コラム・特集

1.4 地域分析

IEハンドブック

第10部 ファシリティーズ・デザイン

第1章 立地:単一あるいは複数の施設

1.4 地域分析

この章で論じられている多くの工場立地に関する問題点は,特定の限られた地域にその活動を限定するという意識的な決定を行った会社には応用できない。この様な企業は,意思決定プロセスのこの部分をとばすことができ,また,次の節で論じる立地(全般的な立地)分析に直接進むことができる。

この章で用いられている地域と全般的な地域の区別は必ずしも明確ではない。そしていくつかの企業はここに示された分析のいくつかの要因の検討を選択することができる.ここで論じられていることは,しばしば立地決定における。

“決定的な″要因と言われるものであり,明確なコストの要因はこの章の次の節で考慮されている。この様なトレードオフ関係を有する定性的要因の取り扱い方法と総括的な測定方法の開発については,次の節で論じている。ここに示されたものは要因と問題点である。それらは明らかな費用項目を除去することはできないとしても,内部に向かう輸送費(企業内輸送費),外に向かう輸送費(企業外輸送費),直接・間接作業者,ユーティリティー,税金,保険,土地,建物,間接費を扱うことができる。

人口統計学
寒冷地帯から熱暑地帯への人口と産業の両方の重要な変化が続いている。これは仕事の集中した地域と市場地域との不明確さを引き起こし,これらの傾向が依然続いていることを明らかにしている。各地域に影響をおよばす経済基盤の発展は,いつも産業や人口の流入に歩調が合っているわけではない 収入レベルの分布,消費傾向,そして産業集中が継続的に変化しているので,立地分析者は現在の状態だけでなく将来の傾向の動向も考慮しておくべきである。この分析の多くは,需要予測に関連するが,他に考慮すべき重要な問題点がある。例えば,労働力の供給は量,質ともに十分か,それに対して何が競合しているか,水,燃料,動力,そして他のユーティリティーは何に有効か,その地域は十分な労働力と経営資産を,同一会社の他の地域から,もしくは外部から誘引できるだろうか,人種や種族の混合はどうか,言葉の問題があるか,などである。

動 機
連邦政府,ある行政区,またいくつかの州では産業誘致やある特定地区への再配置のために特男りな刺激策を出している。これらの刺激策には,産業発展のための投資,企業の特別な事業への地方労働力の訓練援助,有利な税や地区制の処理,好適な条件での運営資金の準備,マーケティングと契約,獲得の助成,当該の行政区や州の案にしか制限されない無数の他の刺激のような,関心を引かれる条件の有効利用が含まれている。また,これらの策は特に過剰労働地区や都市再開発指定地区において効果がある。そして,このような特別の刺激策は,設備を設置したり,相対的な安定をすばやく得ようとする。
会社にとって大変重要であり,将来的にみた成長や利益性は,後述する固定費の項目に,より大きく依存じそうである。多くの企業は,このようにして選択された地区に対して,長期にわたる実用性や利益性が重大な危険にさらされることを見つけるだけに,これらの特別な刺激案によって特定地区にひきつけられている。

制 限
ある企業では,市場の集中化,資源の有効獲得,特殊な輸送問題,特別な工程の存在により,地域の選定がきびしく制限されている 例えば,自動車産業に対するメッキ巻きはがねの供給者はデトロイト方面へ注目するであろう。製紙産業に対するパルプの製造者は適切な木材資源が利用できる地域を探すであろう。また,半導体技術に関する製造者や利用者はシリコン・バレー,またはその近くに集中している 映画産業に対してサービスを提供する企業は南カリフォルニアを無視できない。

そして商社は,ニューヨーク,シカゴ,サンフランシスコを考慮に入れなければならない。他の地域的な制限として低価格の電力,清浄化された水,船舶による輸送,あるいは輸出のために,よく整備された港湾への近接の必要性が含まれる。

国際的な配慮
国際的な市場が存在し,立地分析者によって明らかに利益があると判明した時に,多くの企業がアメリカ国外に工場を立地することで多額の利益を得ている。しかし,この立地が直観的に魅力があるとしても,そこには多くの落し穴がある。魅力的な低人件費は,それによって生じる低い生産性をまぬがれ得ない。この低い生産性は,労働者が熟練していないとか,勤勉でないからだけではなく,利用する技術や主要設備が低いレベルにあるのも一因である。輸送による余分な費用,少なくともその国の国内市場を補うための費用は,潜在的な人件費の節約を相殺するだろう。それに加えて,世界の工業先進地域の多くはその賃金水準がアメリカ国内の工業地域の水準と同じかあるいは,それ以上であるのが現状である。というのは,このような国の多くは社会保障費の負担が多いためである。言語や文化の違いは,動機づけ,経営,労働力の管理や供給,またはその企業が取引きしている。他の国の得意先に難問を与えている。

