偏差(SD)であり,またa, bは重みづけ定数である3ぁる意味で,これはα,♭ を費用パラメータとする,費用最小化アプローチであるが,慣習的な費用モデルに対して,通常求められるような多数の費用データを必要とすることになる.総合生産計画に対してこの基準を使用した一例は,後に議論される。

制約条件
資源が,多数のタスクを遂行するために配分されねばならないどんなシステムも,下記のような種々の制約を受けやすい。

・物理的,化学的,質的特性に対する製品仕様書
・ある種のタスクを遂行する機械と人々の能力に関する技術的制約
・納期および在庫切れに関する市場要件
・設備の能力や利用可能性,レイアウトや物理的環境で決められるフローや貯蔵の問題,残業/外注に関する制限, システムが生産率やプロダクト・ミックスの変化に順応できる速さ,マンパワーの利用における柔軟性,に関する運用的考察

もちろん,他にも多くあるかもしれないが, このリストは, 2つの重要な点を指摘してくれる.。第1に, システム外から課せられる外的制約(例えば,法律上の要件,顧客のニーズ,労働組合から受ける制限)と,階層のより低い段階(例えば,工場における運用や条件の様式)に高い権限を課することから生じる内的制約との区別がなされえる 外的制約は除くことがより困難(ときには不可能)であるのに対して,内的制約は,取り決めることができるかもしれないという意味で,この区別はかなり重要である。一般に, 2つのカテゴリー間に厳密な境界線を引くことが,つねに容易であるとは限らない。例えば,納期制約は,生産モデルでは, しばしば除くことができないものとして考えられるのに対して,現実には顧客と供給者の間にいくらか交渉の余地があるわけである.同様に,在庫切れの場合にも,代用製品によって補うことが可能であり,それは特に価格割引によって促進される。それゆえ,外的制約を考えるときでさえ,限界の定義や決定において,いくらかの柔軟性をもつことは,しばしば可能であるということをおぼえておくことは賢明であろう。

第2の点は,特に評価基準が満足化の部類であるときには,評価基準と内的制約の間には, どんな基本的な差異もないということである。この差異をなくすことは,単にモデルの選択やその構造の細部だけでなく,結果として現われる解にも非常に影響してくる。重要なのは,モデルのなかに何があるかということではなく,その背後に何があるかという格言は,確かに日標と制約との関係において適切である。

生産の方式
総合生産計画によって作成されうるモデルを理解するためには,われわれが出会う生産活動の種々の方式を識別することが必要である その目的のために, 5つの主要な方式を識別するのが便利であることがわかっている。

1.連続生産――製品に対する需要は連続的な生産を必要とするが,計画期間ごとに需要が変動するために,生産水準はときどき調整する必要がある。

2.バッチ生産――製品に対する需要率は,生産できる率よりかなり小さく,そのため,生産は過度の在庫を避けるために,間欠的に実行される。

3.ジョブ生産――種々のジョブのおのおのが,それぞれ多数の処理要件をもっており,ある系列で所与の生産設備の組に負荷される必要がある。

4.プロジェクト建造――複雑な1回かぎりのジョブは,作業のタイミングや資源の利用を援助するために,ネットワーク解析を使って管理することができる。

5.仕事割当表――1組の作業が,所与の資源を使って実行される必要がある。仕事割当表は,それらの作業を時間的位置に割り当てし,資源を,その目的のために合わせるのに必要とされる。

おそらく,より重要な差違は,図表11.3.1に図的に説明されているように,主として順序づけに関連した問題と,割り当てに関連した問題と,生産水準を含む問題との間にある。ジョブが,ある所与の系列で,いくつかの機械において処理される必要があるとき(図表11.3.1a),生産システムは,いくつかの直列に並んだ待ち行列からなっており,ジョブは,処理を完了するまで,待ち行列間を進んでシステムをはなれる.ここでは,各ジョブに対する処理要件が,前もって指定されているので,生産水準に関する疑間は起こらない。問題は, ジョプを代替的な経路が存在するシステムを,どのように経て進めるかということ,および,各待ち行列における待ち行列規律を決定すること,すなわち,ジョプが各機械で処理される順序を決定することである。

図表11.3.1b では,各製品は,単一処理設備を経てから生産システムをはなれる 図表11.3.1α でみられた順序づけの問題は,発生しないか無関係と考えられる。もし製品が,図11.3.1b に示された例のように,代替的な設備で処理されることができるならば, どの設備にどの製品を割り当てるかという問題が,各製品に対する生産水準をどうするかという問題とともに解決される必要がある。
図11.3.1cでは,すべての製品と作業が単一製品によって,また,生産設備が単一工場によって表現されることができるということが仮定されている。この場合,計画者の主要な問題は生産水準を決定することであり,そして,これこそが総合生産計画問題である。

決定変数
生産計画問題の研究では,決定変数は,つまるところどのくらい生産するか,どんな順序で生産するか(次々と生産のタイミングを決定), どの設備が含まれるべきか,になる これらの3つの変数(生産水準,順序づけ,割り当て)は,図表11.3.2に要約されているように4,10タイプの生産計画問題の解析に適した幅広いモデルを与える。

