コラム・特集

5.6 研究計画

IEハンドブック

第10部 ファシリティーズ・デザイン

第5章 オフィス・レイアウト

5.6 研究計画

1980年代初期におけるオフィス・レイアウトの設計では,領域,侵略,人の密度の影響だけでなく,従業員の行う仕事の質といったことも考えられるようになった。スチールケース社の調査では,オフィスで働く作業者は,環境状態によって生産性が左右すると考えている,という結果が出た。伝統的な直角の格子上で設計されたオフィスにいると,作業者は知覚の過負荷に悩まされるのである。

また,従業員は,気温と空気の流れがかなり変化するため空調システムを希望していた.この問題について最良のアプローチは,換気と温度とを別個に取り扱うようにすることである.間仕切りのしてある個人用ブースより,間仕切りのない広いオフィスについて解決するほうが難しいであろう. しかし,この問題は,倉J造力のある設計者ならこなせるものである。
対象となった作業者も,必要な道具,備品,材料を供給するワーク・ステーションやオフィス・システムを持ちたいと答えていた。スチールケース社の調査では,改善された作業環境が生産性や価値観を向上させると,74%の人が解答した。また,54%の人が,データプロセシング,ワープロ,電子通信などを使用していた。

オフィスの環境を変えるような気運を生み出す力は,
1.労働力の増加。
2.個人の職務の変更。
3.職務の拡大の欲求。
4. 建設費の増加。
5.作業の質の改善欲求。
6.エネルギー節約の必要性。
7.ワープロと情報処理システムの導入である。これらの多くは,特定のプロジェクトの目的を計画する際に影響を与える。

目 的
目的を決定するときは,組織の歴史,将来性,長期間にわたる計画,というものについて考えなければならない。未来について実績から推定する場合,変化率(たとえば,過去5年間でオフィスの環境が変わった回数)が有効な尺度となる。変化率が高い場合,迅速に低コストで変更できたシステムに関心が集中するであろう。

決定しなければならないことは,

1.計画の継続期間は?
2.期間中に何人投入しなければならないか?
3.どのようなコミュニケーション・システムをとるのか?
4.レイアウトを根本から変更するかもしれないという意味で,時代を超えて,組織構造の変更は考えられるか?
5.どのサブグループが拡大・縮小するようになっているか?
6.レイアウトを満足に変更できるように,管理スタイルを変更できるか?8などである。しかし,これだけでは不十分で,システムの目的を大きく変えるかもしれない要因について十分調査しなければならない.管理者らによって完成,承認されると,全体目的に基づいて,詳細目的を各課で計画できるように組織を形成する。

課における研究
オフィス・レイアウトを行う場合,ほとんどが現存するオフィス空間のレイアウトとなるため,レイアウトの視点は,普通手直しの必要のないものはそのまま残すという条件のもとで,現状の問題をいかに解決するかという点にある。このような条件と方針は,設計のうえで制約となるものであり,明確にしておく必要がある。ある1つのプロジェクトでの重要かつ伝統的な制約は,管理者から見えるところに4人の部下を配置する,ということであった。そして,数種のレイアウト案が却下されたあと,すなわち,内部の壁,間仕切りと管理者用のブースは動かさないという制約がもちあがった。組織や作業方法についての詳細な情報が集まるほど制約が増えるのである。

多くの管理者は,実際にレイアウトを行う前に,オフィスの組織について詳細な調査が必要である,と認めてはいるが,ほとんど行われていないのが現状である。多くのレイアウト・エンジニアは,課の人にレイアウトの初期案の作成を頼むときまでも,その課の課長の要求を重視している。オフィス・レイアウトに関する問題に,次のようなケースがあった。部の上位1/4のスタッフが時代に合った新しい組織に移った.この部では,各課長からオフィス・レイアウトの承認のサインをもらうことが慣例となっていたが,3年以上経て移動が終了するまでの間,すすんでサインをする課長は1人もいなかった。