多くの国には,原材料,部品,構成品の選択の自由を制限するその国特有な条件があり,これは,コストに非効率さや,品質管理の困難さをもたらすだろう.特殊な財務要求,資金の返還の困難,税金,適切な管理能力や労働技術の有効性,技術開発力のレベルなどは,国外に立地しようとしている企業に,予期せぬ損失の大きな問題を引き起こすかもしれない。政治の安定性や国有化の危険性も評価しなければならない。前述した落し穴は,いずれも危険と報酬を外国での発展に関連づけて考え,詳細でシステマチックな分析を進んでしようとする企業にすばらしい機会を与える。

しかしながら「私も」といった方針や安易な印象で,その考えを無効にするには,返答が早過ぎるような場合に対し警告を与えている。コミュニケーション,コーディネーション,コントロールの問題は誇張されているが,適当な企業にとっては,例外的な機会が依然として存在している。「もし,あなたが自分の家の裏庭でそれを行えないのなら,あなたはたぶんそれをどこにいっても行うことはできないだろう」という昔のことわさに,注目する必要がある。

個人的選択
多くの行政部や企業のオーナーは,生産設備や総合事務所の立地を決定する際に強い個人的な選択を示す。この決定の際,大都市圏への立地に対する欲求,ある州や地域に対する特別な敵意,競争相手の立地,管理者・販売員の移動の容易さ,そして他の個人的問題などの地域的な考慮がなされる。これらの問題は,立地決定上大きな影響があることは明らかだが,この章の後で述べられているタイプの経済分析は,金銭的な面からその経済的影響を決定するどんな場合にも,実行されなければならない。

政府規定
立地決定に影響する,連邦政府,地域,州の無数の地方法律や規約がある。おそらく最もよく知られた規定は,環境保護団体(EPA)やOSHAの規定であろう。これらは明らかに立地分析者によって注意深く考慮される必要がある。また,設備の効率に強く影響する政府のあらゆる部門に関しても多くの規定がある「自由貿易港J法律,各州間通商委員会の法律,ムダな廃棄をなくし,廃煙を減少させる規則,許可された労働範囲と時間を限定する法律,失業保険費用,労働者の賃金と課税法律などの州や国や市の作った法律は,理解,分析,処理されなければならない多くの問題の一部でしかない。
実際,第96回(1976年)議会で紹介された3つの法案は,それらがまだ認められていない間に,将来の傾向を指摘した。それらは,「工場再立地法案」あるいは「抵当法案」と呼ばれ,どんな工場再立地活動を正当化するためにも,事業上・産業上の負担となるだろう。再立地を考慮する上で業務上必ず直面する問題は,一般社会,従業員組合に対する事前の通知,すなわち,経済的影響に対する声明文,労働長官による調査,工場再立地後の正式な従業員の報酬,そして再立地による税の損失に対する地方政府への返済などの通知である。

これらの計画の下で米国連邦政府は,利益を得たり事業を行いたがっているどんな企業に対しても財政援助を提案している。いくつかの企業は,これらのいくつかの事柄を自発的に行ったが,現在では,合衆国議会の注意を引き付けてしまうことが重要事となっている。

アトラクション
適切な文化,教育,そして娯楽活動の有効性は,企業が十分な質と量の労働力獲得のために重要なものである。

気 候
気候は,それは確かに個人的好みの問題でもあるが当然,結果的には直接費に係わってくる.建設費は,設備が極度の温度変化や雪,地震,嵐,竜巻,そして,雹などの自然の力に耐えられるよう建てなければならないので,それによる影響は大きい。天災で生じる損害や生産停止の可能性,雇用者の長期欠勤も評価しなければならない。社員や生産工程のための暖房や空調に関する直接費を含めなければならない。また,気候で生じる保全費,製品と原料の価値の低下を避けるための保護費も存在する。

要 約
この地域分析で用いられた概念は,立地分析に対しても適応できる。そして,より狭い範囲に対して,他の非直接的な定量的問題にも適用される。

 本コラムは絶版となっている「IEハンドブック(サルベンティ編・日本能率協会訳・1986)」をアーカイブとして掲載するものです。このハンドブックの各章は多くの事例と理論を通して生産性向上に対するアイデアを提供するべく専門家によって執筆されています。基盤をなしているIEの考え方・原則はインダストリアル・エンジニアリングにかかわるすべてのひとに有用でしょう。

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