最初の3つのタイプは, 1つかいくつかの製品と, 1つかいくつかの機械に適した連続生産に関連しているタイプ1は,よく知られた生産平滑化問題である(ただし,通常は単に生産水準の決定だけではなく,労働力水準の決定も含むということを除いて)。タイプ2は,生産とその水準の変化とともに,異なった費用特性をも2代替的生産ラインの選択に直面しており,それゆえ,総生産率を見出すことに加えて,それを機械へ配分することを含んでいる(これは,より共通的に見出されるプロダクト・ミックス問題に対比して興味のある設備混合間題を含む).タイプ3は,その範囲を複数製品の場合ヘ広げている。タイプ4, 5はバッチ生産に関係しているのに対して, タイプ6, 7はジョブ生産に,タイプ10は仕事割当表に関係している。

図表11.3.2は,決定変数がきかせている幅を強調したものである。タイプ6から10までは実行されるべきタスクが規定され,それゆえ,生産水準が決定変数でなくなるのに対して,タイプ1から5までは,それが中心的なタイプである。もちろん,最初のほうが,その相対的単純さのためと(それは,単一工場で処理される単一製品を含み,本質的に単一決定変数を必要としているだけだから), 総合生産計画に関連した基本的な構成要素をもっているために,おそらく最も著名になっている。

総合と分離
それゆえ,総合生産計画は,主に計画期間の各期に対する生産水準を決定することに関心があり(例えば,12力月先までの毎月の生産量), そして,この計画実施の結果は,図表11.3.2のタイプ1から5までのもので述べられる,どの生産環境においても決定的なものである。計画者にとっての疑間は,どんなモデリング・アプローチを採用すべきかということである。タイプ1では,計画者は,全体的生産水準という唯一の決定変数を考慮すればよいが,他の問題では,計画者は各製品に対する生産水準を決定し(タイプ2は, タイプ1と同様に単一製品であるので除く), そして順序づけと割り当て決定がまたなされなければならない。

基本的に, 3つのアプローチが考えられる
1.完全な分離 製品やタスクの包括的な配列が,すべての利用可能な設備一覧表,各タスクに対する資源要求,タスクが遂行されねばならない技術的順序,などとともにつくられる.複数製品の場合には一例えば,製品が多くの構成要素からなる技術プラントでは,おのおのがいくつかの機械での1系列の作業を必要とするが一一,その結果は大きなデータ行列となる。そのときは各期間(すなわち,週あるいは月)に対する各製品の生産量や,利用可能な設備のおのおのによって実行されるべき作業を決定するために,線形計画iモデルを利用することができる。

2.最初に割り当て ここでは,計画者は,製品または作業を機械に割り当てし,それによって多機械問題をいくつかの単一機械問題に変換するが,それは計画者が各問題を解くことに注意を向けるまえに行う この分解プロセスは, アプローチ1で提出された元のモデルの大きさや複雑さを減少させ,その結果として,生じた問題は取り扱いが大変容易になり,そのおのおのが,残りの計画に直接に影響を与えることなしに,より詳細な研究のために選ばれる.計画者は,それから解析の結果を検討し,元の割り当て決定を修正して,代替的な分解を続けるかどうかを考えればよい。

3.最初に総合化 計画者は,計画があたかも単一製品、単一機械の場合,すなわち,図表1132のタイプ1あるいは図表11.3.1,であるかのように想像する。最初の仕事は,それゆえ,計画期間の各期あるいは,少なくとも次期の総生産量を決定することである。計画者は,それから設備のおのおのにおける作業負荷と,その結果として生じる各製品の量を決定するために,割り当て決定(および,適当なところで国順序決定)をすることによって, この全体の数字を各期に分与する必要がある。アプローチ1における完全な分離の利点は,決定変数のどれもがこのモデリング・アプローチでは,単独には決定されないということにある。

それに対してアプローチ2における分解と,アプローチ3における総合は,縦列をなしたモデリングを考えており,最初に他の変数に注意を向ける前に, 1変数に対して解を求めていく。この意味で,アプローチ1は3つのなかで最も純粋なものとみなすことができ,製品や機械が相対的に小さい場合には,分析者はそれを自然に選択するであろう。しかしながら,数百の製品が含まれているときには,変わりやすい生産環境において,多数の設備で処理される数千の構成要素をもつことになり,また需要が正確な情報によらねばならないことと,アプローチ1での計画方法に, しばしばはめ込められた不可変性とが,実施をしばしば困難にする。アプローチ1と比べると, 2と3の両方は部分最適化原理とみなされるが, しかし,それらは生産計画を変化する環境に照らして調節するような,より大きな柔軟性をもった,より小さくて管理しやすい問題を取り扱うという,実際的な利点を計画者に提供してくれる。

機械がある製品を処理するのに,それほど明らかに適しており,最初に割り当て,それゆえ,アプローチ2が要求される場合があるが,そのときには部分問題のおのおのを,図表11.3.2のタイプ1として取り扱うことができる。他の場合にはアプローチ3が適当であるが,その場合には,総生産を個々の製品の生産量で表わすために,代用物として定義される適当な出力尺度で表現することによって, タイプ1に対する場合と同様に取り扱われる。
以下では,総合生産計画問題(ときには”生産平滑化問題″として知られているが)の,より詳細な記述と,それに取り組むために使われる種々の方法を説明する。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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