コスト低減,コスト回避を期待して全体的な研究を行うのであれば,WSP(作業単純化計画)が有効であろう。オフィス・システムのWSPでは,作業内容の定量分析,定性分析を行う。作業日誌,遅れ分析,アンケート,インプット・アウトプットの分析,フローチャート,標準資料,時間研究,ワークサンプリング,重回帰分析などの技法によって作成されたインタビュー,小日程計画は,適正作業割り当て決定のときに用いられる。オフィスの主要な機能が,目的を満足させるように働いているかをみるため,現状について評価する必要がある。最近の大量郵送の運用(この目的はより有能な応募者を集めることである)についての調査で,幾人かの応募者が,2回以上郵便を受け取っていたことが分かった。重複して送られた地域を調べる方法として,3つの方法が浮かび上がった。

第1は,重複した郵便を受け取ったと伝えてきた応募者の記録を調査することである。しかし,これらの記録はまったく保存されていなかった。
第2は,郵送と電話による応募者の調査であるが,コストが高くつくため行わなかった。
第3の方法は,リストの比較である。この果てしない退屈な作業を始めたとき,重複の原因がすぐに発見された。さらに比較分析して,リストの65%を削除した。

この調査から,「物事を正確に行うのではなく,正しい事を正確に行えJという格言の価値が示された。

個々の作業場所
WSPが完成し,この技法が目的達成の一助になるということを明らかにしたのち,各作業場所と各機能のための必要スペースと必要備品の情報を集める。この情報収集は,保管・作業場所に必要なスペースを,各自が具体的に言えるように質問することで,効果的に行える。また,要求される会議室の設備のタイプと使用頻度,使用期間を記録する。プライバシーの保護の必要性も,人と人との相互にわたる影響の頻度といっしょに記録する。他の人と近づいたり離れたりすることの必要性に関する情報も集める。

保管および机上の利用可能スペース
作業のための適切な保管場所を設置するため,手紙サイズ,法定サイズ,コンピュータ・サイズのインプット,アウトプットのカード,紙,図面,本,雑誌,個人的な品,その他の品をしまう棚や引き出しの大きさを記録する。必要総面積の算出の際には,電話,計算機,タイプライター,コンピュータの入出力装置,他の情報処理装置も考慮するようにする。

最大利用可能スペースの情報も必要であるため,プリントアウトのような大きいサイズの品とその利用頻度を記録する。臨時に広いスペースが必要な場合,それを必要とする人を会議用テーブルや製図板のところに移動させるようにする。

プライバシー
個人のプライバシーに関する要求は,質問の回答に表われているほど重要ではないであろう。しかし,電話の20%くらいについては,プライバシーを守るようにすることは重要である.2,3人の会議のプライバシーは,上述の電話の例と同様に,話の内容のプライバシーを守るために,小さな会議室や電話室をすぐ近くに設置するようにする。

見られることのプライバシーを守る必要性は,個人のレベルだけでなく,管理のレベルにおいてもさまさまである。大人数の人が1つの室にいると,座っているときのプライバシーを守ることが必要となってくるが,これは,レイアウト設計者に柔軟性をもたらす(図表10.5.5)。


中間・上級管理のレベルでは,すべてのプライバシーを完全に守ることが必要である9.意思決定において,従業員の参加を大変重視する新しい形態の組織では,完全にプライバシーを守ることについては交渉の余地がある。なぜなら,このような組織では多数の管理層で,個人用ブースも含めたステイタス・シンボルからの逃避があるからである。

グループの要求
グループに関するデータは,個人の作業場に関するデータと一緒にとられるであろう。保管,備品,机上の作業スペース,領域,会議室,応接室,休憩室,プライバシーの保護,各人との近接性などのデータをとる間仕切りのないオフィスが解決策であるとすると,パネルやスクリーンの高さが,グループのための区域を形成するうえで重要な要因となる。

パネルの高さを決定する際の重要な要因は,座っている人が,それぞれプライバシーの保護を要求するかどうか,ということにある。さらにもっと良い解決策は,サブグループに分離することである。この場合,間仕切りのない区域に割り当てられた人は,プライバシーが守られなくなるだろう。

