コラム・特集

3.6 競合機器の比較

IEハンドブック

第10部 ファシリティーズ・デザイン

第3章 運搬(マテハン)システム

3.6 競合機器の比較

最適なコストとは必ずしも最小のコストを意味してはいない。もし, 2つの導搬システムがデザイン上同等であり,問題に対する適応性も同等で,2つの売り手から同じ程度のサービスを受けるならば,選択は普通,価格に基づく。もし,これらの要因のどれかが欠如しているならば,価格は使う企業にとって2次的になるだろう。すべてのエンジニアは,すべての要因,たとえば保全コスト,スペア部品,期待したサービス期間,減価償却,省人,動力などを分析しなければならない。よリー般的なアプローチは,機器とその設置コストを定額減価償却し,それを機器導入により生じる人件費の低減と比較することである。多くの場合,より簡単なアプローチが取られ,投資回収のための期間を算出するために,機器と設置に対する資本投資を,人件費の減少を通じて,年々得られる金額によって割る。この場合,3年かそれ以内の資本回収がしばしば評価の基準とされる。

複雑なシステムの場合,提案された概念について総合的な効果算定をすることは難しい。このような場合に,シミュレーションが行動を計画したり,代替案の可能性を比較するためにしばしば用いられる。待ち行列,シミュレーション,線型計画法のような数学的手段が,これらの研究にしばしば適用される。

デザイン,適用,サービス,価格に関する一般的記述は,以下のように言い直される。競合機器が,操作性の観点から同じ経済性であり,それらのデザインが両者とも作業状態に合い,十分なサービス組織に支援されているとき,選択は価格に基づいて行われる。もし,製品の1つかあるいはいくつかに,これらの要因が欠けているものがあるならば,価格は2次的要因であり,操作性,サービス能力,製品の予測寿命が選択の基本原則になるべきである。

入出荷量/在庫量(T/1)比法による機器比較多くの方法では,4つの主要なシステム・コスト要素である建設,在庫,労働,設備コストが,代替機器システム案評価の比較テーブルに乗せられるように工夫されている。T/I比法とは,在庫と入出庫に関する費用を分類する手段であり,在庫に対する入出庫の比率を基に,システムを比較する手段である。この比較を行うために,入出庫と在庫は,パレット,ボックスやビンなどのように,同一ユニットで表わされなければならない。

すべての他の要因が機器の選択に考慮された後で,最終的決定は,性能とコストに関するメリットの評価に基づかなければならない。運搬システムの真のコストは,在庫と運搬に関するコストの両方で構成されている。在庫コストは,運搬に関する入出庫コストから分離することができ,保管高さ,通路サイズ,必要なゆとり,そして,保管ハードウエア(パレットラック,たな,など)によって影響される。環境費(保障,換気,エアコンなど)は付加的な要素であり,直接システムには関係ないが,特殊なシステムにおいては影響を及ぼすかもしれない。よって,何らかの形で評価に含められるべきである。

運搬もしくは入出庫にかかるコストは,保管を最大レベルに近づけるために必要な時間と移動距離などの,在庫とシステム特性によってある程度影響される。一般に,運搬コストは,基本的に労務費と機器の償却費と操業費用からなっている。入出庫と在庫要素の異なるコストを定義するために,伝統的なコスト分析を使うことによって,与えられた在庫レベルと処理比からなる,年価コストを表わすコスト方程式を工夫することが可能である。2つのシステムに対する方程式を比較することによって,2つのシステムに対する年間費用が等しくなる入出庫と在庫レベルを決定することは多くの場合に可能である.比較する場合に,2つの未知数を含む2つの方程式を用い,在庫か入出庫のどちらかの変数が与えられるならば,必要な変数が決定される。

特別な変数を与えなければ,2つの年価を等しくするような,入出庫と在庫の無限の組み合わせが可能である。2変数の比を求める方程式を解くことで,年間コスト水準を維持するような,T/1の固定比をみつけることができる。T/I比は諸要因の間の直接関係を求めるのに使われる。というのは,入出庫量の増加,減少がT/I比の調和的な変化を生み出すことになるからである。このアプローチは最適な方法といえる。なぜなら,在庫量は一般に一定であり,システムの成果は,変化する生産量の状態のもとで評価されるからである。

T/I比は処理される単位量の選択によって決められる。入出庫量は, 1日, 1週間,1カ月, 1年を基準に測ることができる。T/I比法の使用においてより重要な要因は,以下のように要約できる。入出庫量と在庫量は同じユニット(パレット,立方フィート,ポンドなど)で表わされなければならない。量で評価するのが好ましい。というのは,運搬は,製品の価値や密度ではなく,荷の移動に関係しているからである.入出庫期間は,使用者の測りやすい単位で表わされ,たとえば, 1日ごとのパレット数や,月ごとのパレット数などである。在庫量も,この場合,同じユニットで表わされなければならない。

T/I比は在庫の回転率と混同してはならない。特別な状況のもとでのみ,T/1比は実際に在庫の回転に等しくなる。T/I比は設備の大きさに対する物流の量で表わされる。比較されるすべてのT/I比は,同じ基準で計算されなければならない。T/I比は異なった期間の入出庫量を使うことはできない(例えば, 1日と1週間),T/I比計算例が図表10.3.1に示してある。

これらの比を計算することで, 3つの可能性が明らかになる。

1.2つのシステムの入出荷コストか在庫コストは等しく,システムの選択は,残りの変数で決定される。T/I比は存在しない。
2.1つの方程式における入出庫と在庫コストの両方は,他の方程式のコストより少ない。1つのシステムはいつでも他より安価で等しい可能性はなく,したがってT/I比も存在しない。
3.入出庫,在庫コストが等しい場合,T/I比が決定される。

T/1比のグラフの概念が図表10.3.2に示してある.


システム・コスト線T1 I1とT2I2は,システムAとBの在庫と入出庫の関係からなるトータルシステム・コストを表わしている。この線は,コストの限界を明らかにするのに必要な,入出庫と在庫のさまざまな組み合わせを表わしている。入出庫と在庫の限界は,等しくなるために両方のシステムが必要な値に対して選択される。ただ1つのTOとIOの組み合わせだけが交点Xをもつ。これは,システムAの年コストがシステムBの年コストと等しい点を表わしている。原点0から交点Xを通る傾きは,T/I比あるいはTOとIOの関係を示している。もし傾きが強い(入出庫の軸により近い)ならば,比は大きくなり,入出庫コストにより支配される。また,もし傾きが強くなければ(在庫の軸により近い)比は小さくなり,在庫コストにより支配される。
さまざまなレベルで,いくつかのシステムにこの分析を適用することよって,与えられた在庫と入出庫に対する,最も望まれるシステムを示すために,ランキング・チャートが作られる。この方法を使うことによって,好ましくないシステムは,分析の初期に評価することができる。そして,残りのシステムの評価に力を入れることができる。さまさまなT/I比は,年価が等しい入出庫と在庫間の関係を示すチェックポイントを与え,与えられたシステムを好ましい方向へ変えるためには,在庫あるいはその活動において,なにが変化をもたらすかを示す。

本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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