柔軟性に対する標準化
有効な作り付け備品システムを用いることによって,個人の作業場に多様性をもたせることができる。このシステムでは,壁に組み込めるような備品基本システムの中に,床に配置するような備品を取り入れることができる。間仕切りのないようなシステムのメリットは,作業場を再配置できることである。個別化された作業場の幅広い多様性によって,上述の柔軟性が失われるであろう。たとえば,サブグループが自分の作業場にそれぞれ別の色を用いたら,他のサブグループから移された個人用の作業場には,他の色がついているであろう。

パネル高さの標準は,座った人に対しては約4~ 5フィート(1.22~1.52m),立った人に対しては約80インチ(2.03m)である。領域の境界を強調したり,機密の区域を保護したり,視覚的な多様性を付加したりするときは,より高いパネルを用いる。各作業場を個別にすることは実用的でない。したがって,同様の作業をしている人は同様のタイプの作業場を使うようにする。

電気配線
多くの現存するオフィス・ビルディングでは,配電のネットワークは壁の導管や床の配管システムを用いて構築される。最近,天丼に備えつける大変柔軟性のある格子システムがでてきた。配電盤から電線をパネルで囲まれた作業場に配線する。工場でパネルに配線することができ,標準のコネクターはパネル同士をつなげる際に用いられる。配電盤は天丼にしっかり配線されているか,すぐに取りはずせるように設計されているであろう。

すそ板のコンセントだけでなく,周囲の照明用に特別に設置されたパネルの継支柱の先のコンセントに配電するため,パネルのすそ板の部分に包管が設置されている。

照 明
一般のオフィスでは,すべての区域に均等に照らすため高架式の直接照明を行っている。新しいオフィス・ファニチャー・システムでは,直接作業場を照らすものもあり,照明は,机や周囲の備品の上方にあるパネルに取り付けられている。あまり電力を消費しないため,エネルギー消費量が大変減少する。また,照明装置から熱が発生するため,照明の減少によって空調の必要性が減り,エネルギー消費量もさらに減る。天丼の照明の場所を変えることによって,天丼吸音区域が10~15%増加する。

音 響
オフィスにおける典型的な音は,タイプライター,電話,空調,暖房器具,複写機,重要な会話,なにげない会話から発生する。大変大きな音や,大変小さな音によって気が散ることがあり,生産性が低下する。吸音性の天井を用いることによって,音が反射しないようにすることができる。カーペットで他の床より4倍以上音を吸収できるので,特に足音による騒音が減るであろう。パネルによって,騒音をきらう場所まで音をとどかせないようにすることができる。騒音を外にもらさないような囲いを作る際にもパネルを用いることができる。
以上のような処置をすることで,オフィスがとても静かになるが,すべての音が大きく感じられ,かえって気が散るようになる.これでは,会話についてのプライバシーを保護できなくなるかもしれない。これを防ぐために,音のマスキングが導入される。これは,天丼のスピーカーやその周囲の他の区域から聞こえてくる電子音のことである。鼓膜に負担をかけたり,聞こえたりしないように,他の音を遮断したり包みこむようにするため,電子音を周囲の騒音のレベルまで大きくする。


色は,単調さを軽減したり多様性を生み出すために用いられる。色の,心理学的効果が研究され,それにいくつかの一般的な説明をつけると次の通りである。赤,黄色はものを近づけ暖かい感じを与える。青,灰,深紅は部屋を広くさせ,冷たい感じを与える。赤,黄,オレンジは興奮させる色で,作業が単調であるとき用いるものである。

青,緑,紫は気を静め安楽にさせる色で,作業がおもしろいとき用いるものである。保全についての実用的な考え方や,汚れが多いか少ないかということが,色の選択の際に影響する.たとえば,汚れを隠す暗い色は床用に用いるべきである。また,色は,方向指示に使われる。そして,パネルが用いられている間仕切りのないオフィスでは,方向付け,領域の明確化,通路・出入日の位置の強調などに色が使われる。

大変多数の変数が生産性に影響するため,色がオフィスでの生産性に影響するかどうかは判明していない。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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